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<日本酒> 秋田 銀鱗/那波商店

2020-12-16 09:14:07 | 日本酒

 【平成30酒造年度全国新酒鑑評会 金賞銘柄一覧(仙台国税局)】
 〈秋田〉 銀鱗/那波商店

 

 当社は文化4年(1807)当時秋田藩御用達商人であった那波三郎右衛門裕生が、藩主佐竹義和候の命により、藩の軽輩、小禄者の内職の道を開くために、桑樹が自然山林に生殖していることに着目して蚕糸織絹の業を試み、また藩命によって酒造方御試所(今の醸造試験場のようなもの)を設けたことに始まります。
裕生は絹方の支配人となり機業場を建築し父子3代に亘って盛衰を繰り返し、私費を投じて織立法を工夫し今日の秋田織を創出しました。
さらに明治4年に酒造方御試所の経験に基づき、文政13(1830)以来居を構えた大町川畔に本店及び直売所を設け、土崎の地に酒造業を起こし引き続き醤油味噌の醸造を始めました。

 大正5年に呉服太物業を始めることになり本店隣に呉服店舗を新築すると主に、既存の酒、醤油味噌醸造業等の販売もあわせて承継し、法人経営として資本金10万円をもって株式会社那波商店を設立いたしました。
当時としては世人に先駆けての法人経営に切り替えたことは画期的なことでした。

 また升屋という商号ですが、武家の出であった初代裕恵(1532~1596)が播州赤穂郡那波浦で商業に従業し、二代友悦(1582~1640)が京都に進出し、三代久誠(1645~1694)が屋号を升屋としたことが始まりです。また升屋は播州の郡名でもありました。
つまり当社の創業は400数年前に翻ると申しても失当ではないかもしれません。

 那波商店最大の遺産は、花岡正庸設計によって昭和3年に完成したコンクリート造りの蔵です。
最新の精米機を備え、洗った大桶を屋上に吊り上げて乾燥させるウィンチを取り付けました。当時は土蔵と水車の精米と人力に頼っていたのが大半の酒蔵でしたので、羨望の的となり県内外から多くの見物客を集めたものでした。今なき「花岡先生の部屋」で休む暇もなく指導された秋田流酒造法は後世まで連綿と伝えられるでしょう。

 東北初のコンクリート酒造庫 
 現在の酒蔵は昭和二年~三年(1927~28年)に建てられました。東北初(国内で4番目)の鉄筋コンクリート造りの構造です。
蔵の設計プロデュースに秋田県醸造試験場初代場長・花岡正庸先生が携わり、設計建築は大阪の竹中組(現在の竹中工務店)が行いました。

 建物は二階建てになってますが、屋上に出るための階段室ならびに道具類を上げる上屋があり、その部分が塔屋となって三階部分となってます。

 二階建てといっても各階の天井がきわめて高く、二層ほどの高さがあるので住宅と比較すると四階建ての高さのある蔵です。

各階が広いのは花岡先生の、
『仕込庫では単に広さや壁の厚さのみならず、
 庫の建方の高さによって室温調節を図るべきである。
 庫の高さの低い事は外気の影響を強からしむるものである。
 即ち庫の立方積が多ければ多い程に外気の影響が少ないのである。』
 という醸造理念を忠実に再現したものです。


 米をコンベアー(エレベータ)で二階に上げ洗米から蒸場、製麹、酛製造、醪製造を行い熟成醪は落差で階下に下ろし槽掛け地階に貯蔵する重力落下式のシステム。
木造蔵では不可能だったシステムを立体式ではじめて可能にした構造です。

 現在は酛場を仕切り、槽場(薮田式自動機)に改築、しぼったお酒を階下におろし貯蔵しております。

 内部のほとんどの箇所はコンクリートの打ちっぱなし状態で貯蔵庫および仕込庫は白い塗装が施されてます。
蔵の階段廻りには人造研ぎ出し仕上げが施されていてきれいな石造りのような階段になっています。細部にモダンなデザインや造りが隠れ見える酒蔵です。

 株式会社那波商店 秋田県秋田市土崎港中央一丁目16-41

 

 ブランド一覧

 「銀鱗」(ぎんりん)純米大吟醸 ・大吟醸・淡麗辛口

 「竜乃涙」純米吟醸 しろ 生貯蔵酒・純米吟醸 くろ・紅 ~Rouge~-「一穂積」使用

 「こまち美人」純米酒 など

 

 「一穂積」

 県独自の酒米新品種、栽培本格化へ 酒造会社は試験醸造 秋田魁新報 2020年8月15日 掲載
 秋田県が開発した酒米の新品種「一穂積(いちほづみ)」(秋田酒120号)と「百田(ひゃくでん)」(秋田酒121号)の栽培が本格化しつつある。県内の酒造会社は新品種を使った試験醸造に着手。新型コロナウイルスの影響で日本酒の消費が低迷する中、県は新たな地場産の酒米をPRし、需要喚起につなげたい考えだ。

 一穂積は今春、本格作付けが始まり、湯沢市と由利本荘市の生産者が計約5ヘクタールで栽培。両市では、百田の栽培実証試験も行われており、来年度から本格作付けがスタートする。

 湯沢市八幡で一穂積を栽培する由利稔幸さん(49)=湯沢市酒米研究会会長=は「生育は順調だ。新品種で仕込んだ日本酒が、コロナによる苦境を打開するきっかけになることを願っている」と話す。

 一穂積と百田は、兵庫県が主産地の「山田錦」や新潟県の「五百万石」など全国的に人気の高い品種に負けない県オリジナル酒米を目指し、県が開発した。

 県によると、県内の酒蔵で使用される酒米は推計で年間約4千トン。このうち県産米は8割超の約3400トンで、残りの約600トンは山田錦などの県外産米を仕入れている。新たな酒米の投入で、県産米のシェアを高めるとともに、県産酒のラインアップに一層の多様性を持たせる狙いがある。

 一穂積は2017年、百田は翌18年に農林水産省に品種登録を出願。一穂積は早ければ本年度中にも品種登録されるという。県オリジナル酒米の誕生は、04年に品種登録された本県の主力「秋田酒こまち」以来だ。

 一穂積は雑味が少なく、フレッシュな酒に仕上がるのが特徴。百田は芳醇(ほうじゅん)で深みのある味わいになるという。

 県内の酒蔵では、18年度から一穂積と百田を使った試験醸造が進められている。昨年度は県内15酒蔵が醸造し、販売した。

 このうち「高清水」醸造元の秋田酒類製造(秋田市)は昨年、両品種を使用した日本酒をそれぞれ約100本販売し、約1カ月で完売したという。今年は300~400本ずつを販売する計画で、担当者は「造り方や精米歩合を変えながら試験醸造を続けたい」と話す。

 「秀よし」の銘柄で知られる鈴木酒造店(大仙市)も昨年、百田と一穂積の日本酒をそれぞれ約100本販売。酒販店の評判は上々といい、鈴木松右衛門代表社員は「百田と一穂積それぞれの良さを引き出したい」と語る。

 県総合食品研究センター酒類グループの大野剛主任研究員は「酒米は最終製品であるお酒の評価があってこそ認められる。一穂積と百田も良い評価が得られれば栽培規模を増やしていける」と期待する。

 新型コロナの影響で飲食店の日本酒需要は低迷。流行の収束が見通せないことから、酒蔵に加え、酒米の生産者にしわ寄せが出ることも懸念される。

 県水田総合利用課の担当者は「厳しい状況だが、新品種で造った新しいお酒は消費喚起に向けたPR素材になる。県内の酒蔵にぜひ新品種を使ってもらいたい」と話す。 

 


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