昨日の続きです。村上氏の言葉を紹介します。
「戦争に行くのは、法律を作っている彼らでなく、20才前後の若い人が行くのです。」
「彼らの将来を考えず、簡単に行かせていいのか。行かせられる人間の身になると、たまらない。」
「こんな法律を作って、若い人たちを送って・・・」
ここで氏は感極まり、涙を流しました。けれども私は、氏に、もう少し考えて欲しいと思います。
世界のどこの国で、法律を作った政治家が、必ず戦場へ行っていますか。法律を作った人間は、戦場に行かず、若者だけを行かせると、あたかも立法者の政治家が、卑怯な人間であるかのごとく言いますが、この思考は、本質から外れているのではありませんか。
思いやりの深い人情家であることは、頬を流れる涙でよく分かります。人道的な視聴者が素晴らしい政治家だと褒めていますが、「ねこ庭」は違った見方をいたします。
民主主義の基本は多数決ですから、多数が決めた時、政治家は情に溺れず、少数者の意見を退ける勇気が求められます。一人の人質を救うため、百人の命を犠牲にするのか、それとも人質の命に目をつぶるか、これが政治家の決断です。
氏の涙は、少なからぬ人に共感を呼んだのでしょうが、実際の政治はそれではできません。私たちには非情とも言える決断が、なかなかできませんが、国を背負った政治家と、国を守る軍人には、それができるのです。
というより、やらねばなりません。政治家や軍人が、一般国民に尊敬される理由が、ここにあると私は考えます。
負傷した隊員が可哀想だ、亡くなった隊員が気の毒だとそればかり強調すると、逆に隊員たちの尊い犠牲を無にし、冒涜することにつながります。
「国の犠牲になった、犬死にだった」と、哀れみの情が生じるだけで、こうした考え方からは、殉死した軍人への感謝の気持が生まれません。国を守るために戦った兵士に対し、非礼でもあり、侮辱でもありましょう。
「だから私は靖国へ行かない」と氏が言いますが、当然です。こういう思考からは、尊い犠牲となられたご先祖様への感謝が、生れようはずがありません。
「憲法を改正せず、解釈憲法でなんでもやれるようになれば、主権在民、基本的人権までが、時の政権が自由にやれることになります。」
ここは正論で、本来なら堂々と憲法を改正すべきで、解釈で憲法を曲げていくのは邪道です。しかし氏は、憲法改正論者ではありません。憲法改正に反対し、できないと考えているからこのような正論を言います。
保守の仮面を被った反日と言うのは、こういう政治家のことです。
「政権や行政が、暴走しないために立憲主義がある。こんなことでは、立憲主義と三権分立が壊れます。」
「民主主義の危機です。だから私は、反対している。」
「政府は集団的自衛権の根拠として、砂川裁判の最高裁判決と、昭和47年の政府声明を根拠にしています。」
「私に言わせると、こんなものは根拠になりません。法治国家を崩壊させるような危険を、自民党がやっていいのか。」
氏の意見は、全部が間違いではありません。あれこれ工夫し、こじつけみたいな理屈で、政府が安全保障法案を成立させようとしているのは、事実だと思います。
どうして政府は、そういう姑息な工夫をするのか。ここで氏はその前提となる国際情勢を、なぜ語らないのでしょう。
中国の公船が尖閣の領海を侵犯し、大量の漁船と称する工作船が日本の漁場で密漁し、軍艦まで航行させています。北朝鮮は、ミサイルを日本へ向けて発射し、威嚇行為を続けています。中国と北朝鮮が、日本へ照準を合わせ、固定配置しているミサイルの数は、それぞれ三百発くらいという情報もあります。
間にいる韓国は相変わらず日本を敵視し、ことがあれば、中国や北朝鮮に協力する気配です。国の安全のため、なんとか自衛隊を動けるようにしたいというのが、政府の考えです。
私の思いも、ここでは政府と一致しています。村上氏の危機感と、私たちの危機感は別ものですから、お話になりません。
「これ以上政府がことを進めれば、党が分裂します。」
「それだけでなく、国民も分裂します。」
「違憲訴訟が連発され、社会不安が生まれます。」
「ちょうど、アメリカの南北戦争みたいなものです。自民党には大義名分がないから、敗れた南軍と同じです。」
ここまで来ますと村上氏の意見は、国を思う自民党の政治家のものでなく、政争ずきの素人談義になります。憲法改正に大義名分がないとは、どこから導き出される理屈なのでしょう。
この辺りの考え方になりますと、「ねこ庭」の嫌悪する反日・左翼野党と限りなく似てきます。氏は彼らと同様に、中国や北朝鮮、あるいは韓国には危機感を抱かず、騒いでいる日本に原因があると批判します。
こうなりますと、義弟の岡田克也氏の存在が無視できなくなります。岡田氏の主張が、まさにそれですから。
続けたいと思いますが、スペースが足りなくなりますで、ここで一区切りをつけます。熱くなった頭を冷やし、少し冷静になり次回に臨みたいと思います。