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モバライダー mobarider

銀河風の構造に刻まれた銀河合体とスターバーストの歴史

2016年02月15日 | 宇宙 space
スターバースト銀河“NGC 6240”から吹き出す大量の電離ガスの詳細構造が、
すばる望遠鏡による観測でとらえられました。

電離ガスの大きさは差し渡し30万光年に及んでいて、
近傍宇宙では最大規模になるんですねー


スターバーストと銀河風

私たちの住む天の川銀河では、
1年間に太陽1個分程度の星が生まれると考えられています。

一方でスターバースト銀河と呼ばれる、
激しい星形成活動(スターバースト)を起こしている銀河では、
星生成率が天の川銀河の10倍から1000倍にもなるんですねー

スターバーストが起こると、
大量に生成された大質量星からの紫外線や、
それらの星が一生を終える際の超新星爆発によって、
銀河中のガスが銀河の外に吹き飛ばされてしまう、
銀河風“スーパーウィンド”が生じると考えられています。

大量の星生成と銀河風によって、
銀河からは大量のガスが失われるので、銀河の星生成活動は急速に停止し、
銀河の周囲にはガスが撒き散らされることになります。

なのでスターバーストと銀河風は、
銀河の進化と銀河外のガスの進化に大きな影響を与えると考えられています。


浮かび上がる電離ガス構造

へびつかい座の方向、約3億5000万光年彼方にある“NGC 6240”は、
天の川銀河の25~80倍程度の勢いで星を生成しているスターバースト銀河です。

2つの渦巻銀河が合体途上にあるようで、変わった形をしているんですねー

合体によるスターバーストにより、“NGC 6240”は赤外線で明るく輝いていて、
その総放射エネルギーは太陽の1兆倍近くにもなります。

今回の研究では、この銀河のスターバーストの歴史を解明するため、
すばる望遠鏡を用いて観測。

すると、複雑な構造を持つ巨大な電離ガスの様子が、
銀河中に浮かび上がることに…
すばる望遠鏡主焦点カメラ“Suprime-Cam”で撮影した“NGC 6240”(疑似カラー画像)。
銀河から吹き出す巨大な電離ガスが赤く見えている。

電離ガスの大きさは差し渡し30万光年もあり、
複雑なフィラメント(筋状)構造やループ(環状)構造も見られました。

電離ガスの存在は従来から知られていたのですが、
これほど淡いところまで、はっきりと内部構造がとらえられたのは初めてのこと。

銀河の北西と南東に発見した巨大な「破れた泡構造」は、
銀河風が銀河円盤の垂直方向(北西から南東の方向)に、
ガスを吹き飛ばしたことを示していました。
“NGC 6240”の巨大な電離ガスの詳細構造を写し出したHα輝線画像(左)
電離ガスの主な構造を模式的に示したスケッチ(右)

データ解析から分かったことは、
“NGC 6240”が過去に少なくとも3回は激しいスターバーストを起こしていて、
各々のスターバーストによって発生した銀河風が、
複雑な電離ガス構造を形成していることでした。

最も古いスターバーストが起こったのが約8000万年前で、
銀河の合体は約10億年前に始まったと考えられるので、
今回の結果は、銀河合体がかなり進んだ段階で、
突然スターバーストが引き起こされたことを示しているようです。


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