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主星のすぐ近くから遠く離れた軌道を回るホットジュピターまで! 謎がいっぱいある幼い惑星系

2018年11月11日 | 宇宙 space
200万歳という幼い星を取り巻くガスやチリの円盤“原始惑星系円盤”に、3本のはっきりした隙間が見つかりました。

この隙間は、複数の巨大ガス惑星によって作られたと考えられていて、もっとも外側の惑星は、私たちが知っている巨大ガス惑星と比べて1000倍も遠いところに存在しているんですねー

一体どのようにして、この惑星系が形成されたのでしょうか? 興味深い謎ですね。


若い星のすぐ近くを回る巨大ガス惑星

今回の研究対象は“おうし座CI星(CI Tau)”。
地球から約500光年彼方に位置する、誕生からわずか200万年しか経っていない幼い星です。

この星の周りには、10日弱で公転する巨大な系外惑星が見つかっています。

主星のすぐ近くを公転する高温の巨大ガス惑星“ホットジュピター”に分類される惑星で、これほど若い星の周りにホットジュピターが発見されたのは初めてのことでした。


軌道が大きく異なる4つの巨大ガス惑星

今回、イギリス・ケンブリッジ大学の研究チームは、“おうし座CI星”のホットジュピターの兄弟惑星を探す観測をアルマ望遠鏡を使って行います。

すると、星の周りに広がるチリやガスでできた原子惑星系円盤の中に、3本のはっきりした隙間が見つかります。

理論モデルから考えられることは、まだ発見されていない巨大ガス惑星によって、それぞれの隙間が作られた可能性が最も高いということ。
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“おうし座CI星”の原始惑星系円盤
すでに発見されている惑星は最も内側を回っていて、太陽系で言うと水星よりも近い軌道を回っています。

一方、最も外側の惑星の軌道は、太陽から海王星までの3倍以上も主星から離れていて、主星から最も内側の惑星までの1000倍にもなります。

そう、“おうし座CI星”で発見された4つの惑星の軌道は大きく異なっているんですねー

惑星の質量は、最も内側のものが木星の約10倍、その次が木星と同程度で、外側の2つは土星程度(木星の3割ほど)になるそうです 。
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“おうし座CI星”を取り巻く原始惑星系円盤と4つの巨大惑星(イメージ図)


謎の多い幼い惑星系

巨大ガス惑星は中心星からある程度離れたところで形成されると考えられています。

なので、中心星に近すぎる領域に位置するホットジュピターは、研究者にとって厄介な存在なんですねー

今回のように兄弟惑星が存在し、それらが最も内側の惑星を、極端に中心星に近い軌道へと追いやったのでしょうか?

そして、このようなことが一般的にホットジュピターの形成時に働くメカニズムなのでしょうか?

今回見つかった変わった惑星系が、ホットジュピターの存在する惑星系として普通なのかどうかすら、現時点では分かっていません。

それは、ホットジュピターが存在する惑星系のほとんどは、もっと年齢が進んでいるからです。
これらの惑星系には、すでに原始惑星系円盤が存在しないので、同じ手法で惑星を見つけることは出来ません。

また、もっと深い謎は、外側の2つの惑星がどのように形成されたのかです。

現在のモデルは、これまでに発見されているタイプの惑星を再現することにフォーカスする傾向があります。
なので、新たに発見される惑星が、必ずしもそのモデルにあるとは限らないんですねー

土星質量の惑星は、まず個体の核が形成され、その周りにガスを集めて作られたと考えられます。
でも、主星から遠く離れたところでは、このプロセスではとても時間がかかることになります。

ほとんどのモデルは、200万歳の惑星系で中心から遠く離れたところに土星質量の惑星を作るのに苦労することになります。

これからの課題は、謎の多いこの惑星系を多波長で観測して、円盤や惑星の特徴についてさらに手掛かりを得ること。

アルマ望遠鏡で形成中の惑星系を観測していけば、惑星形成の新しい発見があるかもしれませんね。


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中性子星どうしの連星を作るのは、どんな超新星爆発なのか?

2018年11月10日 | 宇宙 space
連星を形成する2つの中性子星が合体するという現象が、重力波と電磁波によって世界で初めて観測されました。

中性子星どうしの連星が形成されるには、2つの大質量星それぞれが超新星爆発を起こす必要があります。

ただ、中性子星どうしの連星が作られる条件は、とても難しいと考えられていて、形成過程はこれまで明らかになっていないんですねー

いったい、どういった超新星爆発が中性子星の連星を形成したのでしょうか?

