本日も揃いか不揃いか不明なのだが、先日の「六佳撰」「八景」などと比べても大差ないので あえて起用。
◎ 今様美女競
丸の中に「水茶屋」とか「辻君」といった身分が書かれている。
※ 上の最初の作品、下の最後の作品で女性が手にしているものは先日の白粉で「美艶仙女香」と書かれている。
◎ 浮世風俗美女競
四角の中は五言絶句など漢詩文の一節のようである。
◎ 再出
◎ 英泉は、不揃い・不揃いらしきものなどまだまだあるが、一応今回は終了。
綺麗どころによる三曲 ( 琴・三味線・胡弓 )演奏で華やかにフィナーレ。
◎ 「新吉原年中行事」
実は、英泉の揃った作品は昨日でおしまいで、今日のは訳ありである。
年中行事なら各月で12枚のはずだが、この作品は二月が欠けているかわりに三月と十一月が各2枚あって13枚なのである。
多分二月も有って見付からないだけなのだろうが、三月は花見時、十一月は酉の市で吉原は書き入れ時なので増やしたのかもしれない。
脇道にそれるが、「酉の市の売れ残り」という言葉があって、「逆美女=醜女」を意味する悪口である。
酉の市は大酉神社の祭礼で縁起物のおかめの面のついた熊手が売られる。つまりおかめ、おたふくでしかも売れ残りという訳である。
これには裏があって、神社と吉原はすぐ近くなので吉原のどこの店も客が入るが、そんなときでも売れ残るブス遊女という意味もある。
そんな次第で、売れ残りどころかすぐ売れ「逆ブス」が1枚おまけについたことで ご容赦されたし。
本日は英泉に歌麿と国貞をならぺてみた。比べてください。
◎ 英泉 「当世好物八契」
芝居 化粧品? 読み物 人形
歌留多 酒? 三味線 着物
◎ 歌麿 「高名美人六家撰」
駒絵の中に名前が判じ絵で描かれている。
当時の人達には知れ渡った有名美女たちで名前は分っているのだから判読はそれほど難しくはなかったと思う。
二把の菜っぱ、矢、海の彼方(=沖) 田んぼ 即ち「難波屋おきた」上段右 という具合である。
順不同に名前を並べるので残り五人を判読してみてください。
辰巳路考 高島屋おひさ 日の出屋後家 扇屋花扇 富本豊雛
◎ 国貞 「当世三十二相」
「嬉しそう、苦しそう」のような見た感じを表す「・・・そう」の女性の姿を描いたもの。
本来の「三十二相」は仏の身体的特徴を示す語。
絵は三十二枚あるはずだが集まったのは九枚だけでそのうちの六点。
◎ 吉原八景
吉原の花魁八人を「近江八景」になぞらえたものだが景色との直接関係はない。
瀬田夕照 比良暮雪 矢橋帰帆 辛崎夜雨
堅田落雁 粟津晴嵐 石山秋月 三井晩鐘
◎ 逢妓八契
「近江八景」の言葉のもじりと扇とにかけ、扇の絵(駒絵・小間絵という)として江戸の八景を描く。
待乳山落雁 両国橋夜雨 富が岡時雨 高縄秋月
仲街晴嵐 本所一つ目暮雪 汐留帰帆 金龍山晩鐘
◎ 美人會中鏡・時世六佳撰
◎ 美艶仙女香
これは化粧品の白粉の宣伝を兼ねた、あるいは目的とした作品のようである。
各絵には「美艶仙女香といふ 坂本氏のせいする白粉の名高きに美人によせて」という説明がそれぞれに書かれていて、東西菴南北という戯作者の句が添えられている。一枚目「白粉の花の香のある美人かな」「初雪や美人の:今朝のまた白し」などである。最後の絵は別の作品だがこれも同じような効果を狙ったものだろう。
昨日「揃いもの」を並べると大口をたたいたが この仙女香はこれだけで揃いなのかは不明である。もし不揃いで抜け落ち作品が存在するならご容赦ください。
ち
今週は英泉の作品を纏めてみる。
手元には300点ほどの作品があるが、揃ったセット物は四あ分の一ほどで、毎度ながら、あと一枚が見つからないものから、一枚だけのぱらばらばかりである。当ブログは揃った形を見てもらうのが狙いなので、物に依っては似たような作品が並ぶのは諒解されたい。
英泉は遊里の女達を描くのが得手のようで、、特に上半身、顔を大きく描いたものは普通の町娘のようなものでも、どことなく退廃的な感じが漂っている。
本日は三つ揃いを三組。
◎ 見立名所桜尽
◎ 契情若三人 遊女を「和歌三神(住吉明神。玉津島明神。柿本人麻呂)」に見立てたもの
