この記事は長文です。猫の輸液に関心のない方はパスして頂けましたら幸いです。
テンちゃんの腎臓がここまで悪くなる前に、保護者は気付く術がなかったのか。
2年半前に「生きているのが不思議」な状態のテンちゃんを保護したときは、血液検査でCREとBUNは正常値だった。しかし、その2か月後にはテンちゃんのオシッコの量が異常に多いことを記事にしている。そのときに腎臓の異変を疑うべきだったのだ。実はテンちゃんのオシッコは最初から回数も量も多かった。しかし何も気にせず、そんな猫だと思っていた。昨年11月頃から食欲が落ちて動きも少なくなり、師走になると見る見る痩せて意識朦朧状態が多くなった。療養でわが家に迎えた新年早々に病院へ行く予定が、ニャーの結石騒動で半月遅れた。そして、CKD(慢性腎不全)と診断されたのでした。
なぜかチビニャンに慕われるテンちゃんです
ショックを受けても後の祭り。とにかく輸液をするしかない。当初は病院に通って150~200ccを目処に輸液してもらった。先生に1日1回と言われたけど夫婦は仕事を持っているので通院は1日か2日おき、3日空くこともままあった。テンちゃんはキャリーケースでの移動(通院と待ち時間)を嫌がり、あやす保護者も大変だけどテンちゃんのストレスも相当なものだと思われた。そのうち、病院の先生に在宅輸液を勧められたのです。
2月の初めに先生からいろいろ教わりトレーニングも行って、いよいよ在宅輸液をスタートさせた。このときは急性ではあったがやはり腎炎だったニャーにも輸液を行った。何しろ生き物に針を刺すなんて初めてのこと。朝出かける前に行うのだが初めはためらってばかり。2日できなければ病院に駆け込む。3日後になるときもあった。ためらいが状況をますます悪くし、一気にできないので猫も痛がる。そのうち猫も保護者のためらいを感じるのか緊張が移って身を固くし、結果としてますます刺しにくくなる。刺す自分も抑える妻も刺されるテンちゃんも、みな必要以上にナーバスになっていた。
「テンちゃんは内弁慶。」 妻はことあるごとにそう言ったが、別にテンちゃんが病院にいい顔しているわけではなく、こっちの緊張が乗り移っているだけなんだ。とにかくその時間になるともう緊張し始め、針を刺すどころか輸液の部屋に連れて行くだけで吠えまくり、ちょっと刺激すれば本気モードで攻撃してくる。保護者の手は日に日に無残な姿に。かくして2週間もするとテンちゃんは在宅輸液を完全に拒否するようになり、ついにはニャーにもできなくなって保護者夫婦は完全に自信喪失。結局、通院輸液に戻らざるを得なかった。
輸液がうまくいかないときの状態(技術的な考察その1)。
針を刺す場所のせいか角度のせいか、自分は長い針は怖いので短い針で行っているが、その針がスーッと入るときもあればやけに皮膚が硬くて強く入れると「プチッ」という感触のあるときがあり、その時は必ず猫が痛がる。その違いの原因がどうにもわからない。そのうち、自分のやり方だけではなくて猫の状態も関係しているように思えたり。緊張で身体を硬くすると皮膚も硬くなるとか。さらに、何とか針を挿入しても輸液を始めると液が皮膚から漏れてくるトラブルも続いた。また針の先が詰まったように、液が入らないこともあった。
動きも少なくなって死んだように寝るテンちゃん
2月~4月の間は当初に戻って、できる限り通院するという日々が続きました。おかげで病院の人たちとはすっかりお友達に。病院が店のすぐ近くなので通院の日は店にも立ち寄ったが、店ではテンちゃんも落ち着くようだった。テンちゃんはわが家にあったキャリーケース(前から入るタイプ)を断固拒否したので、いろいろ試した結果スポーツバッグで移動することにした。それで当初は静かだったがやはり何も見えない不安なのだろう、やがてバッグも嫌うようになり、ついには輸液の終わった病院でバッグを拒否して大暴れするという騒動が2回続いた。この頃はテンちゃんの精神状態も最悪の頃で、病院の若い先生の輸液を拒否して暴れたりもした。しかしこの最悪の問題は、新調したキャリーケースで難なく解決したのです。
新しいケースは前のより安価なもので、前と左右に網のついた布製。ただ、入口は前と上にもある。この上から入る方法をテンちゃんがお気に召したのです。そう言えばスポーツバッグも上から入る点では同じだった。テンちゃんはこのケースを見ると自分からさっさと入っていく。移動と関係ないときも中に入ってくつろいだり。おかげで保護者の苦労は半減したけど、それでもやはり通院は大変だし何より、10連休という大きな試練が近づいていた。
