日々 是 変化ナリ ~ DAYS OF STRUGGLE ~
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2度のグラミー賞受賞の打楽器奏者、エヴリン・グレニーを取り上げた映画、「Touch the Sound」。

この人の「音」感覚を映像で表現した「音」風景。
その導入部分の例をご紹介いたしましょう。

オープニング後しばらくして、ケルン空港を歩くエヴリン・グレニー。
エレベーターの音、しゃべり声、その他がひっきりなしに響いている空港。

そして彼女、カツカツ音に気づきその音がしている方を観ると、頭上は上層階。
その階の床はガラスで透けて見えている。
すると、その映像と共に、いろいろ音が飛び込んでくる。

ハイヒールの足跡。
カートが床の溝を乗り越えていく音。
飼い犬がペタペタ歩く音。
etc...それぞれのリズム感がランダムに飛び込んでくる。

そうこの映画は我々が日常見逃している、いろいろな音に気づく映画なのです。
8歳の時に自分の聴覚の変化に気づき、12歳のころにはほとんど耳が正常に機能しない聴覚障害者となった彼女。
耳の鼓膜でなく、響き、振動をからだ全体で感じろと彼女は語りかけます。
こんな彼女のNY→日本!→ケルン その他の旅の中のこれらの「音」風景。

メインのモチーフはこの他に、フリーフォーム・ギタリストのフレッド・フリスとのコラボレーション。
ドイツのケルンにある廃墟となった大きな工場跡でのCDの録音。

これぞ、まさにインダストリアル・サウンド!
二人は、工場全体の響きからして気に入り、工場に放置された周りのいろいろな機械や手すりも叩き、そこから新たな音を紡ぎ出していく。

先述のように「音」の感覚をenhanceされたあとのパフォーマンスなので、騒音とも取れるような、発せられる様々な「音」の意味がすっと入ってきます。
初めてノイズ・ミュージックを聴いた時の新鮮な感覚が呼び起こされました。

ジョン・ケージ、デレック・ベイルなどの現代音楽家がやってきたことは知的構築の結果である一方で、彼女のやっていることは実に自然に発せられているところが新鮮といえましょう。

この映画、関東では、渋谷のユーロスペースで公開中なのですが、映画で日本のノイズ場面で渋谷が出てきて、かなり印象に残るのですが、観客は「音」感覚を覚醒された状態で、その渋谷の雑踏を聴きながら帰途につくわけです。
これはおもしろい!

最後に。
こういう骨のあるドキュメンタリー映画なので、劇場での鑑賞をお勧めします。
音が遮断された劇場という空間なので、はじめて理解できることが多いからです。
レベルの差はあれ、必ずノイズであふれているフツーの「家」では意味ないかも。


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