宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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3月5日はご注意を! 小惑星が人工衛星より内側を通過するかも…

2016年02月20日 | 宇宙 space
小惑星“2013 TX68”が地球に接近しています。

地球に衝突することはまず無いのですが、
かなりスレスレのところを通過するそうです。
小惑星“2013 TX68”は、
一部の人工衛星よりも地球に近いところをかすめるかもしれない。


発見後に観測できたのは3日だけ

NASAの発表によれば、
小惑星“2013 TX68”が地球を接近通過するのは3月5日(アメリカ時間)。

ただ、予測されている最接近時の距離が、
静止軌道衛星の高度の約半分(1万7000キロ)から、
月までの距離の35倍ほど(1400万キロ)と、
大きな幅があるんですねー

まぁー 大きな幅があるのは、
データが十分に揃っていないからなんですが…

それもそのはず、“2013 TX68”が観測されたのは一度きり。

アリゾナ州で実施中の
地球近傍天体観測プロジェクト“カタリナ・スカイサーベイ”が、
2013年に初めて見つけた時だけです。

その当時天文学者たちは、この小惑星についてのデータを、
わずか3日間しか収集できていませんでした。

そして3日後に“2013 TX68”は太陽の前を通過したので、
太陽の光に遮られて見えなくなってしまいます。

なので、軌道は計算できたのですが、
計算に使う基本的な値(具体的な運動の軌跡)に、
不確かな部分が残ることになります。


地球への最接近

現在“2013 TX68”は、太陽の方向から地球へ向かっているところ。

太陽光に遮られて姿が見えないので、
最接近時の距離を正確に予測するのは難しいようです。

ただ、最接近の日には太陽の方向から外れるので、
“2013 TX68”は急に明るくなるはず。

どこかの観測プログラムが、その姿をとらえてくれれば、
新たな観測結果が得られ、その軌道はより正確になり、
地球へどの程度接近したのかが分かることになります。

最接近以降に望遠鏡で長い時間観測すれば、
どれくらいの速さで自転しているのか、大きさはどれくらいか、
また、どんな物質でできているかなども調べることができます。

地球の軌道と交わる、
他の小惑星や彗星などの地球近傍天体について、
もっと良く知るために天文学者は注目しているようです。


チェリャビンスクで爆発した隕石の1.5倍

今のところ“2013 TX68”の大きさは、
直径が30メートルと推定されています。

この大きさは、
2013年にロシアのチェリャビンスクで爆発した隕石の1.5倍になります。

この爆発による衝撃波で、
付近では窓ガラスが割れるなどして約1000人が負傷しました。

もし、直径が30メートルもある小惑星が、
同じように空中で爆発すれば、
その2倍のエネルギーを発するとことになるんですねー

直径数十メートルの地球近傍小惑星は100万個はあると考えられていて、
そのうち発見されているのは大小様々なサイズのものが1万個程度。

今回は地球に衝突しないとされている“2013 TX68”が、
次に地球へ接近するのは2017年9月28日になります。

計算によると、2億5000万分の1という極めて小さな確率で、
地球に衝突する恐れがあるそうです。

その後も2047年までに何度か最接近が予測されていて、
これらの衝突の確率はさらに低くなっています。

今後観測が進めば、過去の他の小惑星と同じように、
確率はもっと小さくなると、NASAは考えているようです。


こちらの記事もどうぞ
  NASAが小惑星衝突の危機から地球を守る専門部署を設立へ
  衝突か通過か? ハロウィンに小惑星が最接近!

アルマ望遠鏡で分かってきた連星系での惑星形成

2016年02月19日 | 宇宙 space
連星系の周囲の円盤をアルマ望遠鏡で詳細に観測してみると、
円盤内に、ガスがなくチリで構成された三日月形の領域が見つかったんですねー

このことは、連星系での惑星形成の可能性に、
新たな見識を与えてくれる成果になるのかもしれません。


アルマを使って新たに分かること

今回の研究では、
連星系での惑星の誕生と進化を調べるために、
おおかみ座の方向約450光年彼方にある“HD 142527”を、
アルマ望遠鏡で観測しています。

“HD 142527”は連星系で、
太陽の2倍の質量を持つ恒星と3分の1の質量を持つ恒星が、
約16億キロ離れて回りあっています。

系の内外にある円盤の構造は、
以前の観測から明らかになっていたのですが、
アルマ望遠鏡による最新の高解像度画像には、
連星の周りに広がる幅の広い楕円形の環(円盤)が見つかることに…

