「くわいの含め煮」
主な伝承地域 さいたま市
主な使用食材 くわい
歴史・由来・関連行事
6月下旬から7月上旬に田んぼに苗付けをするくわいは、収穫期が11月末から12月中と短い食材だ。くわいは、県東南部を流れる綾瀬川流域の、稲作に不向きな低湿地で栽培されてきた。1786(天明6)年、関東地方で大水害が起こって稲作が壊滅的被害を受けた時、くわいが高値で売れたおかげで農家が救われたと伝えられている。明治後期には、安行・野田村から種子の導入が行われ、栽培が本格化。戦中、戦後にかけて一時的に生産が途絶えたものの、その後回復し、昭和30~40年には作付け面積が最大規模になった。現在は、越谷や草加、さいたま市などが産地で、全国で2番目に生産量が多い(農林水産省 平成30年「地域特産野菜生産状況調査」)。産地では多様なくわい料理が食されており、学校給食では新鮮なくわいを煮てからご飯と混ぜ合わせる「くわいご飯」が提供されている。そんなくわいの伝統的な料理のひとつが「くわいの含め煮」だ。縁起物であるくわいにあやかり、お正月などの祝い事で食べられる郷土料理である。くちなしの実を使い、鮮やかな黄色に仕上げる。
食習の機会や時季
くわいは正月のおせち料理に欠かせない。大きく長い芽をつけること、塊茎(かいけい)の着生が、慈母が幼児に授乳する姿を連想させること、旺盛な生育を見せることなどから「おめでたい」「子孫繁栄」「健康で立身出世する」縁起物の食材とされているためだ。産地の埼玉県では、11月末から12月中に収穫される冬の野菜ということで、正月のみならず、冬の祝い料理に欠かせない一品として「くわいの含め煮」が愛されている。
飲食方法
水洗いしたくわいは、底から芽に向かって皮をむく。たっぷりの水で15~20分ゆでる。水を替えて竹串が通るまでゆでこぼす。鍋に酒や砂糖、みりん、塩、ほぐしてガーゼに包んだくちなしの実を加えて、ひと煮立ちさせる。そこに、ゆでたくわいを、芽を上にして入れて煮る。煮汁に漬けたまま冷まし、味を入れる。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
家庭で一般的につくられるほか、さいたま市内の給食でも提供されている。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/33_27_saitama.html より
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