宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

身元も原因も不明な超高速連星を初めて発見

2016年04月25日 | 宇宙 space
天の川銀河から脱出できるほどの高速で移動している連星が見つかりました。

同じような速度で、
天の川銀河から遠ざかっている単独の星は25個ほど知られているのですが、
離れた連星が発見されたのは初めてのことなんですねー


超高速連星

かみのけ座の方向に位置する“PB3877”は、
2011年にスローン・デジタル・スカイサーベイのデータから見つかった天体で、
当初は高温で超高速のコンパクトな星として報告されていました。

でも、ハワイのケック10メートル望遠鏡とヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTで、
この星を分光観測してみたんですねー

すると、低温の伴星の存在が示され、
“PB3877”が超高速の離れた連星らしいことが分かってきます。

この連星を構成しているのは、
表面温度が太陽の5倍以上で質量が太陽の約半分の星と、
太陽より1000度ほど温度が低く太陽の約0.7倍の質量の星で、
地球から1万8000光年の距離にあるそうです。
“PB3877”の現在の位置と太陽の位置を示したイラスト。


連星はどこから来たのか?

これまでに25個ほどの超高速星が見つかっているのですが、
それらはすべて単独の星…

そう、連星は今回が初発見。
分からないのは、“PB3877”がどこから来たのかということです。

超高速星の多くは、
銀河中心の超大質量ブラックホールで加速されたものと考えられています。
でも、“PB3877”の軌道計算から銀河中心起源説は否定されることに…

また、星同士の衝突や超新星爆発が起源の可能性もあるのですが、
そうすると連星自体が崩壊することになります。

この連星は他の銀河からやってきた天体と考えることも出来ます。
その場合には長期にわたって徐々に加速されるので、
星自体は無傷でいられるんですねー

ただ、天の川銀河の周囲にあるどの星の流れとも関連は見られず…
やっぱり、連星の起源やその将来については分からないことだらけ。

“PB3877”が天の川銀河を離れてしまうのか、
それとも銀河内に留まるのかは、銀河内のダークマターの量に依存するそうです。

っと言うことは、
“PB3877”は天の川銀河のダークマターのモデルを検証する上で、
うってつけの天体とも言えますね。

探査衛星“ケプラー”は一時的に緊急モードに入っていた!?

2016年04月23日 | 宇宙 space
探査衛星“ケプラー”が4月7日に、
緊急モードに入っていたことが確認されたんですねー

その後の状態が心配されたのですが、
10日の朝には安定した状態に… なぜか復旧したそうです。


系外惑星探査衛星“ケプラー”

2009年3月に打ち上げられた“ケプラー”は、
宇宙で8年目を迎えたばかりのNASAの系外惑星探査衛星です。

主な目的は恒星の明るさの変化から、
その恒星を公転している系外惑星を見つけ出すこと。

地球から見て、
太陽以外の恒星(主星)の手前を、その星を公転する惑星が横切る、
“トランジット”という現象を観測するんですねー

“トランジット”現象では、
主星の光が手前を通過する惑星にさえぎられて、わずかに暗くなるので、
惑星の存在を知ることができます。

“ケプラー”は2012年のメインミッション完了時点で5000個の候補を発見し、
1000個以上が系外惑星と確認されています。


緊急モード

“ケプラー”は2014年から“K2”と呼ばれる延長ミッションに入っていました。
観測を行う“ケプラー”(イメージ図)

延長ミッションで“ケプラー”は、
“キャンペーン9”と呼ばれる重力マイクロレンズ現象の観測を行うことになります。

そして、このミッションを行うため、
今月7日に天の川銀河の中心の方向を見るように方向転換を行うはずでした。

でも、その約14時間前に緊急モードに入ってしまうんですねー

4日の時点では正常であったことが分かっています。

その後、10日の朝に復旧が確認され、
運用チームでは科学観測の再開と並行して、
緊急モードに移行した原因を調査しています。

また、システムの状態や、
“キャンペーン9”を実施できるかどうかについても調べられていて、
一連のチェックにはもうしばらくかかるようです。

小規模の銀河群なのに超大質量のブラックホールが存在した!?

2016年04月22日 | 宇宙 space
最大級の質量を持つブラックホールは、
銀河が多数密集した銀河団に属する銀河に存在する。

っと考えられてきたのですが、
銀河がそれほど多くは存在していない領域の銀河にも、
太陽質量の170億倍ものブラックホールが見つかったんですねー

ひょっとすると、この種のブラックホールは、
意外とありふれた存在なのかもしれませんね。


大きい銀河が多く存在する領域

これまで、太陽の100億倍もの質量を持つような最大級のブラックホールは、
大きい銀河が多く存在する領域にある巨大銀河の中心に発見されてきました。

現在の記録は、2011年に銀河“NGC 4889”に発見された、
太陽質量の210億倍もあるブラックホール。

そして、この銀河“NGC 4889”も1000個以上の銀河が集まっている、
かみのけ座銀河団に存在しているんですねー


銀河に対して大きすぎるブラックホール

ところが、それとは反対に、
銀河が20個ほどしか存在しない小さなグループの中に、
太陽質量の170億倍ものブラックホールが見つかります。

このブラックホールが存在する楕円銀河“NGC 1600”は、
エリダヌス座の方向約2億光年の距離にあり、
銀河に対してブラックホールの質量が大きすぎる(予想の10倍もある)という、
奇妙な特徴も併せ持っています。
銀河“NGC 1600”。
広域画像はDSS、拡大画像はハッブル宇宙望遠鏡による近赤外線で見た銀河中心部。

