宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

最古の銀河で宇宙チリを初観測、初期の星形成探る手掛かりになるかも…

2015年03月18日 | 宇宙のはじまり?
観測史上最古の銀河の1つを観測した結果、
宇宙初期に、宇宙チリが決定的な役割を果たしていたことが判明したそうです。
ハッブル宇宙望遠鏡で観測した銀河団“Abel 1689”。
四角で囲われた部分に、銀河“A1689-zD1”がある。





宇宙チリ粒子は、
宇宙を構成する極小の要素になります。

炭素、ケイ素、マグネシウム、鉄、酸素などでできたチリ粒子は、恒星の核燃焼で作られ、星が燃え尽きて爆発すると、
チリ粒子は宇宙空間に噴出されます。

そして長い年月の間に、
チリとガスでできた雲が合体して、
新たな星系が作られるんですねー


これまでの理論では、
誕生間もない宇宙には、この役割を担うチリ粒子が存在しないので、
初期銀河はガスで作られていたと考えられていました。

でも、今回の研究では、
チリ粒子がこれまで考えられていたより、はるかに早い時期から、
形成過程に寄与していたことが分かってきます。

研究チームは、“A1689-zD1”と呼ばれる銀河を観測するため、
南米チリのアタカマ砂漠に設置された巨大望遠鏡を使用。

この銀河から届いている光は、
時間と距離の測定基準となる“赤方偏移”では、
光源の銀河が約131億年前…

つまり、宇宙がビッグバンで誕生してから約7億年後に、
この銀河作られたことを意味していました。

また、この光にみられる特長は、
“A1689-zD1”が古い銀河であるにもかかわらず、
天の川銀河などの、はるか後に形成された銀河のチリ粒子に似た、
複雑なチリ粒子を豊富に含むことも分かることになります。

観測史上最も遠方にある銀河の1つで、宇宙チリが発見されたのは今回が初めて。
銀河のサイズは、そう大きくないのですが、すでにチリが大量に存在していました。

これは驚くべきことで、
これら銀河には、予想よりはるかに早い時期から、
重元素が豊富にあったことになります。


“A1689-zD1”の赤方偏移は7になり、
これまでに発見された最古の銀河チリの赤方偏移は3.2で、
これは約125億年前に相当します。

今回の観測結果は、ビッグバンから約5億6000万年経過するまでに、
銀河“A1689-zD1”が、星形成を継続的に行ってきたことを意味しています。

大半の星の寿命が、数十億年であることを考えると、
この5億6000万年とう期間は、宇宙の時間枠としてはひじょうに短いんですねー

太陽系の物質は新星爆発でも作られていた?

2015年03月17日 | 宇宙 space
2012年に出現した新星の窒素の同位体比が、
プレソーラー粒子の中で、唯一起源がはっきりしていなかったものと、
一致していることが示されました。

これにより、超新星爆発や古い星の核融合といった元素合成プロセスのほかに、
新星爆発を由来とする元素が、太陽系に存在することが初めて明らかになったんですねー


2012年に発見された、へびつかい座の新星“V2676 Oph”の光の分析から、
この新星の窒素の同位体比が、これまで起源が不明だった“プレソーラー粒子”と、
一致することが分かりました。
2012年3月27日に撮影された、へびつかい座の新星。(画像中央の十字マーク)

プレソーラー粒子とは、
同位体比(同じ元素で異なる重さを持つ“同位体”の比率)が、太陽と大きく異なる粒子のことで、
隕石の中に見つかります。

同位体比を調べると、数ある元素合成プロセスの中から、
どの現象で粒子が作られたかを探るヒントを得ることが出来ます。

これまで多く見つかってきたのが、
古い星の核融合や超新星爆発などの起源を示すプレソーラー粒子なんですが、
起源が不明なものもあり、
理論的な研究から、超新星爆発の際に起こる熱核暴走反応で作られると見られていました。

今回の研究では、新星の窒素の同位体比(窒素14Nと窒素15Nの存在比)を、
世界で初めて、観測から決定することに成功。
その値が起源が不明だったプレソーラー粒子の値に、相当していたんですねー

これでプレソーラー粒子の起源が、ほぼ全て解明できたことになり、
太陽系を作っている物質が、どのような天体で合成された物質なのか…
全容が、ようやく明らかになったそうです。
プレソーラー粒子の、炭素および窒素の同位体比の分布。
新星に見られる同位体比は、起源が不明だった粒子(赤)の同位体比と合致している。


