昨日午睡から眼を醒ましたときNHKの「暮らしの中のニュース解説」 で、「ビラ配りで刑事罰は妥当か」の解説をやっていた。
それを聞いて首を捻るところがあったので紹介する。(青字は解説、黒字は私の意見)
概要
・自衛隊員が住む官舎で、自衛隊のイラク派遣に反対するビラを配った市民グループのメンバー3人に、最高裁判所で有罪判決が出た。
・市民グループのメンバーが、ビラを配るために自衛隊の官舎に立ち入ったことが、住居侵入の罪に問われた。
・メンバー表現の自由を保障した憲法に違反すると訴えたが、最高裁は「刑罰を科しても、憲法には違反しない」とした。
報道の「表現の自由は無制限に保障されるものではなく、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない」と言う最高裁の判決の理由については解説では全く触れていない。
・国の政策に反対する立場の人たちが摘発されたケースが他にもあるので、自分の意見を言いづらい社会にならないか、ということも考えさせられる判決だった。
経過
ビラの内容には暴力行為をあおるものでは無かった。
このような当たり前のことが無罪の証拠になるのか。
フェンスで囲まれていたが、門や扉はなかった。
この人たちがビラを配り始めたので、禁止の表示が出た。
禁止の表示が出た後にビラを配った時は、住んでいる人が出てきて、ビラを入れないよう注意した。
ビラには、団体名や電話番号、メールアドレスが書いてあったので、メンバーたちは、ビラの配布を禁止するなら、個人的な注意ではなく、正式な抗議が来るはずだと考えたが、抗議がなかったので、1ヶ月後にもう一度ビラを入れたので逮捕された。
正式の抗議が無かったので、ビラを入れても良いと言うのは完全に被告側に立った弁護士が良く使う屁理屈だ。
一身判決では、 表現の自由はとても大切なもので、正式な抗議や警告もなくいきなり検挙することには疑問があり、刑罰を科すほど違法なことではないと判断した。
最高裁は、官舎を管理している人の意思に反して立ち入ったことは明らかで、被害届も出ていると指摘した。
[解説者の意見]
裁判で問われたのは、表現の内容を処罰すべきかどうかではなく、表現の手段が妥当かどうかだと言っています。
判決は、あくまで個別のケースに対する判断ではあるが、実際には、アパートやマンションへのビラ配りを広く尻込みさせないか心配される。
解説者の個別のケースの判断についての説明は全くなくて、その判決の結果を拡大解釈している。
後記のような判決の理由を詳しく説明もしくは批判すべきだった。
判決は、関係者以外立ち入り禁止の表示や、被害届が出ていたことを指摘しているが、立ち入り禁止の張り紙はどこにでもあるし、被害届が出ているかどうかは、配る側にはわからない。
立ち入り禁止が出た本当の理由は被告側は十分に承知している筈だし、被害届を出した事を禁止を無視した人に告げるなど常識では考えられない。
これも完全に被告側の立場に立った解説だ。
それに、立川のケース以降、政治的なビラ配りが摘発されるケースが続いている。
その一方は飲食店のチラシ、宗教の勧誘をするケース、自衛官募集のチラシが配られても逮捕されない。
ビラを入れられて迷惑だとか、知らない人がアパートなどの敷地に入ってきたら不安だ、と感じるのは自然だが、逮捕、刑事罰、というのとは、かなり開きがあるわけで、捜査は慎重であるべきだ。
どのような場合にビラ配りが認められ、どのような場合はやりすぎだとして摘発するべきか、警察の考え次第というのも困る。
警察は住人の告発で始めて動くので、ただでさえ忙しい警察が自身が自発的に動くなどは昔の特高警察時代の話だ。
国の政策は、放っておいても耳に入って来るので、表現の自由は、少数意見にこそ重要で、その意見に賛成か反対かとは別問題だ。
本来、認められるはずの表現方法まで萎縮しないように、色んな意見を自由に言えることは、暮らしやすい社会のために大事なことだ。
言論の自由は不特定多数の人達には良いとしても、少なくとも相手の個人に迷惑をかけないのが前提だ。
これに対する最高裁の判決は読売新聞の報道によると、
判決は、「承諾なく官舎に立ち入り、居住者の私生活の平穏を侵害した」、「表現の自由は無制限に保障されるものではなく、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない」と指摘。官舎側が立ち入り禁止の表示板を設置したり、ビラ配布の度に警察に被害届を出したりしていたことから、「立ち入りは管理者の意思に反していたのは明らか」とし、「表現の自由のためでも、管理者の意思に反し集合住宅に立ち入るのは私生活の平穏を侵害し、罪に問える」と述べた。
だそうで、NHKの解説者の説明と可なり相違があるようだ。
[私の意見]
私は法律は全くの素人で判らないが、今回の最高裁の判決が示した最大の問題点は、自衛隊派遣の反対者がそのビラを当事者とその家族が住むアパートに配ったことだと思う。
自衛隊員はその意志に関わらず、また一部勢力の反対の意見もある中で、国の命令で命の危険を承知で派遣された。
不幸な事だが、彼らは昔と違って全ての国民から万歳で送られることなく、ひっそりと派遣されるという、気の毒な立場だ。
反戦のビラを見たときの、命をかけて派遣される責任ある立場の自衛隊員やその人達を送り出す家族の心情を、ビラを配った無責任な人達や、命も地位も安全を保証されているNHKの解説者は理解しているのだろうか。
それかと言っていくらなんと言われても彼らやその家族はその立場上反論することは出来ない。
その人達が反戦ビラを見ても何も言えない苦痛は察するに余りある。
このような人に苦痛を与えてまで、言論の自由が許されるのだろうか。
そこを最高裁は考慮して今回の判決となったのだと思う。
それでは何故反戦グループは自衛隊のアパートにわざわざビラを配ったのだろうか。
自衛隊員やその家族に厭戦ムードを拡げるためか、ビラを見た住人から何らかの反応を見て、それをまた攻撃材料に使うためか、それとも単なる嫌がらせか。
そんなことで言論の自由を錦の御旗として何をしても良いのだろうか。
[NHKへ]
ネット上ではNHK攻撃の書き込みが目立つ。
中には反日とレッテルを貼る人もいる。
然しNHKが民放に比して、多くの有益な番組があることを知っている私はNHKの存在価値を認める立場だ。
然し、今回の解説者のように、政府などの権力を批判するのを進歩的と勘違いして、今回のように最高裁の判決を批判する姿勢を貫いて、国民に誤解を与えるのだけは、国民の受信料で成り立っているNHKとしては是非避けるべきだ。
そして、解説者はあくまでも中立的な立場で、公平な解説をして貰いたいものだ。
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私は今回の判決は常識で考えてあたりまえのことではないかと受け止めました。ただ、NHKの報道にはやはり疑問を感じました。
今回の判決で重視すべきは、自衛隊員とその家族だろうが、誰にだって、心穏やかに暮らす権利があるということを裁判所が認めたという点にあると思うのです。どうして、ごくごく常識的なことが小難しい論理にすり替えられてわかりにくくなるのか、それを信じる人たちがいるのかが理解できませんが、理解できないことが多く存在するのがこの世の中だと思うばかりです。
私の大学時代の友人もかの局におりますが、いろいろな番組を観ているとはっきりと価値観が二つに分かれているなと感じます。同じ局とは思えないような正反対の価値観をバックにして作られた番組がありますね。私の友人達もそろそろ番組制作の指揮を取るプロデューサーの立場になっています。どういう世代の者が番組制作の主導権を握っているのかによるのかなと想像しています。あくまでも想像に過ぎませんが。