中性子星の連星を作ったと考えられる超新星が、過去の観測データから見つかったことで形成過程が分かって来たようです。


金やプラチナを作り出す中性子星どうしの合体

2017年、連星を形成する2つの中性子星が合体するという現象が、重力波と電磁波によって世界で初めて観測されました。

中性子星どうしの合体は、金や白金(プラチナ)といった元素を作り出す現象になるので、今後同じような現象を観測することで元素合成に関する理解が大きく進むと期待されているんですねー

  金やプラチナは、中性子星の合体で生成された?
    

中性子星は、大質量星が進化の最終段階で超新星爆発を起こしたときに作られる超高密度の天体です。

そのような天体同士の連星が形成されるには、2つの大質量星それぞれが超新星爆発を起こす必要があります。

でも、まず重いほうの星が先に爆発して中性子星が形成され、それに続いてもう一方の星が通常の超新星爆発を起こすと、連星系を作る物質が一気に失われてしまいます。

そうすると力学的に不安定になってしまうので、連星系が壊れて中性子星の連星は形成されないことになります。

このように中性子星どうしの連星が作られる条件は、とても難しいと考えられていて、その形成過程はこれまで明らかになっていませんでした。


中性子星どうしの連星はどうやって作られるのか

今回、中性子星の連星系形成についてシナリオを考えたのは、国立天文台理論研究部のチームです。

このシナリオでは、後から超新星爆発を起こす星の外層が、先の爆発で作られた中性子星の重力の影響でほとんど剥がされてしまう場合があるとしています。

その状態で超新星爆発を起こすと、爆発で放出される物質が極めて少なくなるので、力学的に不安定にならず連星系が壊れずに済みます。

この場合に可能性があるのは、後から爆発する星が爆発の直後に希薄なヘリウムの層を周りに形成すること。

研究チームでは、スーパーコンピュータ“アテルイ”などを用いた数値シミュレーションによって、外装がほとんど剥がれた星が起こす超新星爆発がどのような天体として観測されるのかを調べます。

すると、通常の超新星爆発に比べて爆発のエネルギーが10分の1程度と小さいこと、超新星爆発後の5~10日までに最も明るくなることが分かってきます。
  具体的なスペクトルの時間変化などについても予測ができるようになっている。

そして、シミュレーションで予測された天体と非常によく一致する超新星が“パロマー突発天体観測プロジェクト”の観測データから発見されるんですねー

その超新星は、カリフォルニア工科大学の研究チームが2014年10月に観測した、ペガサス座の銀河に現れた“iPTF14gqr”でした。
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超新星“iPTF14gqr”の出現前(左)と出現後(右)。
破線の丸で囲まれた部分が超新星になる。
超新星“iPTF14gqr”が示していたのは、通常の超新星よりも爆発エネルギーが小さく、爆発時に放出された物質が極めて少ないこと。

また、超新星爆発後に行われた分光観測から、周囲に希薄なヘリウムの層が広がっていることも分かります。

これらの観測結果は、シミュレーションで予測された外層が大きく剥がれた超新星の特徴とよく一致することになります。
さらに、超新星の光度変化についても観測とシミュレーションはよく一致していました。

そう、超新星“iPTF14gqr”により形成されたのは中性子星どうしの連星で、それを世界で初めてとらえたケースになるんですねー
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(左)シミュレーションで予測された超新星の光度曲線(青色の破線)と、
実際に観測された超新星“iPTF14gqr”の光度曲線(白丸)。
(右)超新星爆発後3日程度までは爆発の衝撃波が冷えていくので急激に減光し、
5~10日の間に超新星爆発で作られた放射性物質が崩壊する熱によって明るくなる。
シミュレーションによって予測された外装が剥がれた超新星のスペクトル(白)と、
観測された超新星“iPTF14gqr”のスペクトル(ピンク)。
青は連星が起こす一般的な超新星のスペクトル。


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どこから来るの? 発生のメカニズムは? 謎の現象“高速電波バースト”を研究すれば初期宇宙のことも分かってくる

2018年11月08日 | 宇宙 space
オーストラリアの電波望遠鏡で、“高速電波バースト”と呼ばれる謎の現象が新たに20件観測されたんですねー

“高速電波バースト”とは、膨大なエネルギーが数千分の1秒という短い時間に放出される現象で、初めて検出されたのが2007年のことでした。

今回の観測で検出数が約2倍に増えたのは、望遠鏡が“高速電波バースト”の観測に非常に適していたから。
今後、“高速電波バースト”の発生のメカニズムや、どの銀河を起源としているのかが分かってくれば、初期宇宙の研究に役立つようですよ。