まぁー かみのけ座銀河団のような多数の銀河集まる天体の方が、
非常に珍しい存在なんですねー

一方で“NGC 1600”のグループ程度の規模の銀河群は多数存在しています。

なので今回、小さなグループにも、
モンスター級のブラックホールが見つかったということは、
モンスター級のブラックホールは、
いわば宇宙の郊外のような場所に、もっとたくさんあるのかもしれません。


ブラックホール連星

ただ興味深いのは、
“NGC 1600”の中心を回っている星々の運動が、
ブラックホールが連星系をなしているのかのような振る舞いを、
見せているという点…

大きな銀河は小さい銀河同士の合体を繰り返して成長する、
っと考えられています。

その際に、
元の小さい銀河の中心にあったブラックホールも合体することになります。

でも大きい銀河の中心に、
まだ合体しきれていないブラックホールの連星が存在することは、
よくあることと考えられているんですねー

ひょっとすると、
まだ見つかっていないブラックホールが存在しているのかもしれませんね。

褐色矮星の軌道を観測し、質量を直接算出

2016年04月21日 | 宇宙 space
ケック望遠虚による観測で、約61光年彼方に褐色矮星が検出され、
年齢や組成だけでなく、これまで理論モデルに頼っていた褐色矮星の質量も、
軌道の観測から直接求められたそうです。


褐色矮星

質量が小さく、
天体の中心で核融合反応によるエネルギーを生み出すことができない。
そんな天体が褐色矮星です。

惑星と恒星の中間的な存在で、
天体の進化を調べるうえで重要な対象になります。

でも、持続的な核融合反応が起こらないので、
明るさはどんどん失われることに… なので研究は非常に難しいんですねー


連星系“HD 4747”

今回の研究ではケック望遠鏡による観測で、
くじら座の方向約61光年彼方の7等星“HD 4747”の周りを回る、
褐色矮星“HD 4747 B”を発見しています。

実は“HD 4747”には、過去18年に及ぶ精密なスペクトル観測から、
伴星の存在が示唆されていました。
褐色矮星“HD 4747 B”(中央下の光点)。
中心の十字の位置に中心星“HD 4747”があるが、
星の光を隠して観測しているので黒くなっている。

この連星系で、
中心星と褐色矮星が同時に同じ材料から作られたと考えれば、
褐色矮星の年齢や組成を推測することができます。

また、直接観測で軌道が分かれば、
質量も求めることができます。

とくに、これまで質量は理論的な進化モデルを使って計算されていたので、
観測から質量が求められればモデルを検証することもできるんですねー

軌道の分析から、
“HD 4747 B”の質量は木星の約60倍と計算されます。

この数値は、
理論的な見積りである木星の72倍という値をかなり下回っていました。

もちろん計算には数パーセント程度の誤差はあります。

でも今回の研究は、
理論モデルの検証と改良、
さらに系外惑星のモデル構築にも役立つ成果になるようです。

ついに成功! ファルコン9ロケットが洋上の船に着陸

2016年04月20日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
スペースX社のファルコン9ロケットの第一段が、
洋上船への着陸に初めて成功しました。

これによりスペースX社は、
ロケットの再利用に向け、また一歩前進したことになるんですねー


ファルコン9ロケット

ファルコン9は、アメリカのスペースX社によって開発された2段式のロケットです。

国際宇宙ステーションへ物資を運ぶ同社の補給船“ドラゴン”や、
人工衛星の打ち上げに利用されています。

スペースX社は“ファルコン9”により、
2012年に民間企業として初めてドラゴン補給船を宇宙へ送り届けたほか、
これまでに20回以上の打ち上げを実施。

さらに打ち上げ後に、“ファルコン9”の第一段部分を帰還させ、
再利用するための実験も進めているんですねー

昨年12月には地上への軟着陸に成功していたのですが、
洋上に浮かぶ無人船への着陸には、残念ながら4回の失敗を繰り返しています。


無人船への着陸

今月8日のこと、ついに待ちわびた時が訪れることになります。

ドラゴン補給船8号機を打ち上げたファルコン9の第一段が、
着陸に成功するんですねー

打ち上げはフロリダ州ケネディー宇宙センターから行われ、
約8分半後には大西洋沖の無人船上へ垂直に降り立つことに見事に成功。

洋上へのロケットの帰還成功は、もちろん世界初の快挙でした。

着陸後の第一段は、すでに回収され機体のチェックが進められています。

スペースX社では、10回のエンジン噴射試験を行い問題がないようなら、今年の6月初めに計画されている別のミッションで再利用するそうです。


身近になる宇宙

今回の打ち上げは、
昨年6月にドラゴン補給船7号機の打ち上げに失敗して以来10か月ぶりの
国際宇宙ステーションへの補給ミッションの再開にあたります。

ファルコン9が軌道上に送り込んだドラゴン補給船8号機(CRS-8)は、
今月10日に無事国際宇宙ステーションに到着しドッキングが行われています。

人を宇宙へ送り込むこと。
これがファルコン9が目指すゴールになります。

なのでロケットの再利用は、打ち上げコストのダウンだけでなく、
宇宙へアクセスしやすくなるというメリットもあるんですねー