今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

子ニャンを救え ~たそがれオジンの救出作戦~(前編)

2017年11月24日 | リン(旧イエミケ),クウ,キー
ノラたちに余生を捧げようなんて思うと、何となくご近所に気を遣ってしまうものです。
ご近所に何か迷惑をかけてないか、トイレや掃除は用意しても、鳴き声が迷惑になってないか。わが家の回りにはニャンコ苦手の人もいます。普段はいろいろお話しても、陰で頭に来ちゃってるんじゃないか・・等々、気になることはたくさんある。

一方わが家のニャンコたちは町内でもよく知られています。かつては3匹、今はニャーが、往来の人たちにご挨拶するからです。名前の知れ渡ったご近所の外飼いニャンコもいるし、わが家の裏で生活していたみうもご近所によく知られていました。そうは言っても、保護者不明のノラはまだまだ、"招かれざる者"の扱いが一般的なんです。

イエミケは、2匹の子供たちとわが家の裏で暮らすようになりました。
自分は寝床と食事とトイレを提供しつつ、保護したときの身の振り先を探しています。急がなければ子ニャンたちが巣立ってしまう。妻は、テツがわが家に来たときと似ていると言う。妻の知り合いの家裏で育ったチビニャン2匹。テツはわが家に選ばれたが、もう1匹は知らぬ間に消えてしまったそうだ。何という数奇な運命。「自分が審判を下したのか、」妻は今でも嘆いています。

先日の深夜、その日はイエミケ一家が向こう側の、ソトチビが手前の寝床で休んでいました。夜中の1時頃にイエミケが子供を呼ぶ声が聞こえた。家裏を見ると、一家もソトチビもいなかった。イエミケの声は何処か遠くの方から聞こえてくる。公園にでも行ってはぐれたのかな、そう思いながら寝ました。

翌朝、まだ夜明け前にイエミケの声で目が覚めた。声も大きくかなり逼迫した感じで、どうやら夜通し鳴いていたようだった。それはもう、子供を呼ぶというよりは必死に叫んでいる様子。ただ事ではないことが感じられた。そう、前夜も朝も、子供の姿が見えないのです。

朝ご飯を出しても誰も食べに来ない。イエミケは何度か勝手口に来たけど口もつけない。それどころじゃない様子でドアにすりすり壁にすりすり落ち着きがなく、こっちの顔を見上げては何か懇願するように鳴き続けます。日も高くなってきて、再びやって来ては鳴き続けるイエミケに引かれるように外に出ました。玄関から裏に回ろうとすると、イエミケと白黒チビが見えた。白黒チビはとっても臆病なので、脅してはいけないと近づくのを止めました。そてにしても、あのおしゃまな黄チビの姿が見えない。

その日の昼前、イエミケと白黒チビの姿を確認

積極的な黄チビ、以前に撮った朝のひとコマ

家に入って再び勝手口を開けると、遠くの方からイエミケの鳴き声がした。いや、それに合わせて、かすかだがチビニャンの声が聞こえる。しかもそのチビニャンの声が2匹であることが、しっかりと確認できたのです。

何かトラブったんだろうか・・。 自分はそのときまだパジャマだったので急いで着替えて家を飛び出し、公園の方に向かいました。そして、公園の手前の貯水池まで来て、ようやく事態を理解したのです。そう、あのニャーの大脱走の記事で紹介した貯水池。そのときは水が減って沼地のようになった底が露出していた。その底に生えた草むらに埋もれて、あの黄チビが必死の声を張り上げていました。貯水池の深さは2m以上。その向こう側の端で、イエミケと白黒チビが鳴いていた。

舞台となった貯水池と公園(再掲)、手前が当家の裏のお宅

影で見難いが底の草むらで鳴き続ける黄チビ
(向こう側の壁の段差の部分がポイントです)

黄チビが落ちた。さて、どうする。
貯水池の周囲は2mを超える金網フェンスと、その上に有刺鉄線が3段に張られてとても乗り越えられない。わが家は代々町会の役員をやっているので、この貯水池の鍵が町会ではなく市が委託した管理会社にあることを知っている。以前に相当対応の悪かった会社で期待もできない。困ったぞ、どうするどうする。

妻にも店にも電話したけどなす術なし。ワンちゃん散歩の奥さんがやって来た。その大型犬に吠えられてイエミケたちは姿を消した。その奥さんによると、子猫の声は昨夜からで、助けたい親猫の声もすごかったらしい。何とかしたいがなす術がないのだと。