膨大なエネルギーが短時間に放射される現象

高速電波バーストは、宇宙のある方向から突発的に電波が放射される現象です。

継続時間はわずか数ミリ秒で、全天のあらゆる方角で発生しています。

太陽が80年かかって放出するのと同じ量の莫大なエネルギーが、一度の高速電波バーストで放出されるんですねー

でも、これまでに報告されたのは34件しかなく、その正体は分かっていません。


“高速電波バースト”は遠くの宇宙からやってくる

今回の研究で用いられたのは、オーストラリア連邦科学産業研究機構の電波望遠鏡アレイ“オーストラリアSKAパスファインダー”。

オーストラリア・スウィンバーン工科大学の研究チームは、2017年1月から観測を行い、2018年2月までに20件もの“高速電波バースト”を新たに検出しています。
  “高速電波バースト”が初めて検出されたのが2007年のこと、
  今回の観測により検出数が約2倍に増えた。


研究チームが検出した事象には、これまでで最も地球に近い“高速電波バースト”や、最も明るい“高速電波バースト”も含まれています。

さらに、“オーストラリアSKAパスファインダー”の新技術を使うことで示されたのが、“高速電波バースト”が天の川銀河の近くではなく、ずっと離れた宇宙で起こっている現象だということでした。
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“高速電波バースト”を観測する“オーストラリアSKAパスファインダー”(イメージ図)


“高速電波バースト”に適した望遠鏡“オーストラリアSKAパスファインダー”

今回の観測で用いられた“オーストラリアSKAパスファインダー”は、2020年代に観測開始予定で現在建設が進められている世界最大の電波望遠鏡アレイ“スクエア・キロメートル・アレイ”の先行プロジェクトとして、西オーストラリアのマーチソン電波天文台に設置されています。

口径12メートルの電波望遠鏡を直径6キロの範囲に36期配置した電波望遠鏡アレイです。

“オーストラリアSKAパスファインダー”で、これほど多くの“高速電波バースト”を検出できたのには2つの要因があります。

まず、“オーストラリアSKAパスファインダー”の個々の望遠鏡は、30平方度という非常に広い視野を持っていることです。
この視野は満月100個分に相当する広さなんですねー

さらに、それぞれのアンテナで空の異なる部分を同時観測するという斬新な方法を採用することで、視野240平方度、つまり満月の約1000倍の領域を一度に観測できるようになっています。

“オーストラリアSKAパスファインダー”は、“高速電波バースト”の観測に非常に適した望遠鏡と言えるんですねー


将来はダークバリオンの検出にも

“高速電波バースト”の電波は数十億年にわたって宇宙空間を旅しながら、ときどきガス雲の中を通過します。

ガス雲を通過するたびに、バーストの電波に含まれる様々な波長域の電波が異なる割合で減速することになります。

このため、バーストの電波は波長ごとにわずかに異なる時刻に地球に到着するんですねー

なので、波長ごとの到着時刻を計ることで、バーストが地球へやってくるまでにどれくらいの量の物質を通過してきたかを知ることができます。

今回の研究で確実になったのは、“高速電波バースト”がはるか遠くの宇宙からやってくることでした。

今後は、銀河間空間に存在していると考えられているダークバリオンの検出にも、“高速電波バースト”を利用していくようです。


遠方宇宙(初期宇宙)にある“高速電波バースト”の起源

宇宙の非常に遠いところからやって来る“高速電波バースト”ですが、発生のメカニズムやどの銀河を起源としているのかは、まだ分かっていません。

そこで、バーストの正確な位置を明らかにすることが、研究チームの次の課題になります。

今後は1度の1000分の1以下という精度で、バーストの位置を決定できるようにするそうです。

これは、10メートル離れたところから、人間の髪の毛1本の幅を見ることに匹敵すること。
個々のバーストを特定の銀河に結び付けるには十分な分解能になるようです。

“オーストラリアSKAパスファインダー”の観測により、さらに多くの“高速電波バースト”が検出されるようになれば、“高速電波バースト”の起源である初期宇宙についても詳しく研究できるのでしょうね。


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記録更新は太陽への接近距離と太陽に対する速度! 太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”

2018年11月06日 | 太陽の観測
2018年8月12日に打ち上げらた、NASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”。

7年にも及ぶ探査ミッションは始まったばかりですが、10月末に太陽への接近距離と太陽に対する速度の2つで、人工物としての新記録を約40年ぶりに更新したそうですよ。


さらなる記録更新は2024年の最終接近

2018年8月12日に打ち上げられたNASAの太陽探査機“パーカー・ソーラー・プローブ”の運用チームでは、探査機の速度や位置を計測するために、NASAの深宇宙ネットワークから探査機に繰り返し信号を送っています。