小惑星に向けた航行段階へ移行。 小惑星探査機“はやぶさ2”

2015年03月16日 | 小惑星探査 はやぶさ2
JAXAの小惑星探査機“はやぶさ2”が、探査機搭載機器の初期機能確認を終えて、
小惑星“1999 JU3”に向けた航行段階(巡航フェーズ)へ移行したそうです。

これから2回に分けてイオン・エンジンの連続運転を行い、
今年の11月から12月ごろに予定されている、地球スイングバイに挑むことになるんですねー

“はやぶさ2”は、2014年12月3日に打ち上げられた後、
探査機に搭載されている機器の初期機能確認が行われていました。

そして3月2日に、
予定されていた機能確認や取得データの評価などが終わったので、
初期機能確認期間は無事終了。

3月3日からは、小惑星“1999 JU3”に向けた航行段階(巡航フェーズ)に移行しています。

今後は、今年の11月から12月ごろに予定されている地球スイングバイまでに、探査機に搭載されている4台のイオン・エンジンのうち2台による運転を、合計約600時間行うことになります。

運転は大きく2回に分けて行われ、
まず3月中に1回目として約400時間の運転を、
そして6月上旬ごろに、2回目の運転を行うとのこと。

これにより“はやぶさ2”は、秒速60メートルほど速度を増し、地球スイングバイに挑むんですねー

2003年に打ち上げられ、小惑星イトカワの探査を行った後、
2010年に地球へ帰還した“はやぶさ”の後継機が“はやぶさ2”です。

2014年12月3日に、種子島宇宙センターから打ち上げられた“はやぶさ2”のミッションは、
搭載された観測機器を使って探査を行い、また砂などのサンプルを採取して地球に持ち帰ること。

“はやぶさ2”による観測や、持ち帰ってきたサンプルを地球上で分析したり、
さらに、先代の“はやぶさ”や他の小惑星・彗星探査機が得たデータと比較することで、
太陽系の起源と進化や、生命の原材料を探求することを目指しています。

目的地の“1999 JU3”と呼ばれる小惑星は、
有機物や含水鉱物を、より多く含んでいると考えられている“C型”という種類の小惑星です。

先代の“はやぶさ”が探査した“S型”小惑星のイトカワと比べ、より原始的な天体だそうです。
地球から見た“はやぶさ2”の方向。

今年の11月か12月ごろに予定されている、
地球スイングバイによって速度を上げて軌道を変えると、
2018年の6月か7月ごろに目的地の小惑星“1999 JU3”に到着するんですねー

そこで探査活動を約1年半行い、2019年11月から12月ごろに小惑星を出発。
そして2010年の11月から12月ごろに地球に帰還カプセルを投下します。

カプセルは地球の大気圏に再突入し、
先代と同じオーストラリアのウーメラ砂漠に着陸することになっています。

また、探査機本体の方はカプセル分離後も航行を続け、
別の星の探査を行うことことなどが計画されているようです。
“はやぶさ2”と地球、太陽、小惑星“1999 JU3”の位置関係。


ファルコン9ロケット、初の“オール電化”衛星2機の打ち上げに成功

2015年03月15日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
スペースX社は、通信衛星“ABS 3A”と“ユーテルサット115ウェストB”を搭載した、
ファルコン9ロケットの打ち上げに成功しました。

両衛星は、
初めて打ち上げられた“オール電化”衛星で、
すべてのスラスターに化学推進でなく、
イオン推進システムを採用しています。

またファルコン9が、静止衛星を2機同時に打ち上げたのも今回が初めてなんですねー

ファルコン9はケープ・カナベラル空軍ステーションから離昇。

順調に飛行を続け、
約30分後に“ABS 3A”を、
さらに、その5分後には“ユーテルサット115ウェストB”を、
所定の軌道に投入しています。

“ABS 3A”と“ユーテルサット115ウェストB”は、
共にボーイング・サテライト・システムズ社が製造した衛星で、
702SP衛星バスを採用した最初の2機になります。

702SPはキセノンを使用するイオン推進システムをスラスターに使っていて、
従来の化学推進やアークジェット推進を使っていた衛星に比べて、はるかに効率がイイんですねー

なので、衛星の軽量化や、同じ質量でも従来より多くの機器を搭載することができます。

また、衛星を2つ重ねて打ち上げることが出来るように設計されていて、
今回の打ち上げでさっそく使用されています。

両衛星は現在、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道という、
少し変わった軌道に乗っています。

