宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

アルマ望遠鏡、最後のアンテナを設置

2014年06月25日 | 宇宙 space
2002年から、南米チリのアタカマ砂漠に建設が進められていた、
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計
(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array = ALMA:アルマ望遠鏡)の最後のアンテナである66台目が、2014年6月13日に、標高約5000メートルの山頂施設に送り届けられました。

アルマ望遠鏡は日本国立天文台、ヨーロッパ南天天文台、アメリカ国立電波天文台などが参加している国際共同プロジェクト。

アタカマ砂漠の標高約5000メートルの高原に、高精度パラボラアンテナを合計66台設置し、
それら全体をひとつの電波望遠鏡として観測可能な、18.5キロの開口合成型電波望遠鏡として活用します。

アタカマ砂漠は、
アンデス山脈と太平洋の間を南北1000キロに渡って広がる、平均標高2000メートルの高地砂漠で、
アルマ望遠鏡が設置されたチャナントール山頂付近は、標高5000メートルを超えています。

高地で空気も乾燥しているので天文観測には最適なんですがねー
居住には厳しい環境なので、多数の観測施設のほとんどは標高3000メートル付近に建設された山麓施設から遠隔操作で制御するそうですよ。


惑星状星雲に水生成に必須な分子を発見

2014年06月24日 | 宇宙 space
ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”による観測で、
水生成に必須とされる分子が、惑星状星雲に見つかったんですねー
らせん状星雲“NGC 7293”と
分子の存在を示すグラフ

太陽のような星は、数十億年もの一生の最期になると、不安定になって外層を放出します。

残された中心核は高温の白色矮星になり強い紫外線を放出。
この紫外線に照らされた外層が惑星状星雲となって見えることになります。

これまで惑星状星雲では、
強い紫外線によって分子が破壊されたり、新たな分子の生成が制限されたりすると考えられてきました。

でも、“ハーシェル”を使った観測で、水生成に必須な分子が惑星状星雲に発見されたんですねー

今回の研究では、11個の惑星状星雲を観測・分析し、
3個から水生成に必須となる分子イオン“OH+”を発見しています。
そして、3つの惑星状星雲に共通するのは、10万度を超える高温の中心星の存在でした。

また、らせん状星雲の中心星は、質量は太陽の半分程度なんですが、
表面温度は約12万度にもなり、太陽(約6000度)よりもはるかに高いんですねー

なので、みずがめ座の方向約490光年の距離にある、
らせん状星雲“NGC 7293”も観測の対象になりました。

観測の結果、星雲の分子の分布は、かつて星から放出された一酸化炭素分子が、
強い紫外線に破壊される可能性のある領域にありながらも、
とても豊富に存在していることが分かりました。

一酸化炭素分子から酸素原子が遊離すると、
酸素と水素が結合したOH+原子イオンが作れるようになります。
さらに、紫外線がその生成を妨げるどころか、促すのではないかという仮説も考えられています。

これらの観測結果は、惑星状星雲で水生成に必要な分子を発見した初めての成果になるんですが、
実際に水生成に至るかどうかはまだ不明なんですねー

月の表と裏が、あまりに違う謎を解明

2014年06月23日 | 宇宙 space
月球儀を初めて見て驚くのが、月の表と裏があまりに違うことです。
裏側は山やクレーターだらけで、海と言われる平地がないんですねー
月の裏側

この謎は、旧ソビエト連邦が打ち上げた探査機“ルナ3号”によって、
月の裏側の画像が初めてとらえられた1959年から、“月の裏側高地問題”と呼ばれてきました。

月の起源については、地球が形成されて間もないころ、火星サイズの天体が地球に衝突して破壊され、
その破片から月が生まれたという“ジャイアントインパクト説”が、広く受け入れられています。



地球と衝突した天体は、ただ高温となって溶けたものでなく、その一部が蒸発したんですねー
そして、地球の周りを取り囲むように、岩石やマグマや蒸発した物質からなる円盤状の構造ができることになります。

さらに、形成されて間もないころの月は、
現在より10倍から20倍ほど地球に近かったと考えられています。
研究チームでは、現在のように月がその表側を常に地球のほうに向ける起動周期を、
すぐにとるようになった点に着目。

月は地球よりかなり小さいので、冷えるのも早かったのですが、
地球側に片方の面を当初から向けていたので、月の表側だけが、
摂氏2500度以上と高温だった地球からの放射熱を浴びたんですねー

