民主党政治の失敗を詳しく語ると横道に逸れますので、官僚との関係に絞って、述べます。
最大の特徴は、官僚抜きの政務三役で全ての政策を決定しようとしたことです。政務三役とは、大臣、副大臣、政務次官を指し、官僚支配の象徴と言われた、事務次官会議が廃止され、代わりに閣僚委員会が設置されました。
予算や重要政策は、閣僚委員会で議論し決定することになりました。政治家が官僚の助けなしに、政策形成をすることは不可能に近いのですが、民主党は、官僚からの情報提供が、政治家の操作につながることを恐れ、官僚と政務三役の接触を制限しました。
簡単に言いますと、民主党の政治家は政権を担うだけの実力がないのに、理念を先行させたということになります。
内閣人事局は、「国家公務員の人事管理に関する、戦略的中枢機能を担う組織」と位置付けられ、
(1)幹部職員人事の一元管理
(2)全政府的観点に立った国家公務員の人事行政を推進するための事務
(3)行政機関の機構・定員管理や級別定数等に関する事務などを担当する
以上三点を目指していましたが、どれも実現できませんでした。ネットの情報が、民主党政治の失敗の本質を指摘していますので、転記いたします。
「 民主党は、官僚支配の本質を的確に把握できなかった。」「彼らの、制度変革から入る政治主導は空転した。」
この一語に尽きますが、民主党政権がこれほどの反日・左翼利敵政権だとは、知りませんでした。金権・腐敗の自民党政府の打倒を期待し、一票を入れましたが、危うく日本まで打倒させられるところでした。彼らが失敗して幸いでした・・・というところで、ヴォーゲル氏の著作に戻ります。
「国会議員は、独自の調査機関を持っていないので、」「専門的な仕事に関しては、官僚に依存せざるを得ない。」「官僚に対して批判的な態度を示した政治家は、全官庁から、」「何らかの報復措置を、取られる必要がある。」「例えば、不完全な資料を手渡されたりすれば、」「国会で演説して、恥をかかされる破目になるのである。」
民主党政権時代にどこまで官僚が抵抗していたのか、実際には知りませんが、国会の質疑で、野党の自民党議員から質問されると、官僚のメモなしでは答弁的できなかった大臣たちの姿が、今も記憶に残っています。ヴォーゲル氏の語る事例が、そのまま証明されています。
鳩山、菅、野田と、一年ごとに総理が交代し、最初の総理だった鳩山氏は、辺野古の基地問題を白紙撤回して沖縄の混乱に拍車をかけ、日米同盟を危うくしました。二番目の菅総理は、尖閣の領海を侵犯した中国船を捕獲していながら釈放し、対中屈従外交をあからさまに見せました。
三番目の野田総理は、国有財産である韓国古文書を韓国へ返還し、感謝どころか逆に韓国をつけあがらせてしまいました。韓国政府は日本から盗んだ仏像を、盗品と分かっていながら、返しません。
日本をダメにした民主党の話はキリがないので、ここでやめ、ヴォーゲル氏の著作に戻ります。
「第二次世界大戦以後、20年間、アメリカは共産主義との戦いに情熱を傾けてきたが、」「日本はひたすら経済成長を追い求めもっぱら国内の経済発展のため、費やしてきたのである。」
「アメリカの電子産業は、市場を重視するより、一定の利益が保証されている、政府との契約に力を入れる方を得策と考え、」「国際市場での競争力を、見過ごしてきた。」「日本の企業は国際競争力をつけ、確実に、マーケット・シェアーを獲得した。」
米国が主張する「安保ただ乗り論」の走りですが、具体的に述べているので参考になります。自民党の政治家が、憲法改正に目を向けなかった理由も、間接的に語られています。
「アメリカ政府が投資するのは、主として軍事産業、宇宙産業、基礎研究である。」「ところが日本政府の投資は、経済的な採算がとれるものに対してであり、」「多額な資金を要するため、民間企業で手を出しにくい分野に、限られてきた。」
「政府が行う研究の目的は、民間企業への支配力を高めるためでなく、」「研究の成果を民間企業に与え、経済全体の競争力を高める点にあった。」「この方針は、すべての政府所属機関に共通している。」
「通産省所属の、工業技術院はもとより、」「競輪、競馬、ボートレースなどで、収益を得ている通産、運輸、農林各省庁の、付属研究機関にも、当てはまることである。」
氏が日本を訪れた、昭和33年と昭和50年の頃官僚たちはまだクリーンで、愛国心を持ち、国の再建に力を尽くしていたことが伺えます。到達した高度成長時代から、自民党の政治家と官僚が初心を忘れ、「憲法改正」を忘れ、「国の守り」を忘れ、金権腐敗へと身を落としていった・・・と、私は考えます。
ヴォーゲル氏だけでなく、マスコミも多くの国民も政治が官僚に支配されていると言い、官僚支配の政治を悪のように語りますが、敗戦後の日本を再建した歴代の総理がエリート官僚だったことを、どれだけの人が知っているのでしょう。
1. 吉田茂(外務省) 2. 芦田均(外務省) 3. 岸信介(商工省)
4. 池田勇人(大蔵省 5. 佐藤栄作(鉄道省) 6. 福田赳夫(大蔵省)
7. 大平正芳(大蔵省) 8. 中曽根康弘(内務省) 9. 宮澤喜一(大蔵省)
宮沢喜一氏以降、私の知る限り官僚出身の総理はいません。宮沢氏はエリートでしたが、決断力に欠けた総理だったため、事実も確認せず「慰安婦問題」で二度も韓国に謝罪し、今日の卑屈な日本を作った最低の総理の一人でした。
官僚出身者にはこんな政治家もいますが、日本を再建した素晴らしい人物もいます。この事実を見ますと、日本では政治家と官僚の境界が明確でなく、「官僚支配からの脱却」などと、簡単に言えないのではないでしょうか。
本日はここで一区切りとし、明日も氏の著作で勉強をしたいと思います。