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火星の渓谷は水が流れて出来たものではないかも?

2016年08月08日 | 火星の探査
火星と言えば赤く焼きついた惑星というイメージがありますよね。

でも最近では、川底にあった小石、
古代の海岸線や河口の三角州、そして水中で形成された鉱物など…
火星の表面に水が存在していたことを示す痕跡が多数見つかっています。

その中の1つに水の河川で削られたような渓谷がありますが、
最新の研究では残念ながら、このような渓谷は“液体の水”とは関係がないようです。


液体の水の関与

現在、火星ではNASAの探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”が軌道上を周回しています。

“マーズ・リコナサンス・オービター”には、
高解像度カメラ“HiRISE”と小型観測撮像スペクトロメータ“CRISM”が搭載されていて、
“HiRISE”では詳細な地形を、そしてCRISMではその地域の化学成分を観測することができます。
高解像度カメラ“HiRISE”で撮影された火星表面の領域(上)と、
その画像に小型観測撮像スペクトロメータ“CRISM”観測された画像を重ねたもの(下)。

そして“マーズ・リコナサンス・オービター”による100以上の観測の結果、
これまで“水の河川”によって作られたと思われていたこの渓谷が、
液体の水やその副産物によるものでないとことが分かってきます。

このような渓谷は両半球の緯度30度~50度に広く存在し、
それらは両極に向けて傾斜しています。

そして以前には、これらの渓谷は季節的な活動… たとえば温度変化による水の融解と凝固、
あるいは二酸化炭素の霜によるものだと考えられてきました。

でも“CRISM”を利用した今回の報告によれば、
火星の表層からそれらの物質を示す痕跡は発見されず…

今回観測された土は、渓谷が形成される途中で露出したもので、
流れる水によるものではなかったのかもしれません。
渓谷をとらえた動画に火星表面の異なる鉱物の存在を示した動画。

現在見られるこれらの渓谷は、
「数十億年前の、より火星表面で液体の水が安定していた時に作られた」
という可能性は無いのでしょうか。

火星には現在も液体の水が存在していると考えられます。
でも、その正体を正確に把握するのはなかなか難しいようですね。

 
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