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モバライダー mobarider

天の川銀河の中心付近には若い星が少ない「すき間」がある

2016年08月04日 | 宇宙 space
天の川銀河の中心方向を赤外線で観測したところ、
29個のケフェイド変光星が見つかりました。

そしてその多くが、
銀河中心から8000光年以上離れたところに存在していることが、
明らかになったんですねー

このことから銀河中心の領域には、
誕生から3億年程度以内の若い星がほとんどない「すき間」が存在しているようです。


ケフェイド変光星の観測

天の川銀河の基本的な形は、天体までの距離を測定することで調べられています。

でも、この方法は万能ではなく、
特に銀河の円盤部分では、大量に分布する星間空間のチリの影響で、
多くの領域で星の分布はまだ分かっていないからです。

今回、東京大学理学系研究科の研究チームが行ったのは、
ケフェイド変光星というタイプの天体の観測。

ケフェイド変光星をチリの影響が比較的小さい近赤外線で観測することにより、
これまでチリに隠されていた銀河中心領域の星の分布を探っています。

このタイプの変光星は変光周期と星の真の明るさに一定の関係があるので、
周期から求めた真の明るさを比較することで距離を測定できるんですねー

  観測に使われたのは南アフリカ天文台のIRSF望遠鏡とSIRIUS近赤外線カメラ。

そして、天の川銀河の中心方向を5年にわたって観測すると、
29個のケフェイド変光星が見つかります。

このうち4個は、
銀河中心から約800光年以内の狭い範囲に分布していたのですが、
残りはすべて太陽系から見て銀河中心の向こう側…
しかも中心から8000光年以上遠くにあることが明らかになりました。

この距離決定には、
星間チリによって星が暗く見える効果を正しく補正したことが重要だったそうです。
天の川銀河のケフェイド変光星の分布(模式図)。
黄色が今回見つかったケフェイド変光星。
下半分の小さな白い点は、
過去に可視光線での観測で見つかっていたケフェイド変光星。


若い星が少ない領域

ケフェイド変光星は1000万年前から3億年前に生まれた星が進化したもので、
百数十億年の歴史を持つ銀河に数多く存在する星の中では、若い星のグループに含まれます。

星は3億年程度では誕生した場所から、それほど大きく散らばることはありません。

なので、ケフェイド変光星の分布を探ることによって、
星がどのような場所で最近作られていたかを探る手がかりが得られます。

今回の観測で明らかになったことは、
天の川銀河の中心付近に若い星のない「すき間」が存在すること。

この「すき間」はバルジと呼ばれる、
百億年前に生まれた古い星が多く存在する領域になります。

そこに若い星があまりないという可能性は、
ガスの分布などから過去にも指摘されていました。

でも、実際の星の分布に基づいて「すき間」の存在を示したのは、
初めてのことになります。
天の川銀河の若い星の分布(模式図)。
赤い点がケフェイド変光星に代表される若い星。

この結果は、チリに隠されているために見えていなかった領域を、
赤外線観測で調べることで、天の川銀河の広い範囲の星の分布、
ひいては銀河の形を明らかにできるという可能性を示すものになりました。

今後の大規模な赤外線観測によって、
天の川銀河の星の分布がさらに解明されていくのでしょうね。


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