宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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休眠中の彗星着陸機“フィラエ”との通信再開は可能か?

2015年03月25日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
昨年の11月12日、
ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機“ロゼッタ”搭載の着陸機“フィラエ”は、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星へ着陸探査を試みました。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星上の着陸機“フィラエ”

でも、“フィラエ”は“ロゼッタ”から投下されたあと、
当初予定されていた着陸地点からバウンド。
およそ1キロも離れた日陰の多い場所に来てしまいます。

予定通りの地点に着陸することができていれば、
彗星の自転周期(12時間)のうち、7時間の日照が得られるはずでした。

でも、今は1時間半しか太陽光が当たらず、
太陽電池パネルによる発電が十分にできてないんですねー

なので、1次バッテリーの電力が尽きるまでの間、
表面付近のガスや地表物質のデータ取得が、休みなく行われることになります。

不安定な機体が、ひっくり返るリスクを承知で行った、サンプル採取用ドリルの稼動や、
太陽光が少しでも当たりやすくための姿勢の修正。

これらの操作も無事完了し、
史上初めて彗星核で直接得られた観測データを、すべて地球に送り届けた後、
“フィラエ”からの通信が途絶えることに…

ただ、地上の管制チームは、
彗星が太陽に近づいて、“フィラエ”のバッテリーが充電できるようになり、
また“ロゼッタ”が彗星を周回して、
“フィラエ”と通信を試みることができる機会を待っていたんですねー

最初の機会となる3月12日から、
“ロゼッタ”と“フィラエ”で通信が可能になる期間が始まり、
“フィラエ”の電力配分を通信に最適化するコマンド送信などを試みていました。

最後にコマンドが送信されたのは3月17日のこと。
通信チャンネルは、3月20日までの8日菅解放されていたのですが、
結局、通信の復活はできず… 来月以降に持ち越しとなってしまいます。

次に“ロゼッタ”と“フィラエ”が、
お互いに電波の届く位置関係になるのは4月の前半。

さて、通信は復活するんですかねー

初観測! 重力レンズによる超新星の多重像

2015年03月23日 | 宇宙 space
93億光年彼方で起こった超新星爆発が、
重力レンズ効果により4つの像になって、ハッブル宇宙望遠鏡で観測されました。

超新星が、このような形で観測されるのは初めてのこと。
今後もう1つの像が、時間差で出現すると予測されているので、
数年後の“答え合わせ”も楽しみなんですねー
銀河団と、それに属する楕円銀河(枠内)の重力によって、
さらに遠方の超新星が4つの像になって観測された(矢印)。

しし座の方向50億光年彼方の銀河団“MACS J1149.6+2223”。
この中に、その向こうにある93億光年彼方の銀河に現れた超新星が、
4重の像になって発見されました。

この像は、
銀河団の強い重力が、レンズのように超新星からの光をゆがませたもので、
本来の20倍も明るく見えていました。

こうした重力レンズ効果による多重像は、
遠方の銀河やクエーサー(明るい銀河)のものは多く観測されてきたのですが、
超新星のものは初めてなんですねー

今回、ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた4つの像は、
現れるのに数日から数週間の時差がありました。

これは、それぞれの像が異なる経路をたどって地球に届いたため。
ダークマター(正体不明の重力源)が多い場所を通過する像は、
重力レンズ効果の影響を大きく受けるので、
距離が長くなり、遅く到着することになるからです。

