辞書に、左義長(さぎちょう、三毬杖)は小正月に行われる火祭りの行事とある。
1月14日の夜または1月15日の朝に、刈り取り跡の残る田などに長い竹を3、4本組んで立て、そこにその年飾った門松や注連飾り、書き初めで書いた物を持ち寄って焼く。その火で焼いた餅を食べたり、注連飾りなどの灰を持ち帰り自宅の周囲にまくとその年の病を除くと言われている。当地熊本では”どんどや”と呼び、県内各地でその行事が行われている。
私の住む熊本市北区の高平台校区では、成人の日に〝どんどや”が盛大に行われる。長い間続く地域の大切な行事だ。その規模の大きなことから、毎年、新聞やテレビを賑わせている。
「成人の日」の今日は〝どんどや”。〝うちの奥さま”と一緒に、玄関に懸けていたしめ縄を持って見物に出かけた。
大勢地域の人たちや消防団の方々が一体となって会場となる小学校の近くの竹林から大きな孟宗竹を切り出し、広い校庭に20メートル近くの高さのやぐらを組み立てている。大変な作業だ。ご苦労様。
正午をまわったころ、数人の小学生が火を付けた。灰色の煙がやぐらを包み込み空高く舞いあがった。
やがて、蛇の舌を思わせる真っ赤な火柱があがった。やぐらが倒れるのは早かった。ぱんぱんと竹のはじける音が周囲に広がる。そのすさまじさはたとえようがない。最高のショウだ。
大人も子どもも大喜び。そばには消防車が待機していた。
やぐらが燃え尽きるころ、父兄に連れられた子どもたちが、青竹の先の網につけたお餅を火にかざしていた。おいしいお餅がいただけることだろう。素晴らしい思い出ができただろう。
「あと何回〝どんどや”を迎えることができるだろうか」と。年寄りのさびしいたわごと。