中心から円盤の内側までの距離は、
太陽と地球の間の50倍も離れていました。

円盤の大半は一酸化炭素などのガスでできているのですが、
円盤の約3分の1にあたる弧状の部分にはチリが含まれ、
そこではガスが著しく欠乏していました。
“HD 142527”系の擬似カラー画像。
チリの弧の部分(赤)、一酸化炭素の環(青と緑)。

三日月形をしたチリの雲の存在は、
連星系に特有の重力によるものかもしれず、
さらに惑星形成の鍵になる可能性もあります。

この領域にガスがないのは、
凍りついてしまってチリの粒子の表面で、
薄い氷の層になったからなのかもしれません。

そしてチリの粒子は、
くっつき合って大きくなり微惑星が作られ、
微惑星同士が合体を繰り返して、
最終的に惑星になるということです。

これまでに多くの円盤が研究されてきました。
でも、アルマ望遠鏡を使えば新たな観測データを得ることができるんですねー

そのデータを使って新たに研究を行うことで、
また新しいことが分かってくるんですね。
データを元に描かれた“HD 142527”系(イメージ図)。



こちらの記事もどうぞ ⇒ アルマ望遠鏡で分かったきた星が作られる現場の詳細

H-IIAロケット打ち上げ成功! X線天文衛星の名称は“ひとみ”

2016年02月18日 | 宇宙 space
三菱重工とJAXAは2月17日17時45分、
X線天文衛星“ASTRO-H”を搭載したH-IIAロケット30号機が打ち上げられました。

ロケットは順調に飛行し、
打ち上げから14分14秒後に衛星を分離。

19時40分には内之浦局で衛星からの電波を受信し、
太陽電池パドルの展開が正常に行われたことを確認しています。

現在、衛星の状態は正常。
軌道計算の結果は、18日以降の発表になります。

そして、気になる“ASTRO-H”の名称は、
“ひとみ”に決定したそうです。


X線天文衛星“ASTRO-H(ひとみ)”

JAXAを中心に、NASAやヨーロッパ宇宙機関、
国内外の大学などが共同で開発した衛星が“ASTRO-H(ひとみ)”です。

“ひとみ”は、
X線という人間の目では見えない光で宇宙を見ることができます。

たとえば超新星爆発、ブラックホール、活動銀河核、銀河間の高温のプラズマは、
激しく活動していて、数百万度から数億度と非常に温度が高くなっています。

X線はこうした温度の高い領域から出ていて、
“ひとみ”という名称には、
「熱い宇宙の中を観るひとみ」になるという思いが込められているんですねー

そして、これらを観測することで、
多くの謎が解明できると期待されています。
衛星の全長は14メートル、打ち上げ時の質量は2.7トン。

JAXAの科学衛星の中で最も大きく、
その中には最先端の技術で開発された高性能なX線望遠鏡が搭載されています。

また機体が大きくなったことで、これまでのJAXAの科学衛星と比べ、
冗長系も十分に確保されているようです。

“ひとみ”は打ち上げ後、
高度約575キロ、軌道傾斜角31度の軌道を回りながら観測を実施し、
目標とする運用期間は3年になります。

日本は1979年に打ち上げられた“はくちょう”から、
衛星を使ったX線による宇宙の観測を長年続けています。

2005年に打ち上げられ、
2015年に運用を終了した“すざく”の後継機となる“ひとみ”は、
世界で最も進んだX線天文衛星でもあり、
世界中の研究者から大きな期待が寄せられているそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ JAXAが六代目のX線天文衛星“ASTRO-H”を2月12日に打ち上げへ

“ファルコン9”ロケットの打ち上げは2月25日。 今回も船への着陸に挑戦

2016年02月17日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
アメリカ空軍宇宙軍団第45宇宙航空団(45th Space Wing)の発表によると、
スペースX社の“ファルコン9”ロケットによる通信衛星“SES-9”の打ち上げが、
日本時間の2月25日8時46分に実施されるそうです。

