また、芥川龍之介の作品を読んだ「戯作三昧・一塊の土」(新潮文庫版)です。これは十三篇の短編小説集です。
或日の大石内蔵之助:忠臣蔵の大石内蔵之助とその仲間の赤穂浪士の討ち入り後の心情を書いたもの
戯作三昧:八犬伝の作者の滝沢馬琴の日常を書いたもの
開化の殺人:明治時代初期のある人の殺人と自殺の遺書
枯野抄:松尾芭蕉の臨終での様子を書いたもの
開化の良人:明治時代初期のある子爵の友人の結婚生活の失敗した話
舞踏会:明治時代の舞踏会でのある女性とフランスの海軍将校の花
秋:ある姉妹と従兄の恋愛の三角関係の物語
庭:ある旧家の一族の生き死にの邸宅の庭を被せた物語
お富の貞操:明治元年に乞食に貞操を奪われかけた女性が後日、出世した乞食に再会する話
雛:ある老女の告白話で子供の頃に執着していた雛人形を売るのに駄々をこねた話
あばばばば:海軍学校の若い教員が行きつけの雑貨店の女店員に恋したが、彼女はある日赤子を抱いた母になっていた話
一塊の土:嫁と姑の話で息子は病死して姑の勧める再婚話を聞かずに農仕事に励む嫁を疎む物語
年末の一日:作者と友人の年末の一日で夏目漱石の墓参りに行った話
あらすじは以上ですが時代は江戸時代から大正時代にかけたもので、「或日の大石内蔵之助」、「戯作三昧」、「枯野抄」などは虚構とは思えない詳細内容です。それ以外は龍之介のリアルな時代の物語で、当時のありそうな話を見聞きして物語にしたものだと思えてくる。まさに龍之介の短編小説家の本領発揮と言った短編小説集です。