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モバライダー mobarider

なぜ、銀河は銀河団に落ち込んでいくと星の形成を止めてしまうのか?

2018年11月20日 | 宇宙 space
銀河は、銀河団に落ち込んでいくと星の形成が急に止まることが知られていて、その原因としては複数のプロセスが考えられています。

今回、主要なプロセスを解明するため、宇宙の歴史の様々な年代で星形成が止まった銀河を観測。
分かってきたのは、星形成が止まるまでの時間は、現在の宇宙に近づくほど長くなるということでした。

さらに、この時間スケールを比較して分かったことがあります。
星の形成が急に止まる最大の原因は、銀河団の高温ガスにより銀河内の星の材料が引きはがされることらしいです。


星の形成を止めるプロセス

銀河の大集団である銀河団は、数百個から数千個の銀河のほか、高温のガス、ダークマターから構成されています。

その銀河団の中に銀河が落ち込むと、銀河内で星の形成が急激に止まることが知られています。

星の形成が急激に止まることは“クエンチング”と呼ばれているのですが、何によって引き起こされているのかは、はっきりとは分かっていません。

銀河内の冷たいガスが星の材料になり、このガスが失われれば“クエンチング”が起こることになります。

そして、ガスを失わせる要因として考えられているのが、銀河団内に存在する高温高密度のガス。
このガスによって、銀河団に落ちてくる銀河内の冷たいガスが引きはがされるというプロセスが考えられます。

あるいは、銀河が銀河団へ入ると、それ以上銀河に冷たいガスが補充されることが無くなり、銀河がある種の「窒息状態に陥る」というプロセスも考えられます。
このプロセスの場合に予測されるのは、“クエンチング”はガスの引きはがしよりもゆっくり進むということ。

さらに別のプロセスとして、銀河の星形成のエネルギーによって銀河から冷たいガスが流出することも考えられ、この場合“クエンチング”はガスの引きはがしよりも速く進行することが予測されます。


様々な年代の宇宙に存在する銀河を観測

上記の3つのプロセスは、異なる時間スケールで“クエンチング”が起こることを予測しています。

そこで、カリフォルニア大学リバーサイド校のチームが行った研究は、宇宙の歴史の様々な年代で星形成が止まった銀河を観測すること。
この観測により“クエンチング”の主要なプロセスを解明しようとしています。
○○○
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された、ほうおう座方向の銀河団“SpARCS J0035”。
48億歳だった頃の宇宙に存在している。
研究では、赤外線天文衛星“スピッツァー”による観測で発見された大量の銀河団を調査。
銀河団に落ち込む銀河の星形成が止まるまでの時間は、宇宙が年老いていく(現在に近づく)ほど長くなることを明らかにしています。

銀河の星形成が止まるまでの時間は、宇宙が40億歳の頃には11億年で、60億歳の頃には13億年、現在(宇宙は128億歳)では50億年。

遠方宇宙と近傍宇宙とで、銀河団内の銀河における“クエンチング”の時間スケールを比較した結果、予測にあっていたのは窒息シナリオや流出シナリオよりも、引きはがしシナリオのようなプロセスの方でした。

銀河団内の最大規模の銀河で星形成が止まるプロセスを説明する良いアイデアは、ケック天文台やジェミニ南北望遠鏡の何夜にもわたる観測があったから得られたそうです。

でも、低質量の銀河では異なるプロセスによって“クエンチング”が起こる可能性もあるそうですよ。


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