Luis Lopez-y-Piquer Andrea Appiani
神話最高の女神であり主役級のジュノーとは言ったが、話の中ではヒロインとなることはなく、むしろ歌舞伎でいう五枚目役、すなわち重要な役ながらもっぱら敵役、憎まれ役といったところだろうか。
自尊心・嫉妬心の激しい神として、いつも浮気者のジュピター亭主に悩まされ、その怒りを相手女性に向ける話である。
哀れなのは罪のない相手女性達で、ジュピターに惚れられたばかりに苦難を強いられることになる。そうしたヒロインの引き立たせ役がジュノーというわけである。
◎ カリスト
カリストはダイアナの侍女だったがジュピターの子を身籠ったためダイアナから叱責され、更にジュノーから打擲され熊にされてしまう。
その内容はダイアナの時にまとめてある。
◎ イオ
イオも一度扱っているが、作品も少なかったので、違う作品で簡単におさらい。
イオは河の神の娘で、ジュピターは妻の眼をごまかすために白い雌牛に変えた。お見通しのジュノーは知らぬふりで牛を貰いうける。
Gerbrand-van-den-Eeckhout
「あーらお前さん、こんとこでなにしてんのさ」「イエ、ボク何も悪い事なんかしてませんよ」
Pieter_Lastman
「かわいい牛じゃない、わたしに下さるわね」「イエ、それが、ちょっとー」「いいじゃないの、ありがとさん」
David Teniers
そして百の眼を持つアルゴスに厳重に見張らせた。 「いいかい、寝たりしたらご飯ぬきだよ 分ってるね」
Moyses van Wtenbrouck
困ったジュピターはマーキュリー(ヘルメス)にアルゴス殺害を命じた。彼は策略でアルゴスを眠らせ首を切り落とした。
Jacopo_Amigoni 「へぇ、旦那から言付かってめぇりやした」
かくしてアルゴスを憐れんだジュノーは、アルゴスの眼を孔雀の羽根につけたんだとさ。
Gregorio de Ferrari Peter Paul Rubens