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これで2例目! 直径が木星ほどしかない超低温の赤色矮星を公転する地球サイズの惑星“SPECULOOS-3 b”を発見

2024年05月28日 | 系外惑星
今回の研究では、トランジット法で惑星を検出する望遠鏡ネットワークを用いて、直径が木星ほどしかない超低温の赤色矮星の周りを公転する地球サイズの惑星“SPECULOOS-3 b”を発見しています。

このタイプの星の周りに惑星が発見されたのは“トラピスト1”に続く2例目になります。

“SPECULOOS-3 b”は、主星に非常に近い軌道を回っているので、大気が存在する可能性は極めて低いようです。
それでも、超低温矮星の性質を深く知ることや、生命の存在に適した惑星があるかどうかについても、より深く理解できる可能性があるようです。
この研究は、ベルギー・リエージュ大学のMichaël Gillonさんを中心とする研究チームが進めています。


サイズや質量が恒星としての下限に近い超低温矮星

赤色矮星(※1)は、中心で水素の核融合反応が起こっている“普通の恒星(主系列星)”の中では、最も質量が軽く温度が低い恒星です。
その中でも特に温度が低いものを“超低温矮星(ultra-cool dwarf star)”と呼ぶことがあります。
※1.表面温度がおよそ摂氏3500度以下の恒星を赤色矮星(M型矮星)と呼ぶ。実は宇宙に存在する恒星の8割近くは赤色矮星で、太陽系の近傍にある恒星の多くも赤色矮星。太陽よりも小さく、表面温度も低いことから、太陽系の場合よりも恒星に近い位置にハビタブルゾーンがある。
超低温矮星はスペクトル型がM6.5よりも低温側の赤色惑星で、その表面温度は3000K未満しかありません。
直径は木星ほどで質量は太陽の10分の1ほど、サイズや質量が恒星としての下限に近く、主に赤外線の波長で輝く天体です。

惑星形成モデルによると、超低温矮星では原始惑星系円盤(※2)の質量およびサイズが小さいので、木星型惑星ではなく、水星から地球程度のサイズの惑星を比較的たくさん持ちうることが示唆されています。
※2.原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がる水素を主成分とするガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
星は大きいほど核融合に使う水素の消費量が増加していきます。
なので、明るく輝いているということは、水素の消費量が多く寿命が短いことを意味します。

一方、軽い恒星ほど寿命が長くなります。
このため、超低温矮星の寿命は、現在の宇宙の年齢を超える1兆年以上にもなります。

恒星は軽いものほど数が多く、超低温矮星は太陽くらいの質量を持つ星々よりもずっとありふれた存在といえます。
ただ、極めて暗いので、その性質はよく分かっていません。

天の川銀河に存在する惑星の大半は、超低温矮星の周りを公転しているはずですが、それらの惑星についても、ほとんど理解が進んでいない状態です。


太陽系近傍の超低温矮星を公転する惑星の探索

今回の研究で見つかったのは、超低温矮星の周りを公転する地球サイズの惑星“SPECULOOS-3 b”です。

この探査に用いたのは、トランジット法(※3)で惑星を検出する望遠鏡ネットワーク“SPECULOOS(Search for Planets EClipsing LUtra-c001 Star)”。
研究チームでは、“SPECULOOS”により太陽系近傍にある超低温矮星を公転する惑星の探索をしていました。
※3.トランジット法は、地球から見て惑星が主星(恒星)の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探る。繰り返し起きるトランジット現象を観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができる。また、トランジット時には、主星の明るさが時間の経過に合わせて変化していく。その明るさの変化を示した曲線“光度曲線”をもとに、系外惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることが可能となる。
図1.主星の超低温矮星“SPECULOOS-3”(右)を公転する惑星“SPECULOOS-3 b”(左)のイメージ図。主星は表面温度が2800Kの赤色矮星で、惑星は、この周りをわずか17時間で公転している。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
図1.主星の超低温矮星“SPECULOOS-3”(右)を公転する惑星“SPECULOOS-3 b”(左)のイメージ図。主星は表面温度が2800Kの赤色矮星で、惑星は、この周りをわずか17時間で公転している。(Credit: NASA/JPL-Caltech)
超低温矮星を公転する惑星が見つかったのは、有名な“トラピスト1”に続く2例目でした。

“SPECULOOS”では、2011年からプロトタイプの観測装置を南米チリのヨーロッパ南天天文台ラ・シーヤ観測所“トラピスト望遠鏡”に取り付けて観測を開始。
“トラピスト1”の惑星系を発見したのが2017年のことでした。

“トラピスト1”は、超低温矮星を公転する7個の惑星からなる系で、ハビタブル(生命が居住可能)な惑星も複数存在すると考えられています。

“SPECULOOS”の観測が正式に開始されたのは2019年のこと。
チリ・カナリア諸島・メキシコの計6基のリモート望遠鏡を連携して観測は進められました。

超低温矮星は、夜空に膨大な数が存在しています。
なので、惑星のトランジットを検出するには、数週間にわたってそれらを一つずつ観測する必要があります。
そのために、専用のリモート望遠鏡ネットワークが必要だった訳です。


主星に非常に近い軌道を公転する地球サイズの惑星

“SPECULOOS-3”は、はくちょう座の方向約55光年彼方に位置するスペクトル型がM6.5の超低温矮星で、表面温度は2800と推定されています。
質量は太陽の0.1倍、半径は太陽の0.12倍(木星の約1.2倍)となります。

今回見つかった惑星“SPECULOOS-3 b”は、半径が約6100キロと地球とほぼ同じで、主星(恒星)の周りをわずか約17時間で公転しています。

主星に非常に近い軌道を回っているので、地球が太陽から受ける放射の約16倍ものエネルギーを受けていて、高エネルギー放射線が降り注いでいることが考えられます。

このような環境では、惑星に大気が存在する可能性は極めて低くなります。

それでも、この惑星が大気を持たないことで、いくつか都合が良い点もあるかもしれません。
例えば、超低温矮星の性質を深く知ることや、生命の存在に適した惑星があるかどうかについても、より深く理解できる可能性があります。

さらに、“SPECULOOS-3 b”は、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の良い観測対象にもなるはずです。
研究チームでは、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いれば、この惑星の表面について鉱物的な知見も得られると考えています。


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