今回の発見をした観測チームでは、同じ超新星の別の像が20年前に現れたはずで、
さらに別の像が、今後5年間で銀河団のどこかに現れるだろうと予測しています。

この予測は、銀河団に含まれるダークマターのモデルから導かれたもので、
数年後に答え合わせすることで、このモデルをさらに洗練させることができるんですねー

今回の超新星は、
ノルウェーの宇宙物理学者“Sjur Refsdal”さんにちなんで、
“レフスダール”と命名されました。

“Sjur Refsdal”さんは1964年に、
時間差で現れる超新星の重力レンズ像を利用して、
宇宙の膨張を調べるという手法を、初めて提唱しました。

なので今回の発見は、天文学者たちが半世紀もの間待ちわびたものだったんですねー

これにより、またひとつ宇宙の謎の解明に大きく近づくことが期待されますね。

火星に深さ1.6キロの海があったかも、約40億年前に…

2015年03月21日 | 火星の探査
高性能望遠鏡を使った観測によると、
40億年前の火星には深さ1.6キロ以上の海があって、
火星の表面のかなりの部分を覆っていたようです。
NASAの火星探査車“キュリオシティ”が撮影した、
火星のゲールクレーターの
“グレネグル”地点に見られる沈殿物。

川底にあった小石、
古代の海岸線や河口の三角州、そして水中で形成された鉱物など…
火星の表面に水が存在していたことを示す痕跡は、
これまでに多数見つかっています。

今回の研究でも、火星にかつて大量の水があったとする推測を、強く裏付けるものになっているんですねー


今回の証拠は、火星の大気中に残っている水蒸気の分析から得られました。

NASAのゴダード宇宙センターの研究チームは、
火星の表面で反射して、大気中を通り抜けてくる太陽光を測定。
そして、大気中の水蒸気の化学組成を明らかにしています。

水は水素と酸素からできていますが、
火星でも地球でも、水素の安定同位体は2種類あります。

1つは、原子核が陽子1個からできているふつうの水素(軽水素)で、
もう1つは、陽子1個と中性子1個からできている重水素です。
NASAの火星探査機“バイキング1号オービター”が撮影した画像では、
火星の薄い大気が確認できる。

火星が形成された当初は、
火星の水に含まれる水素と重水素の比率は、地球の水と同じでした。

でも、重力が小さい火星では、
大気中の軽い水素が、徐々に宇宙空間に逃げ出していってしまいます。

なので、いまの火星の水に含まれる重水素の割合は、
地球の水の7倍にもなっているんですねー

そして研究チームは、
この差が生じる原因となった、水素の逃げ出し速度を見積もることで、
かつて火星に存在していた水の量を計算できることに気付くことに…

計算の結果、水の量はひじょうに多く、
一様な深さで火星表面を覆っていたとしたら、
その深さは約137メートルになると推定されました。

でも実際には、標高がかなり低い北半球に海ができていて、
場所によっては水深が1.6キロ以上もあったそうです。


ただ、火星の水はもっと多かったと考える科学者もいるんですねー
今回の結果は、火星の表面にたまっていた水の最小値でしかないと指摘しています。

火星の初期の大気は重水素の比率が異常に高く、
その大半が、ふつうの水素とともに宇宙空間に逃げ出したと推測しています。

もし、そうだとすると、
今回の水素と重水素の比率に基づく計算は、不正確だということに…

いずれにせよ、かつて火星に大量の水が存在していて、
その水のほとんどが、極冠にある氷ではなく、液体の形で存在していたこと。

すなわち、当時の火星が、いまよりはるかに温暖だったことを示す証拠が、
どんどん蓄積してきています。

古代の火星が、
生物の生存に適した化学的環境であったことも分かってきたので、
火星に生命が存在していた可能性が、いっそう強くなったと言えますね。

20分で大きく変化していた、2013年のラブジョイ彗星の尾

2015年03月20日 | 流星群/彗星を見よう
ハワイのすばる望遠鏡でラブジョイ彗星を詳しく観測した結果、
イオンの尾の構造が、20分ほどの間に大きく変化していたことが分かりました。

地球に近づいて十分に明るく見える彗星は、1年に1つあるかないかで極めて少ない存在。
なので、イオンの尾の急激な変化の観測データが少なく、
まだよく理解されていないんですねー

