戦前・戦中派の私から若い方達への申し送りです。どのような事でも世論に流されずに自分の頭で考えましょう。
大手出版社・宝島社が、11日の朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞の3紙に、政府の新型コロナウイルス対策への意見を込めた2ページ見開きの広告を掲載し、大きな話題となっています。
広告は、「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」と、激しい言葉を並べています。
それに対する現時点でも10近くの政府委員会で委員を務める人の意見です。
なお賛成の所は太字にしています。.
【良かったところ】
1.政府に対して堂々と自分の費用で批判したこと
2.ワクチンの失政を指摘したこと
我が国のCOVID-19ワクチン接種は、残念ながら今日時点で失敗しています。これは、政府自身が掲げたKPIが未達であることからも明らかです。また地方公共団体のワクチン接種予約システムに係る障害や課題も、とても21世紀の先進国とは思えない有り様です。
こうした問題を端的に批したことは、意見広告として正しいものだったと思います。実際、今回掲載された新聞をはじめとしたマスメディアの多くは、最近になってようやくこの問題を指摘しはじめています。しかし、瑕疵の深刻さと影響の大きさを考えれば、もっと早く、よりストレートに、問題が可視化されるべきであったと思います。
もう少し具体的な指摘があっても良かったのではないか、という考え方もあろうかと思います。ただ、まずは問題があることを可視化するということには一定の意味があり、それが現時点でも十分ではないとしたら、評価されてしかるべきでしょう。
【悪かったところ】
3.批判の対象がお門違い
この意見広告は「ワクチンもない。クスリもない。」と言っています。そしてそれを受けて「タケヤリで戦えというのか。」と続きます。確かにワクチンはありません。それは前項の通り。
しかし、クスリがないとは本当に言えるのか。もちろん特効薬はありません。しかしそれは世界中どこにもないのです。それを以て「政治に殺される。」というのは、お門違いもいいところでしょう。我が国の立法府や行政府はCOVID-19の特効薬を開発する具体的な能力を有しているとでも考えているのでしょうか。
4.医療従事者の努力を失礼なほどに無視している
「クスリもない。」の話を続けると、特効薬はありませんが、対処療法によって様々な取組が進められています。それこそCOVID-19が上陸してからの1年間、医師は苦しみながら様々な試行錯誤を繰り返してきました。
ある時は薬剤のカクテル療法を試し、ある時は血栓を対処するためのヘパリン投与を行った。今日だって、酸素吸入にどのような方法がいいのか、HFNC(高流量鼻カニュラ酸素療法)を使えばいいのかどうか、それぞれの患者さんにあった最善の策を臨床の最前線で模索しています。
その結果、たとえばBMI値の高低によるリスクのスクリーニングの仕方や、それに伴う経過観察の方法の使い分けが見えてきた。また、ECMOやRDT療法(レムデシビル+デキサメサゾン+トシリズマブ)導入のステップも見えてきた。そして、諸外国では死亡に至るような症状でも、生命を維持することができたということも、少なくありません。
この意見広告は、そうした「政府によらない現場の努力」を、ほとんど捨象しています。そして、すべての問題は政府が悪いと言わんばかりに「政治に殺される。」と結んでいます。この意見広告のタグラインを作った人は、果たして本当にこうした現実を直視しているのでしょうか。
5.政府への依存心が強すぎる
前項の3.と4.は、政府への依存心が強すぎる、ということの裏返しのようにも読めます。前述の通り、COVID-19に感染した人を救おうとしているのは、政府ではなく現場の医療従事者です。そして特効薬が見つからない以上、この現実は当面変えられません。
これはワクチン接種が進んだとしても同じです。どうもワクチンを万能薬と思っているフシが見受けられますが、そもそもそれが現実の感染対策にどの程度有効なのかもまだ分かりませんし、ワクチン接種後も当面は警戒を緩めることはできません。
にもかかわらずこの意見広告は、「政府が、政治が」ということばかりを言っている。前述と同様、政治家として当選すれば、あるいは国家公務員Ⅰ種試験に合格すれば、ワクチンや特効薬を開発できるとでも言うのでしょうか。なぜそこまで政府を信じ、政治に頼りきれるのか、私には分かりません。
ご存知の方も多いかと思いますが、私は政府と距離がとても近い人間です。普段の生業であるコンサルティング業の傍ら、現時点でも10近くの政府委員会で委員を務めており、情報通信分野やデータプライバシー分野の制度設計に深く関わっている人間です。はっきり言って、行政に対するシンパシーは、一定以上持っています。