多くのロケットは静止衛星を打ち上げる際、
静止トランスファー軌道という、静止衛星の一つ前の軌道に送り届けます。

静止トランスファー軌道は、
遠地点(地球から最も遠い位置)が、静止軌道の高度(36,000キロ)と同じなんですが、
近地点(地球に最も近い位置)と、軌道傾斜角(赤道からの傾き)はズレていることが多いんですねー

なので、そこから静止軌道に乗り移るには、
人工衛星がスラスターを噴射するしかありませんでした。

でも衛星にとっては、
推進剤の残量が、多ければ多いほど運用期間を延ばすことができるので、
なるべく噴射を少なくしたいという事情があります。

そこで使われるのがスーパーシンクロナス・トランスファー軌道です。

この軌道は、通常のトランスファー軌道とは異なり、
遠地点高度が36,000キロよりも、はるかに高くなる軌道に衛星を乗せます。

これによって軌道傾斜角0度への変更が、
通常の静止トランスファー軌道から行うよりも、少ない燃料で可能になるんですねー

一方、ファルコン9ロケットはスペースX社によって開発されたロケットで、
打ち上げ機数は今回で16機目。
これまでに大きな失敗を起こしていないので、ひじょうに安定したロケットと言えます。

最近のファルコン9の打ち上げでは、第1段ロケットの回収試験が注目されています。

でも、今回の打ち上げでは積荷が重く、ロケットが持つ能力を最大に使う必要があったので、
改修のための余分な推進剤を積んだり、着陸脚を装備する余裕がなかったので実施されなかったようですよ。




“京”で解き明かした、天体衝撃波の電子加速の謎。

2015年03月14日 | 宇宙 space
今回の研究では、
天体衝撃波で高エネルギーの電子が、効率よく加速され生成される仕組みを、
スーパーコンピュータ“京”のシミュレーションで確認。

宇宙物理学の謎のひとつ、
“相対論的エネルギーを持つ電子の存在”に迫る新理論を提示しているんですねー

上段左は衝撃波の構造。色は電子密度、線は磁力線を表している。
上段右は一部領域の拡大図。
下段は電子が磁場の塊(灰色線)に衝突しながらエネルギーを獲得する様子(赤線)。

超新星爆発の名残りや、
ブラックホールから飛び出すジェットなどの天体の爆発現象は、
さまざまな電磁波で明るく輝いています。

これらの電磁波は、ほぼ光速で動き回る電子によって放射されているんですねー

この相対論的なエネルギーを持つ電子は、
天体から超音速で放出されたガスが、星間ガスと相互作用して作る衝撃波で生成されると、
考えられています。

でも、どのようにして作られるかは謎のひとつとして残されたままでした…


粒子間の衝突がほとんど起きない、
高温で希薄なプラズマ中に衝撃波が作られるので、電子が加速される複雑な現象は、
スーパーコンピュータの力を借りずに理解することは難しくなります。

この研究では、天体衝撃波の波面で磁気が再結合して、
ループ状の磁力線構造(磁場の塊)が形成される、磁気リコネクションが起きて、
電子が効率的に加速されることを見いだしています。

そして、衝撃波面近くの細かな構造を分解した計算は、
世界でトップレベルのスーパーコンピュータ“京”の高い能力で初めて実現。

100億個ものプラズマ粒子の運動を解き進め、
膨大な計算で、これまで探れなかった衝撃波の構造を探っています。
磁気リコネクション(再結合)。線は磁力線で、矢印が磁場の向きを表している。
磁力線がつなぎ変わり(上段から下段)、
双方向に噴射するジェット(灰色矢印)と磁場の塊が作られる。

まず、衝撃波面で磁気リコネクションが発生して、
ランダムに運動する磁場の塊が、たくさん噴出することを突き止めます。

そして、この磁場の塊と電子が繰り返し衝突して、
高エネルギーの電子が作られることを確かめました。

粒子が散乱体と衝突を繰り返しながら、エネルギーを獲得する仕組みは、
イタリアの物理学者エンリコ・フェルミが1949年に提唱して、フェルミ加速として知られています。

このフェルミ加速が、衝撃波で磁気リコネクションを介して、
電子の加速に極めて有効に働く可能性を初めて示せたんですねー


磁気リコネクションは、太陽フレアやオーロラを起こす仕組みとして知られているのですが、
今回の研究で、天体衝撃波の宇宙線加速でも、重要な役割を果たしていることが分かりました。

なので、磁気リコネクションによる粒子加速は、かなり一般的に応用できるようですよ。