その信号が戻ってくるタイミングや、信号の特徴などを元にした計算から、太陽の表面から約4273万キロ(太陽の半径の約60倍)の距離を通過したことが確認されたんですねー

これは、人工物の太陽への最接近記録(約4343万キロ)を約40年ぶりに更新する記録。
更新前の記録は、1976年4月に太陽へ接近したドイツ・アメリカの探査機“ヘリオス2”が持っていました。

他にも分かったことがあります。

それは、探査機の速度(太陽に対する相対速度)が時速約24.7万キロを超えていたこと。
こちらも“ヘリオス2”が達成していた記録(時速24.7万キロ)を塗り替えたことが明らかになります。
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太陽へ向かって飛行中の“パーカー・ソーラー・プローブ”(イメージ図)。
“パーカー・ソーラー・プローブ”は10月31日から太陽への接近飛行を開始していて、第1回目となる太陽への最接近を11月5日に向かえます。

2024年に計画されている最終接近では、太陽の表面から600万キロほどしか離れていない距離を飛行し、速度は時速69万キロに達する見込みです。

そう、今回更新した記録は、今後“パーカー・ソーラー・プローブ”自身が更新することになるんですねー


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17世紀のヨーロッパで観測された輝きの正体は、白色矮星と褐色矮星の衝突だった

2018年11月04日 | 宇宙 space
17世紀にヨーロッパ各地の空で観測された明るい輝き。
新星だと思われていたこの現象は、めったに見れない恒星同士の衝突だったことが分かってきました。

今回、アルマ望遠鏡を用いて、衝突した恒星の種類を調べてみて明らかになったことがあります。

それは、この現象では白色矮星と褐色矮星が衝突ししていたということでした。


砂時計のような形をした天体

1670年7月、はくちょう座の頭のあたりに、北斗七星の星々と同じくらい明るい新天体が、突然出現したんですねー

この天体は徐々に暗くなった後に再増光し、さらにその後は肉眼で見えないほど暗くなってしまいます。

現在、この位置にあるのはコンパクトな“こぎつね座CK星”という天体。
その左右にはチリとガスでできたリング状の構造が見られ、砂時計のような形をしています。


遠方の明るい電波源を利用して手前にある物質を調べる

“こぎつね座CK星”が明るくなったのは、普通の新星爆発でなく恒星同士の衝突によるものだと考えられています。

でも、どういった種類の星が衝突したのでしょうか?
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アルマ望遠鏡でとらえた“こぎつね座CK星”
今回、イギリス・サウスウェールズ大学の研究チームは、砂時計の形に広がったチリを通して届く背景の星からの電波を、アルマ望遠鏡を用いて観測。

遠方の電波源のスペクトルは平坦なんですが、手前に存在するチリ構造の分子で吸収されると、スペクトルの特定の周波数に吸収線が現れます。

吸収線がどの周波数に現れたかが分かれば、チリ構造にどんな物質が含まれているかを調べることができるんですねー

  電波の影絵から分かる希薄な星間分子ガスの組成
    


物質は爆発の残骸の中で形成されていた

観測で検出されたのはリチウムのほか、炭素、窒素、酸素の同位体の存在比も異常な値を示していました。

この結果から研究チームが結論付けたのは、“こぎつね座CK星”が明るくなった現象の正体は、白色矮星と褐色矮星の衝突らしいということ。

白色矮星とは、太陽のような比較的軽い恒星が一生を終える姿です。
一方の褐色矮星は、質量が軽すぎて核融合反応でエネルギーを生み出して恒星として輝くことができない天体。

今回の衝突で考えられているのは、白色矮星は褐色矮星の約10倍ほど質量が大きかったということ。
褐色矮星は白色矮星に向かって落ちていきながら、強い潮汐力で引き裂かれていったはずです。

そして、2つの星が衝突し爆発した際に、様々な分子や同位体元素が放出されることになります。

こうした分子が検出され、どのように周囲に広がっていくのかを観測することで、この現象の真の起源に関する証拠が得られるんですねー

このような現象が決定的に確認されたのは初めてのこと。

砂時計の部分にはホルムアルデヒド(H2CO)やメタノール(CH3OH)、ホルムアミド(NH2CHO)といった有機分子が豊富に含まれているようです。

こうした物質は爆発の残骸の中で形成されたはずです。
それは、こうした物質は核融合反応が進む環境で生き残ることはできないと考えられているからです。

なので、これらの物質の形成は、褐色矮星と白色矮星が衝突したということの証拠になりますね。


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