今日のテンちゃん①;今日はお店で1日過ごしました
連休中病院は2度ほど営業するが猛烈な混雑が予想されるし、当方も忙しい時期、うまく行けるかどうかわからない。それで連休前から再び在宅輸液にチャレンジしたのです。はじめはやはりテンちゃんが暴れてダメだったけど、試行錯誤でいろいろ工夫してみた。まず緊張した声での保護者間の会話やテンちゃんをあやすのを止めた。次にテンちゃんの抑え方。これは病院でもいろいろ聞いて、後ろから両腕を回して両手で首周りをそっと保持する。すると親指が頭に当たってテンちゃんが急に起き上がるのを防ぐことができる。
でも最終的に決め手となったのは、テンちゃんの寝床の活用だったと思います。テンちゃんは一時冷蔵庫の上を居場所にしていた時があって、そのときはダンボール箱の寝床を愛用していた。今は冷蔵庫に登れなくなって寝床も使ってないが、その寝床を輸液のときに使ってみたのです。それでテンちゃんがかなり落ち着いた。そして10連休の少し前に、夫婦の輸液を甘受するようになった。
輸液が終わればおやつのチュールをあげて、テンちゃんのやる気を引き出した。連休が終わると何故か再び暴れるようになって数回病院に駆け込んだが、在宅輸液に戻れたのはチュールの効果もあったと思う。今は毎朝夫婦で輸液を行うのが日課です。
今日のテンちゃん②;わき腹がくっつきそうな激ヤセぶりにスタッフもびっくり
輸液に関しての所見(私見・技術的な考察その2)
病院では1度の輸液量は150~200ccで、多いときは250ccくらい入れた。いろいろ調べてもそんなもんだ。病院は圧入なのでそんな量でもほぼ3~4分で完了する。しかしこの量を在宅の手押しでやると、10分以上はかかる。テンちゃんはそんなに我慢できないので、家では100~120ccがせいぜい。しかしその量で通してみると、テンちゃんがむしろ調子よさそうなことに気付いたのです。
これは猫の体調や状況(体重、年齢)にもよるのだろうが、4Kg足らずの激ヤセ老齢テンちゃんを考えれば120ccくらいが限界なのではないか。輸液を行うと液がお腹や足に回る。テンちゃんの場合は前足に溜まってたっぷんたっぷんとなる。それでも本人(猫)は気にしないで歩いているけど、問題はその液が残るようになったこと。輸液を始めた当初はそんなことなかったが次第に吸収が悪くなって、そのうち1日半経ってもまだ残るようになった。輸液は普通は半日、長くても1日以内には全て吸収しないと重篤な病気を併発しかねないとあるのです。
おそらくテンちゃんの衰弱が進んで、身体のいろいろな機能が落ちてきているのだろう。激ヤセで輸液はますます難しくなったけど、最近は保護者の上達も著しく、ある程度なら技術でカバーできる。液が漏れたり詰まったように入らないときは、針を抜かずに位置を調整するだけで続けられるようになった。楽に液が入る位置も探れるようになりました。今は120~130ccを4日続けて1日休む。こんなサイクルで行っています。今にして言えることはやはり慣れと自信、これに尽きると思います。
今日のテンちゃん③;体重はついに3.1Kgまで落ちました
しかし輸液はそれ自体が目的じゃない。尿毒をはじめとする老廃物をオシッコと一緒に出す。それを促して脱水症を緩和するために給液するのだ。でないと気持ち悪くて食べるどころじゃなくなる。つまり、生きるために食べるよう促すことがが輸液の最終的な目的なのです。病院で輸液を始めた頃は、輸液とテンちゃんの食欲が連動していた。でも今はそれがなく、テンちゃんの食欲は確実にかつ継続的に低下している。この3日ほどは水以外殆ど何も口に入れてないのです。
輸液量が足りなくて毒素の排出が十分でないことが考えられる。それで気持ち悪くて食べないのか。一方、テンちゃんの身体が吸収できないほどの液を注入して効果があるのか。逆に体調不全に繋がらないか。先生に訊くと、様子を見ながら判断するしかないと言う。衰弱が進めば輸液の仕方も刻々と変わる。それは本人(猫)の状態を注意深く観察しながら対処するしかない。今は試行錯誤で、輸液量を徐々に増やしているところです。
でも、やがていつか、どんなに注意深く対応してもテンちゃんの衰弱を防げない日が来るのだという、覚悟もしておかなければならないのです。
少しでも余生を楽しく、それが夫婦の合言葉です