photo:Estación de Sevilla-Santa Justa~セビリア・サンフスタ駅前~
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僕の泊まっているホテルのあるサンフスタ駅界隈は、セビリアの中心市街地から1.5キロほど北東に離れています。
市街地までは路線バスで行けるそうですが、とにかくよく晴れていて気持ちがいいので歩いて行くことにしました。
サンフスタ駅は、地下に敷設されたスペイン国鉄renfeの線路に覆いかぶさって蓋をするような形で駅舎が建てられています。
駅前のロータリーを渡り、パブロ・ピカソ通り という素晴らしい名前の道路を横切って行くと、地下に潜っている線路を上から覗き込めるようになっている区画に出ました。
さっきマドリッドからセビリアまで乗ってきた超特急AVEのタルゴS112型が停まっています。
奥のトンネルから、近郊線セルカニアスの電車が出てきました。マドリッドのセルカニアスと同じタイプの流線型車輌のようです。
こうして上から見てみると、高速鉄道のAVEの線路と在来線のセルカニアスの線路とでは線路幅(ゲージ)が違うことがよく分かります。
高速鉄道の方が、在来線より線路幅が狭いのです。
これは、かつて19世紀中頃にスペインの鉄道建設が始まった当初、隣国フランスからのナポレオンの侵攻の悪夢が忘れられなかったスペイン人が、ヨーロッパ共通の標準軌(1435mm)で鉄道を敷設してしまうとフランスの鉄道網とつながった線路を使われてスペインへの軍事侵攻を再び許すことになる…と恐れを抱いた為で、結果としてヨーロッパ標準規格とは異なる1668mmの広軌がスペインの鉄道に採用されたと言われています(ただし当時の正確な資料が残されている訳ではないので、都市伝説である可能性もありますが)。
ともあれ、結果としてイベリア半島の鉄道はヨーロッパ全体からは切り離された形となってしまい、鉄道による国際直通輸送が阻害されてスペインの経済発展の足を引っ張る要因にもなってしまいました。
これを解決するべく20世紀に入って以降色々な方法が検討されましたが、スペイン全土に広がってしまった広軌の鉄道網を標準軌に改軌することは膨大な予算と大変な工事作業を必要とすることから、線路ではなく列車の車輪の幅の方を変えて直通してしまおうという発想の転換でフリーゲージトレイン機能を備えたタルゴ型客車が開発され、フランスやイタリアとの直通運転を可能としていました。
この構想をさらに推進して、いっその事、将来はTGVやICE等ヨーロッパ各地の高速鉄道網と直結させることを前提としてスペインでも新しい高速鉄道を標準軌で造ってしまおう!と建設されたのがスペインの高速鉄道AVEなのです。
セビリアの街で見かけた、並んで敷かれた幅の異なる線路のある風景。
それはスペインの鉄道の歩んできた歴史、そしてスペイン近代史の縮図そのものなのです。
線路と列車を見おろしながら暫し、スペインの歴史にまで想いを馳せてしまいました。初夏の風薫る南欧の昼下がりは人にものを考えさせ、あれこれ思いを巡らせる効能まであるようです(笑)
そろそろ現実のセビリアの街角に戻り、街歩きを続けましょう。
セビリアは人口約70万人でスペイン第4位の都市であり、イベリア半島南部アンダルシア地方の中心都市です。
古代ローマ帝国時代からの悠久の歴史を持ち、ローマからイスラム、そしてキリスト教圏へと支配者が移り変わった波瀾万丈の歴史の上に成り立った街でもあります。
セビリアの街には、今もローマ時代のものと思しき石造りの建造物の遺構がそこかしこに残り、整備保存されて近代的なビルと共存している風景を見かけます。
サンフスタ駅から西向きに30分ほど歩きました。市街地中心部へと近づき、大通りを渡ると周囲の雰囲気が一変します。
この辺りがセビリアの旧市街の入り口です。
旧市街には、僕が是非見たいと思っていたものがあります。迷路のような細い路地が入り組む旧市街を、迷子にならないように時々ポケットに忍ばせた地図と路地の標識を見比べながら、さぁ路地のもっと奥まで進んでいきましょう!
→09:セビリア街歩き 旧市街の「ドン・ペドロの首」に続く