【丈部 (はせべ・はせつかべ)】
杖部とも書く。古代の職掌名からくる。
その名の由来は、使者の標識として「杖」を帯していたため、
「杖」が「丈」と略され丈部と称するようになった。
丈部は「馳使部」の意で、令制の駈使丁に類し、
貴人に仕えて、その身を守ったり、その命によって用をたしたりする。
「走り使い」すなわち馳使丁(はせつかひ)のことが語源。
「丈部。天足彦国押人命(あまたらしくにおしひとのみこと)の孫、
比古意祁豆命(ひこおげつのみこと)之後也。」とある。
諸国に丈部が存在していたことから、これらの豪族は
大きな勢力を持っていたらしく、軍事的な部民(べのたみ)で
あったことが推測される。
①移住説:「北武蔵に早くから移住し、土着した在地土豪に成長」
②編成説:「阿倍氏の東国進出後まもなく同氏の部民として
編成された東国土着の部族」
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≪豆知識≫
現代の杖術(じょうじゅつ)は4尺(120cm)だそうだが、江戸以前は
7.5尺~10尺。古代、杖といえば拷問などにも使われていたものも
あるという。技術としては棒術の一種で、犯罪者を捕縛する者の捕手
術としてまた、農民や商人等の護身術として、そして今では、日本の
警察で警杖術として採用され武道の杖道となっている。
(2015.12.20 豆知識としてカテゴリ表記のみ記載を本文に追記)
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「研究ノート竹芝伝説」:参照
4 丈部直=武蔵宿禰家の勃興と没落
(不和麻呂以前の丈部直)
『日本家系・系図大辞典』 奥富敬之:著
『姓氏・家系・家紋の調べ方』 丹羽基二:著
【久々智 (くくち)】
麹智とも書く。
大彦命(おおひこのみこと)の後裔。阿倍氏族。
発祥は摂津国河辺(かわべ)郡久久知で、今の兵庫県
尼崎市久々知にあたる。クク・チとは、水がクク・ル(潜る)
ことに由来する、砂地のようなところ。
『倭名類聚抄』の菊池の項に
「久々知」とあってククチと読んでいたことが知られ、
「久々智。同上(阿倍朝臣同祖。大彦命之後也)」とある。
後世、肥後国よりおこった菊池氏は、この久々智氏のこと
との説がある。
ククチと読んでいたことから、『魏志倭人伝』で邪馬台国
と対立抗争していた狗奴国国王の狗古智卑狗 (くこちひく)
は菊池彦(きくちひこ)ではないかとみるムキもある。
『日本家系・系図大辞典』 奥富敬之:著
『姓氏・家系・家紋の調べ方』 『難姓・難地名字典』 丹羽基二:著
【笛吹 (うすい・ふえふき)】
古代の祭りや儀式に笛を吹く笛吹部の伴造。
火明命(ほあかりのみこと)の裔。
フエフキをウスイと訓(よ)むのは二つ説がある
① 笛の変わりに古代は竿(う)という三六または一九の
竹管の笛を吹いた。それを竿吹(うすい)といったが、
のち、一本の横笛になって笛吹の字に当てはめたが、
呼称はそのままにした。
② 群馬県の碓氷峠では群馬・長野の両県から吹く風が
渦を巻いて笛を吹いているように聞こえるので、
「笛吹(ふえふき)の碓氷峠」から笛吹だけでウスイとよんだ。
≪主な所在地≫
① 京都府相楽郡精華町大字山田
② 奈良県北葛城郡新庄町
③ 長野県北佐久郡軽井沢町と
群馬県碓氷郡松井田町境の碓氷峠
④ 東京都西多摩郡檜原村と
山梨県北都留郡上野原境の笛吹(うずしき)峠
など、その他川名もある。
≪関連姓≫
笛野・笛田・笛木(ふえき・うすい)・碓井・碓氷・臼井
『姓氏・家系・家紋の調べ方』 『難姓・難地名字典』 丹羽基二:著
【湯坐 (ゆえ)】
ユエとは「湯に坐(いま)す」の義で、
入浴の時、そばにいて介添えをする役。
多く、乳幼児の世話をする婦人のことであり、
のちに皇子、皇女の養育係りのことを言うようになった。
この伴 造(とものみやっこ)の氏族をいう。
『古事記』垂仁段に
「大湯坐、若湯座を定め、宜しく日足し奉るべし」とある。
『新撰姓氏録』には、
石上(いそのかみ)朝臣と同祖で、
物部意富売布連(もののべおおめふのむらじ)を祖とするとある。
壬生部と同系の職種とみられる。
『姓氏・家系・家紋の調べ方』 『難姓・難地名字典』 丹羽基二:著