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大気シミュレーションの結果、金星極域の不思議な温度分布を解明できた

2016年02月10日 | 金星の探査
金星大気のシミュレーション研究で、
金星の特異な気温分布の生成・維持メカニズムを,
理論的に解明できたそうです。

この研究では、
金星の極域上空の大気に見られる高温状態の再現に成功していて、
世界初の成果になるそうです。


不思議な気温分布

金星の極域上空の大気では、
気温が高い領域を冷たい領域が囲んでいます。

この不思議な気温分布は、
1970年代の探査ミッションで明らかになったことでした。

なぜ、そのような気温分布が生じ、さらに長期間維持されるのか?
このメカニズムは、これまで解明されていませんでした。

特異な気温構造が長期間にわたって維持されています。

なので、このメカニズムには、
惑星規模の大気現象が関係しているのかもしれないんですねー

極域の気温分布を理解することで、
惑星全体の大気の性質を理解しようと考えることになります。


大気シミュレーション

今回の研究では、
地球大気用の大規模シミュレーションモデルを金星大気用に改変し、
金星極域の気温構造の解明を試みています。

そして、大気の組成や太陽からの熱量などに基づいたモデルを計算。

その結果、極近傍で気温が高く、その周りを冷たい空気が取り囲むという、
これまでに観測された気温分布が再現され、
緯度による気温差を作るのは、南北方向の大気の循環だと分かります。

これは、上空の大気がひきずり降ろされて、
周りの空気から圧縮され温度が高くなっていることを示しているそうです。

「温度が高くなった気流が極近傍を集中的に暖めることで、
金星極域における特異な気温分布が作られる」
と考えると、この現象を自然に説明できるんですねー
シミュレーションで再現された金星極域の上空温度と大気の流れ(イメージ図)
赤道域が高温で高緯度になるにつれて温度が下がっていくが、
極域の一部に高温部が再現されている。

一方で金星大気の全体的な気温分布に着目すると、
気温は赤道で低く、高緯度で高くなっていました。

それにもかかわらず、赤道から極への流れができているということは、
南北方向の循環が強制的に作られていることを意味します。

金星の分厚い雲層が太陽光によって加熱されると、
東向きに進む波(熱潮汐波)が生じます。

この波と金星大気で吹いている強い東風(スーパーローテーション)とが、
作用し合って、極向きに強い流れが作られ、これが南北の循環になります。

大気の流れが極域で集まる過程には、
金星全体を包み込むような巨大な波が関係していて、
極域で生じた下降流により大気が圧縮され継続的に温度が高くなっている。

このことをシミュレーションの結果は示唆していたんですねー
熱潮汐波により南北の循環が発生する様子(イメージ図)。

今年の4月から本格的な観測を開始する金星探査機“あかつき”。

“あかつき”の観測によって、
南北方向の大気の流れの強さや気温分布が分かれば、
今回の理論モデルの実証につながります。

モデルを元に観測成果を解釈することで、
金星の大気・気象への理解が、もっと深まることも期待できますね。


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