今回の研究では、すばる望遠鏡の広い視野と高い集光力が威力を発揮することになります。
ラブジョイ彗星のイオンの尾の大局的な時間変化を、
Iバンドで得られた2分露出の3枚の画像から作成したアニメーション。
特に尾の下流の方(画像下側)で、
尾の幅が数分で細くなっていたことが分かる。

彗星の尾には、チリとイオンの両方があり、
今回は、イオンの尾を詳しく調べています。

そして、すばる望遠鏡に搭載された主焦点カメラで、
彗星の核から80万キロほどの範囲のイオンの尾を、繰り返し観測して、
刻々と変わる様子を追っているんですねー

観測に使われた“Iバンド(波長850ナノメートル)”では水イオン、
“Vバンド(波長550ナノメートル)”では一酸化炭素イオンと水イオンが発する光を、
それぞれとらえています。

そして、データを詳しく調べたところ、
ラブジョイ彗星の尾の大局的な構造が、10分間ほどで刻々と変化していたことが分かることに…

さらに、イオンの尾の中を詳しく解析して、
核から30万キロほどの位置に塊が生まれて、秒速20~25キロで下流に流れていく様子も発見しました。
(左)Iバンドで2秒露出のラブジョイ彗星。
水色の四角が、右で切り出されている部分を示している。
(右)彗星のイオンの尾の中の塊の移動。

イオンの尾は、太陽から流れてくる太陽風で、
彗星の核付近の原子や分子がイオン化して、吹き流されてできたもので、
最終的には太陽風の速度(秒速300~700キロ)に達すると見られています。

今回の観測は、彗星の近くでイオンの塊が、
太陽風によって最初の加速を受けつつある状態をとらえたものといえます。

観測当時、ラブジョイ彗星のイオンの尾は、
地球から見て垂直方向にたなびいていたので、
こうした尾の中の移動を詳しく探るのに適していたんですねー

観測されたイオンの塊の移動速度は、ハレー彗星で観測された秒速58キロや、
過去の大きな彗星の観測から得られた、秒速44±11キロという値と比べてかなり遅く、
新しい謎にもなっています。

イオンの塊の生成の仕組みは、まだはっきり分かっていません。

なので、彗星の観測データを蓄積していけば、
イオンの尾で起きる物理現象に、もっと迫れるかもしれませんね。

インドが再使用型宇宙往還機の試験機を打ち上げへ

2015年03月19日 | 宇宙 space
インド宇宙研究機関が開発している再使用型宇宙往還機の試験機“RLV-TD”が、
今年半ばにも打ち上げられるようです。
“RLV-TD”は、翼長は約1メートル、
質量は3トンで、ロケットを含む全長は約6.5メートル。
1段式の固体燃料ロケットの先端に装着される形で、打ち上げられることになります。

“RLV-TD”はサティシュ・ダワン宇宙センターの第2発射台から打ち上げられ、
高度70キロまで到達した後、大気圏への再突入へ。

そして、大気圏内を滑空飛行して、打ち上げから約20分後にベンガル湾に着水。
試験飛行では、地球周回軌道には乗らない、サブオービタル飛行で行われることになります。

さらにインド宇宙研究機関では、
現在、“アヴァター”という再使用ロケットの開発も進めています。

“アヴァター”は、いわゆる“Two Stage To Orbit”と呼ばれる2段式のシステムです。
第1段、第2段共に、打ち上げ後には、翼を使って滑走路に戻ってくることができ、
機体をすべて再使用することができるんですねー

また、“アヴァター”は宇宙飛行士を乗せることができ、
開発が順調に進めば、2025年ごろに打ち上げが行われるようです。

試験機“RLV-TD”は、
その“アヴァター”の第2段にあたる宇宙船部分を、小さくしたような形をしていて、
“アヴァター”の開発に必要なデータを取ることを目的としています。

再使用可能なロケットの開発は、段階を踏んで進められていて、
今回の試験飛行は、その一つになるようですよ。