つまり、月の裏側はゆっくりと冷えていった一方で、表側はドロドロに溶けたままということになります。

この表と裏の温度変化が、月の地殻の形成に重要な役割を果たすことになります。

月の地殻には、アルミニウムやカルシウムなど蒸発しにくい物質が密集しています。
蒸気が冷えはじめたとき、最初に降り積もった物質はアルミニウムとカルシウムでした。

月の表側はまだ高温だったので、アルミニウムとカルシウムは冷たい月の裏側の大気中で凝縮、
それから数千年、数百万年経ち、それらの物質は月のマントル中でケイ酸塩と結合して斜長石を形成します。

そして、それが最終的に表面に移動して、地殻が形成されることに…
なので月の裏側の地殻は、より鉱物がが多く、より厚くなったんですねー

今では月は完全に冷えて、表面下も融解してはいません。
形成間もないころ、大きな天体が月の表側に衝突、さらに地殻にまで達して、大量の玄武岩質溶岩が放出され、現在見られるような月の海が形成されました。

一方、裏側に衝突したほとんどの天体は、厚い地殻に穴を開けることはなかったので、
玄武岩質溶岩が噴き出すこともなく、谷やクレーターや高地だけが作られたようです。

地球の近くを通過した小惑星“ビースト”

2014年06月22日 | 宇宙 space
地球の近くには、絶えず小惑星が高速で飛び交っているのですが、
なかでも強い印象を与えたのが、最近地球の近くを通過した小惑星“ビースト”なんですねー

“ビースト”の鮮明な画像
今回NASAが公開したレーダー観測画像で、“ビースト”の隠れた外観が明らかになりました。

これらの画像は6月8日、地球に最接近したときに撮影されたもので、
ジャガイモのような形の“ビースト”は、大きさが少なくとも375メートル、ゆっくり回転しながら地球から125万キロ以内の位置を通過するようすがとらえられています。

この場所は、地球から月までの距離の3倍より少し遠い所になるんですねー

“ビースト”は2個の天体がくびれた1個の小惑星を形作っている二重天体か、接触連星のようです。

NASAでは“ビースト”のレーダー観測画像を元に動画も作成していて、
ジェット推進研究所のウェブサイトで公開しています。
“ビースト”が地球に接近した画像の中で、
今後もこれが一番近距離で撮影されたものであり続けるそうですよ。

冥王星の衛星カロンに地下海はあったのか?

2014年06月21日 | 冥王星の探査
かつては惑星で今は準惑星に分類されている冥王星。
冥王星の衛星から見た風景(イメージ図)。
中央右が冥王星、その右がカロン。

太陽からの距離が、太陽~地球の距離の約30倍から50倍も離れていて、
表面温度は摂氏マイナス229度で、
とても表面に液体の水は存在しそうにありません。

もちろん、冥王星に見つかっている5つの衛星も極寒の世界で、
最初に見つかったカロンは、冥王星に対する質量が8分の1もある大型の衛星なんですねー


現在、冥王星とカロンは常にお互いに同じ面を向け、安定した真円の軌道を回っているのですが、
この状態になるまでにカロンは、細長い楕円軌道を回っていた時期があったと考えられています。

ただ、そのような時期には潮汐変形で熱が発生して、
カロン内部に液体の海が存在した可能性があるんですねー

NASAではカロンの軌道の変化と、それに伴って作られる地表の割れ目がどのようなものかについて、いつかのパターンのモデル作成。

カロンの内部に液体の海がある場合のモデルでは、
軌道がそれほど細長くなくても、冥王星の近くをカロンが公転していれば、
木星の衛星エウロパのような割れ目が作られるそうです。
NASAの探査機“ガリレオ”が撮影した
木星の衛星エウロパ。

エウロパの割れ目(画像2枚目)は、木星との潮汐作用でできたもので、
土星の衛星エンケラドスと同様に、
その内部には広大な液体の海があるのではと注目を集めているんですねー

もしカロンの表面に割れ目があった場合には、その模様をモデルと照合することで、
軌道の変化や割れ目ができた当時の氷殻の厚みや粘度、内部に海がそんざいした可能性などを探ることができるんだとか…

まぁー 割れ目が見つからなくても、やはりカロンの形成史を調べる手がかりにはなるようです。

地上の天体望遠鏡では、遠すぎるうえに小さすぎて見えないカロンの表面が、
実際にはどうなっているのか?
2015年7月に、NASAの探査機“ニューホライズンズ”が冥王星に到着するのが楽しみですね。