打ち上げのために確保された時間帯は10時23分までで、
今回の打ち上げでも、第1段機体を船に着陸させる試験を実施されるようです。

当初は発射台に近い陸上への着陸が予定されていたのですが、
その後ロケットの飛行プロファイルが変更。

通常の静止トランスファー軌道ではなく、
スーパーシンクロナイス・トランスファー軌道に飛ばすことになったので、
エネルギー的に第1段機体を陸地まで戻すことが出来なくなったんですねー

なので今回は、海上の船で回収することになったそうです。

スペースX社では、ロケットの低コスト化を狙い、
打ち上げたロケットを回収し、機体の再使用化に向けた開発を進めてきました。

これまで洋上や、無人の大型船の上に、
打ち上げに使ったロケットの第1段機体を着陸させる試験を続けています。

そして昨年の12月21日のこと、やっと着陸させることに成功したんですねー

着陸後の機体には目立った損傷は見られず、
再びエンジンに点火することも可能だそうです。

ただ、着陸した場所が発射した場所に近い地上だったので、
ロケットには多くの推進剤が必要になったそうです。

今回の試験ではロケットを陸地まで戻せないので、
飛行経路の下にある洋上に浮かべた船の上に着陸させて、
回収することになったということです。

船での回収は昨年1月と4月、そして今年の1月にも行われたのですが、
甲板に激突、あるいは着地後に転倒するなどして失敗に終わっています。

船のすぐ真上にまでたどり着けているので、あともう少しなんですよね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 今度は船への着陸に挑戦! スペースX社“ファルコン9”ロケット

これが重力異常の原因だった? 天の川の向こう側に数百個の銀河を発見

2016年02月16日 | 宇宙 space
地球から見て天の川の背後にあたる宇宙は、
チリや星に阻まれて可視光線では観測することができません。

ただ電波望遠鏡は、そうしたチリなどを見通すことができます。

今回、電波望遠鏡を使った観測で、
天の川の向こう側2億5000万光年の距離に多数の銀河の存在を確認。

その3分の1は今回初めて発見されたものなんですねー


天の川銀河背後の領域

今回の研究では、
オーストラリア連邦科学工業研究機関のパークス電波望遠鏡を使用。

観測では、天の川銀河のチリなどを見通し、
これまで知られていなかった天の川銀河の背後にある領域を調べています。
電波望遠鏡による観測の概念図。

観測の結果、数多くの銀河が見つかります。

約2億5000万光年という天文学的には非常に近い距離にあったのに、
天の川銀河の背後にあったので、これまで存在が隠されていたんですねー

研究で観測・確認したのは計883個の銀河で、
そのうち3分の1が今回初めて発見されたものでした。
チリなどの星間物質によって遠方の天体が不鮮明になっている星の領域“銀河面吸収帯”に、
確認または今回新たに発見された銀河のイメージ図(銀河の位置は観測データを使用)。


重力異常“グレートアトラクター”

うみへび座とケンタウルス座の方向には、
“グレートアトラクター”という巨大な重力源があります。

“グレートアトラクター”は銀河間空間に見られる重力異常で、
太陽1兆個に相当する重力によって、
天の川銀河を含む10万個ほどの銀河がそこに引き寄せられています。

1970年代に存在の兆候が指摘され、
1980年代には天の川銀河から2億光年以内の大型の銀河団は、
“グレートアトラクター”に向かう共通の運動成分を持つという、
研究成果が発表されています。

以降、その謎めいた正体を明らかにしようと研究されてきました。

ひょっとすると今回見つかった銀河が、
この“グレートアトラクター”を説明する一助になるかもしれないんですねー
地球(中心)、他のサーベイで発見された銀河(青)、
今回発見された銀河の位置(その他の色)。

さらに研究では、3つの銀河の集団(NW1、NW2、NW3)と、
新しい2つの銀河団(CW1、CW2)を含む複数の新たな構造を確認していて、
天の川銀河の動きの説明に役立つかもしれないと考えられています。

1個の銀河には、平均で1000億個もの星が存在しています。

地球から見て天の川銀河の背後に、数百個も新しい銀河が見つかったということは、
これまで私たちが知らなかった大きな質量が、そこにあると言うことなるんですねー