前に、浮世絵のことを書いた。
しかし、浮世絵は急に出てきたわけではないだろう。
何か、下地があって花開いたのではないかと思っていた。
その時、ある新聞に「御札」のことが載っていた。
昔は、たしかに家の柱などに貼り付けられていたような気がする。
それを実際に確かめに行ったのだ。
「御札」は、基本的には仏像の絵である。
しかし、その中に古い版木によって刷られた版画(御札)「お竹大日如来」というのがあった。
説明によると、日本橋大伝馬町の下女であったお竹をという実在の人物を絵にしたものらしい。
お竹は、自分の食べるものも他人に施し、自分は流しの網に貯まったものを食べたとある。
だから、民衆から尊崇の念で見られ、御札としての「大日如来」になったのだろう。
実に優しい顔で、流麗な線で描かれている。
カタログに収録されていれば買ったのだが残念ながらなかったので、購入はあきらめた。
しかし、実物の「御札」を見て繊細な彫りや美しい線をモノクロで描いた技術はすばらしい。
もちろん、確かに版木を使っていることが刷りから分かる。
寺を参詣したり、寺に寄進したりしたとき、購入したり、寄進の礼にもらえたりしらしい。
浮世絵のルーツは「御札」にあるのではないかと思っていたが、実物を見てかなり確信をいだくことができた。
御仏を訪ねて出会う返り花
の一句は、ちょうどその時の道すがら運良くであった桜の返り花を見てできた。
*返り花(11月頃、小春日和が続くと草木が季節はずれの花を咲かせること)