三枚目69番から杏葉牡丹紋様に代って源氏香の紋様になる。
国貞は、江戸時代のベストセラー柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』の挿絵を描いており、国貞の挿絵も評判となって彼の代表作の一つであろうから、源氏香の紋様があれば『偐紫』の挿絵との関連は自ずと明らかである。ただそれだけに「百人一首」本来の内容からは離れたものになる。
春の夜の ・ 心にも ・ 嵐吹く ・ 寂しさに
夕されば ・ 音に聞く ・ 高砂の ・ 憂かりける
下段四枚目だけ、小間絵の冊子は人物の頭上に置かれていない。
契りおきし ・ 和田の原漕ぎいでて ・ 瀬をはやみ ・ 淡路島
ここから源氏香の周りに葵の紋様が加えられている。三枚目は唯一の男性光氏。
思ひ侘び ・ ほととぎす ・ 秋風に ・ 世の中よ