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文学や史跡で登場するマチを旅しながら、折々、紹介することを心がけています。

森達也著「愛しの悪役レスラーたち」

2013年02月27日 06時44分36秒 | Weblog
森達也著「愛しの悪役レスラーたち」。2008年6月、7月の『NHK知るを楽しむ 私のこだわり人物伝』は、真山仁著「横溝正史」との組合せ。
これまで読み、接したことのない領域で紹介されている。気楽に公共交通機関のなかで、読んだ。

著者は言う。プロレスの世界は「『虚』と『実』の境」が薄い」、「『虚』と『実』が簡単」にひっくりかえり、ときには融合すると解する(75p)。
取りあげるグレート東郷、フレッド・ブラッシー、アンドレ・ザ・ジャイアントと言われても、記憶に薄い。
わずかに大木金太郎。大木しても力道山にしても、ともに出身が朝鮮半島とある。しかも「故国を隠して戦っていた」(136p)。
戦後、日本社会で出自を語らず、広めず、とりわけ大木金太郎は「二つの祖国に揺れ続け」(73p)ながらも、その「出自も伏せられた」(146p)まま、日本人の前で、旧植民地出身のレスラーが戦勝国アメリカのレスラーに向かう。そのことが観戦する日本人を「狂喜乱舞させ」、「アメリカに報復し」たことを想起する「不可思議で捩じれた構図」(143p)を現出させた、と書く。

本評をしめくくるうえで、二つのことを引用、記載しておきたい。
「この国の人は、よい意味でも悪い意味でも記憶が下手だ」「鬼畜米英や一億総玉砕などを叫んでいたのに、敗戦からすればとてもあっけなく占領軍に従属する」「誰に支配されるかではなく支配されることそれ自体を求める傾向がある」(152p)、
「(大木の生家の前には、一つの石碑がある)この地に駐留していた日本軍が兵隊の防寒服を作るため犬の供出を強いたとき、少年だった大木はやむなく可愛がっていた珍島(チンド)犬を差し出した。石碑はその供養碑だ」(156-157p)。(日本放送出版協会 2008年)。
コメント (2)
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