と、その奥さんと話しているうちにあることに気づいた。貯水池の向こう側は土地が低くなっていてフェンス(と有刺鉄線)にも段差がある。その継ぎ目にすこしの隙間があるのです。そこから入れるのではないか。公園を回って裏の隙間に出ると、大きな立木が邪魔をしているが行けないことはなさそうだ。急いで家に戻り、運動靴に履き替えて脚立を持って、再び公園に向かいました。ああ、ひっそりとノラのお世話をするはずだった黄昏オジンが、こんなに目立つはめになるなんて。

この隙間の奥から貯水池に入れそう(公園側から)

進入口(フェンスの継ぎ目)から沼地のような底を見る

とにかく必死でした。
脚立を持ったまま胸まである公園の格子フェンスを乗り越え、外側からは1.5mくらいの高さがある擁壁の上に。そこを伝って貯水池の金網フェンスに移動。継ぎ目から貯水池に入ろうとすると、立木の太枝がかなり硬くて邪魔になる。そこに死ぬ思いで無理やり割り込んで、何とか金網の内側に入りました。

そして脚立を伸ばして底から立てると、3mになるはずの脚立梯子がぎりぎり。底に下りてみると、何とそこは"ひっつき虫"の中でも一番やっかいなアメリカセンダングサの群落でした。しかも草むらが意外と深く、黄チビの姿が見えない。水を避けながらぬかるみを歩くうちに、先の方を黄チビの逃げていく姿が見えた。そうなんです、黄チビはまだ人に馴れてないのでした。見つけても逃げる黄チビ。探すうちに靴はずぶずぶ、"ひっつき虫"で胸から下が真っ黒に。

貯水池の底を逃げ回る黄チビ

途方にくれて再び妻や店に電話。店にある寒冷紗を投げ網のように使うとか、大きな網を買ってくるとか、どうにも現実的に思えず気乗りがしない。えーい、こうなったらやけくその体力勝負だと再び黄チビを探し始めたとき、ふと上を見上げて愕然としました。ご近所の2階の窓から、奥様方が揃って顔を出していた。

深いコンクリートの壁と高い鉄条網付きの檻に囲まれた中に自分がいて、奥様方が檻の外から見下ろしていたのです。檻に入れられてプライドをずたずたにされた動物園のライオンの気持ちがわかるようだった。予測した中でも最悪の事態が現実になって、「あーあ、自分の人生なんてこんなもんだ。」

周囲は第一期入居の家々。一言も二言もあるご重鎮の奥様方です。先ほどのワンちゃん散歩の奥さん(やはりご重鎮)も、帰路の途中か金網にしがみついて見ている。と、貯水池の向かいの家(わが家の裏)の奥さんが血相変えて出てきた。その奥様はニャンコ嫌いを標榜している顔の広~い奥様。とてもじゃないがたそがれオジンが敵う相手じゃない。いやいやいや、いよいよ雲行きがおかしくなってきた。

案の定、その奥様は出て来るなり開口一番、「このネコ〇〇さん(当家)ちの? もう昨日からとってもうるさくて眠れなかったの。」 聞けば市役所にも電話したが取り合ってくれなかったそうだ。そう、この事件は周囲ではもう知れ渡っていて、何人かの人が朝から役所や警察に連絡したがダメだったらしい。

ノラだけど最近そっちの方からわが家にやって来たので最低限の世話をしている、とそのままを説明。何もしなければ子猫は死ぬ。その辺で死んでもいいのかと。すると、「そんな可愛そうな。」 ニャンコ嫌いとはいえ、不幸になるのを目の当たりにするのは本意じゃない。そうなんだ、そうなんですよ、自分は小さな命を助けたいだけなんですよ、と心の中で叫びました。

すると、その気持ちが伝わったのか奥様たちが口を揃えて、「○○さんが来てくれて本当に助かったわ。」「何とか助けてあげて。」 何と、予期しなかった感謝と期待の言葉を頂いたのでした。 そして、黄昏オジンは元気100倍になったのです。同時に失敗も諦めもできないプレッシャーも。

いや、そんなことはもうどうでもいいと、貯水池の底にできた湿原を当てもなく見渡しながら、たそがれオジンは決意したのでした。

「よっしゃあ、何が何でも助けるぞ」


(後編に続きます)

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