原尞さんのハードボイルド小説「私が殺した少女」を読了。
もっとゆっくり読むつもりでしたが、面白くて一気に読んでしまった。
この小説は、1989年10月に早川書房で刊行されました。
1989年というと、その年の12月の日経平均は38915円の最高値だった。
まさしくバブルの絶頂期。
そして、第102回直木賞受賞作品でもある。
それにしても、バブルから30年以上経つのが信じられない。
バブルにちょっとだけかすっています。そんなにいい思いはしませんでしたが。
小説は80年代の東京が舞台で、もちろん携帯電話は出てこない。
主人公の沢崎は、公衆電話に10円をジャラジャラ用意していて、
テレホンカードすら新しいシステムだと言っている。
時代背景としては、もう古くなったのかもしれない。
しかし、最近書かれた小説よりも面白く感じるのはなぜだろうか?
最近の小説には、沢崎のような人物があまりいないからかもしれない。
沢崎は、お金よりも、自分自身の内面にある規律のようなものを大切にしている。
儲け話があってもそれに興味を示さず、不利益が被ろうとも自分の規律に従った行動する。
その姿勢に共感を覚えるかどうかが、
この作品を好きかどうかを分けるポイントだと思う。
沢崎にはそういう矜持のようなものがある。
彼の信念は、誘惑や困難に常に試されてる。
もちろん、プロットもうまく練られていて、
最後にあっと驚くような結末が待っている。
沢崎は、誘拐事件に巻き込まれるのだが、
普通、誘拐事件の解決は警察の仕事で、私立探偵の出る幕はない。
そこに、私立探偵が絡んでくるというひねり技が使われている。
最後は決してハッピーエンドではありませんが、
読み終わるのが惜しくなるようないい作品でした。