[1948年郷里を追われるパレスチナ人、難民キャンプの模様]
板垣雄三の記事「ナクバの奈落の底」(「世界」2018年7月号)を読んで、改めて現在中東で進行している不条理を直視することになった。ナクバ النكبة とは70万人におよぶパレスチナ人がイスラエル建国を境に住んでいた土地を追われ難民となった、その大惨事のことである。
何度かの戦争や戦後の調停をへて、90年代のオスロ合意以来、イスラエル国家内にパレスチナ自治区とその他のユダヤ人が住む地域ができて棲み分けるようになった。
しかし、イスラエルは境界線を暫定的、可塑的なものと見て、ユダヤ人の自治区への移住を容認・推進し続けた。同時に2002年には堅固な壁で自治区を囲い、僅かな通用口も人の往来・物の交易とも大幅に制限し封鎖した。水源もイスラエルの管理下に置き、パレスチナ人を窮乏・半致死状態に閉じ込めている。パレスチナ人はありとあらゆる人間的屈辱と生命の危険に晒されているのだ。
[パレスチナ人の居住地(緑の部分)が著しく縮小している]
それで板垣は、イスラエルをポストコロニアル時代の植民戦争国家と呼ぶ。今の世界秩序、あるいはその仮想を支える欧米中心主義の偽善を透視し感知しなければならない、と指摘する。またごく最近の今年5月、70年前にイスラエル国家成立が宣言されたことに抗議してパレスチナ人が「帰還大行進」をした時、イスラエル軍が銃撃し60人が殺されたことに言及している。また、記事の中でイスラエル/パレスチナ問題の歴史を俯瞰し概説してくれている。中東における支配の主役が英仏から米ソに移ったこと、皮肉なことにナチズムがユダヤ人のイスラエル移民を促進したこと、など。そして「今日まで続くナクバの現実を徹底的に批判すること」がなければ片手落ちであると指摘する。
私たちは、特殊な終末論に立つ福音派と並んで、イスラエルを支持してはならない。板垣は「現在のガザ・西岸の状況を見て、私たちはどうすべきであるか、歴史の審問の前に立たされている(現実に、差別され排除され殺される人がいることに対して私たちがどういう態度を取るのかが問われている)」と結んでいる。87歳の彼はいわば懸命に読者に訴えているように見える。
[日本の一末日聖徒は嘆く]
イスラエルよ
如何にも遺憾
おまえがナクバを齎すとは。
そは歴史の大皮肉、
クリスチャンの信仰の期待を
打ち砕くのか。
当ブログの関連記事:
・2008.05.14 イスラエルの建国 今は忌むべきことの如く
・2008.12.30 国際シンポジウム「ナクバとヒロシマ」に出席して
・2011.12.08 イスラエルの入植地拡大が状況悪化の原因
* その他、このブログの検索に「ナクバ」、「パレスチナ人」を記入すると関連記事が出てきます。
みこころにかなうというより、そうしなくてはならないという使命感があるのでしょう。
それは神が約束を守るということを証明することに繋がりますし、所有できたのはイスラエルが神の選民であるということをも証明することになります。
厄介なのはバックにアメリカがおり、この地にも神の加護があると信じている人がいることです。
神の旗を持っている国は、ちょっと危険な方向性があると感じています。
私たちはそのことを「透視し感知しなければならない」と思います。
アメリカのあるLDS関連の研究会で、確か中東の専門家(教会員)に「イスラエルはやりすぎだと思う」と話しましたら、頷いていたのを思い出します。良識ある教会員がアメリカにもいると感じたことでした。
「ユダヤ人の最大の敵はユダヤ人であると言われる。ユダヤ人がアラブ人などを騙すのは簡単だが、ユダヤ人どうしの戦いは秘密戦争であり、外部の人間には、誰と誰の戦いなのかも判別しがたい。しかし、アメリカと世界の将来がどうなるかは、この秘密戦争の行方がどうなるかにかかっている。この問題はタブー視されたり「陰謀論」として退けられることが多いが、この問題を考えずに、国際政治を語ることはできない。その意味で私は、今後もこの問題について分析していく必要を感じている。 」
http://tanakanews.com/f0622israel.htm
この作品はもろに、パレスチナ問題や、開拓時代にアメリカ人たち(キリスト教文化)がアメリカ先住民たち(ベイガニズム文化)に対して行った仕打ちに対するわかりやすい批判作品であって、たしかいくつかの国はこれを上映禁止にした経緯がある。
キャメロン監督は主人公に「我々が欲しい資源の上に住人がいればそれが敵なのか?」と言わせている。
ここ10年で数少ない見る価値のある映画だと思った。
アメリカで顕著な差別主義と多様性の難しさをコミカルに批判的に描いたズートピアもここ10年で数少ない見る価値のある映画だと思った。
中東和平に日本は協力できる
とはいえ、アラブ諸国からの反発が強いアメリカだけで和平を仲介するのは、何かと困難が伴う。
実は、元駐日イスラエル大使のエリ=エリヤフ・コーヘン氏が仲介役として期待を寄せるのは、日本だ。コーヘン氏は大の日本好きで、空手の名人でもある。コーヘン氏は、日本が中東和平に貢献できる理由として、3つを挙げている。
1つ目は、イスラエルもパレスチナも日本に敬意を示していること。日本は、イスラエルとアラブ諸国に対して、中立の立場を取っているためだ。
2つ目は、日本は中東から遠い位置にあるため、政治的な利害関係がないこと。
3つ目は、日本は中東に対して、宗教的な対立関係にないことだ。
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個人的には宗教問題を抜きにしてもイスラエルにやや同情的ですが。。
様々な捉え方があるんですね。
かつてのアジアの盟主日本としては中国のチベット人虐殺をはじめとする新植民地主義への抗議が優先されるべきかと思います。
>皮肉なことにナチズムがユダヤ人のイスラエル移民を促進したこと
この時国連は流浪の民への差別(キリストを磔にした民への罰?)への悔恨からユダヤ人に国をもたせようとイスラエル建国を容認し、同時にパレスティナ人にも今まで通り住める的な約束をしてしまったんですよね。
もめるよね、それは。
ただまぁ。停戦協定を破るのは常にパレスティナの方のように見えます。
https://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%83%91%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%8A%20%20%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B0
不毛の地であった荒野を開墾して農業を営むことができるようになったり、小国ながら経済的に自立できていたり(外国のユダヤ人脈の支援もありますが)信教の自由や言論の自由をある程度まで保証できることができたのかと問われると無理だったでしょうと即答できます。
シオニストの行動は目に余ることがありますが、アラブ諸国のダブルスタンダードも非難の矛先を向けた方がいいのかなと思ったりもします。
ただどういう風に関与していけばいいのか?っていうのがジレンマであり世界中の人々を悩ましている問題なのですが。