しかし、または、だから、かもしれませんが、私は政府が万能だとはまったく思っていない。それどころか、政府の執行能力の不足に頭を悩ませることも少なくない。それでもなおできること(あるいはすべきではないこと)は何かと考え、議論しています。
しかも問題の本質は、私達の生命そのものです。それは最終的には、私達自身で何とかするしかない。もちろん国民の生命と財産を守るのは政府の義務です。しかし政府が万能でないとしたら、自らの生命と財産は自らで守るという覚悟が必要です。
そうしたステージにすでに進んでいることは、大阪のCOVID-19による死亡率がインドと近しい水準にあることからも明らかでしょう。
6.カタルシスでしかない
百歩譲って、それでも政府はもっと国民の生命と財産を守る義務を果たすべきだ、という主張もあるでしょう。私も自らの生活が制限されている国民の一人として、その気分はとても良く分かります。
だとしたら、政府の何が問題で、どのように対処すべきなのかを、明確にしなければならない。仮に現実的な対処方針を示すのが難しくても、少なくとも課題の特定くらいはできるだろうし、それができないのであれば、ただの言いっ放しに過ぎない。
しかもこれは、市井の人間による与太ツイートではありません。予め耳目を集め、社会に対する影響力を行使することを狙った、意見広告です。従ってその言論には、与太ツイートよりも遙かに巨大な責務が生じます。しかし実際には、課題も特定せず、対処方針も示していない。つまり「気分の表明」でしかない。これでは単なるカタルシスです。
いやいや、市民の気分を代弁してくれているのだから…という声があるのは承知しています。しかし、この程度の代弁だったら、市民は自分でSNS上で表明すればいい。冒頭の通り、我が国には言論の自由があるのだから、私達は自由に意見表明できますし、実際そうした投稿を毎日あちこちで見かけます。
7.クリエイティブがミスリード、かつビジョンがない
この意見広告は、第二次大戦時に空襲と竹槍らしきもの(たぶん実際はなぎなた)で対峙する画像を用いています。そしてタグラインにも「タケヤリ」という言葉が使われています。かつて戦争で負けたことをアナロジーとして用いている、と解釈するのが自然でしょう。
しかし、COVID-19との戦いは、これからが正念場です。いくら我々が「コロナ疲れ」を感じたからといって、COVID-19は手加減してくれない。これが現実です。まだまだ、もっともっと、戦わなければならない。そんな時に、私達の戦意を喪失させるようなクリエイティブは、社会を誤った方向に導いてしまう危険性を有しています。そうではなくて「こういう社会を作るべき」というビジョンを示すことこそが、いまこうした意見広告に最も期待されているはずだし、ポジティブなビジョンを示せれば、それこそが最大の政治批判・政府批判なのではないでしょうか。
それも含めて「政治が、政府が」と言いたいのかもしれません。しかしそれがそもそも間違った認識なのではないか、というのはここまですべて前述の通りです。
なおこの主張を以て、私が「国威掲揚すべきだ」と言っているのではない、ということにはぜひご留意ください。言いたいことはそうではなく、自分の生命のことなのに、なんでもかんでも政府に頼ろうとするな、そんなことしてたら死にかねないぞ、そして生きていくためにはポジティブなビジョンが必要だ、ということです。
以上、ひとまず感じたことを、ざっと書き殴ってみました。とはいえ、こうした物言いの契機を与えてくれたことには、この意見広告に感謝したいと思います。
「私の意見」
宝島の言う薬がないと言いますが日本にもアビガンと言う薬がありましたがWHOの指定薬でなかったのが、後になって指定を取り消されのでまたアビガンに戻ったこと。ワクチンは宝島の言うように他国からの獲得競争に後れたのと、go to travel、go to eat にPCR検査の導入をなかったことのは政府の責任です。
それからもつと大きな責任のあるのは政府の要求に従わず、夜遅くまで遊んだり、悪いとは知りつつもつい政府のほう指針に背いた一部の店です。
宝島はそのような人たちに「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」と、言えば心ない一部の人たちは政府の言うことを聞くでしょうか。宝島は恰好は悪くてももう一度何らかの形で国民向けの広告を出すべきと思うのですが。
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