兄が死のうとしている。脳溢血だという。病院の救急救命病棟で僕の兄が息をひきとろうとしている。息はあったが既に死の淵にあるその体は、本物の死体よりも色や臭気などの点で、より死体らしくみえた。脳が正常じゃないので体温の調節ができない。解熱薬を投入しても体温40℃近い。瞳孔はひらいてないけど、虚空を見つめるその人形のような目の玉。機械が呼吸を助ける。これがなければすぐに、死ぬらしい。体が痙攣する。脳内出血が止まっていないらしい。出血しているのは手術のできない脳の奥。ただ死を待つその顔は、疲労や悩みや屈辱を、まるで全てを顕したような土気色に染まっていたのである。
僕にはもう何もできない。涙を流して祈ってみても、魂魄半ば抜けかけた兄の体からは異様な臭気が漂うばかり。これは死臭かと思うほどのもので、女性の月経の匂いとよく似ているなと思った次第である。
マック SC
僕にはもう何もできない。涙を流して祈ってみても、魂魄半ば抜けかけた兄の体からは異様な臭気が漂うばかり。これは死臭かと思うほどのもので、女性の月経の匂いとよく似ているなと思った次第である。
マック SC