◎娼妓三幅対 遊女を 三幅の揃い物の掛軸に見立てたもの
Aeolus アイオロスは風を司る神で、「ジュノーがアイオロスに風を解放するように命ずる」といったタイトルの作品が結構あり、それもデラクロアとかブーシェといった錚々たる大家の作品もあるのである。
Manuel Samaniego y Jaramillo
Francois Boucher 二点
Eugene Delacroix Louis de Boullogne
D.Muzzi Giunone Antonio Randa
話を求めて辿り着いたのは「トロイ戦争」であった。
そこで急ぎおさらいをしておく。
災いの神の姦計で神界一の美女神を選ぶことになり自信家三美神が名乗り出、トロイの王子パリスが審査を命ぜられた。
Giovanni Andrea Sirani Rubens
パリスはヴィーナスを選び 約束のヘレンを獲得するが、すでにヘレンはスパルタ王妃となっていた。
ヘレンはトロイに拉致される。
ヘレン Guido Reni Gavin Hamilton
二人は一目で・・・・・、、しかし、ギリシャ側は当然大憤慨で 戦争がおっぱじまった。
人間界の争いばかりでなく神様の方もヴィーナスはトロイ側、対抗してジュノー、ミネルヴァはギリシャ側ということになる。
これでジュノーとトロイ戦争の関連がはっきりして、上の絵はトロイの船舶をやっけるべく、暴風などの乱暴な連中を解き放って暴れさせるように風神に命じている場面だととうことになる。
下右は、災いのもとヘレンを殺そうとする息子のトロイ将軍アエネアスをとどめるヴィーナス。
余計なことながら神界一の美女神ヴーナスと人間界一の美女ヘレンの揃った三点を一度で見られるのは貴重ですぞ。
Angelica Kauffmann Lucas Ferrar
下左はジュピターにトロイ戦争についてアビールしているヴィーナス。ジュノーがいるから効果はうすいか。
右はジュノーとミネルヴァにギリシャ側に加担しないよう伝える「イリス」、
と、タイトルにはあるのだが、イリスは虹の女神でジュノーの使い走り。絵をよく見ると筋肉質の脚はどう見ても男、これは「マーキュリー」の間違いのようでジュピターの伝令役の彼がジュピターの要請を伝えに来るのは当然。
? Jacques Reattu
◎ レト
レトはアポロとダイアナの母なるがゆえにジュノーの憎しみも格別で、産前産後ともに苦難の連続を強いられ各地を逃げ回った。
その苦難の絵も以前に纏めてあるがその際には気付かなかった話である。
左はアポロとダイアナを寝かしつけるレトをジュノーが見つめている問題ない絵である。
右のティアポロが厄介の種なのである。手前の逃げていく女性が誰だか分らない。
まずこの絵のタイトルは「ジュノーとルナ」でレトではない。ルナは月の神ダイアナの事だがダイアナは処女神で赤ん坊と逃げる謂われはない。
ジュピターの関わった他の女性とした場合、抱えている赤子は胎内の嬰児を表現しているようだが、これは太陽神アポロと見るべきで、レト以外考えられない。レトだとすると双子として生まれるはずのダイアナがいない。前に居るチビはオチンチンがついてるからチビ天使である。右上に居る二人はジュピターとマーキュリー。
結局分らず仕舞なのだが、今回はジュノーがいろいろな女性に苦難を与えたことが分ればよいということでご了承あれ。
Marcantonio Franceschini Battista Tiepolo
◎アルクメネ
王女にして英雄ヘラクレスの母。
ジュノーは、特にジュピターの愛を受けた人間の母子には激しい憎悪を燃やしていたからヘラクレスも例外ではない。
ただジュピターはヘラクレスに特別な思い入れがあって、将来特別な存在にすべくジュノーの乳を呑ませることにした。
もちろんジュノーは承知するはずがないので、女神の眠っているときに乳を含ませた。目覚めた彼女が驚いてヘラクレスを撥ねのけたので乳房から流れ出た乳が川となった、すなわちミルキーウエイ天の川である。
Peter Paul Rubens Jacopo Tintoretto
ジュノーは幼いヘラクレスを殺すべく二匹の毒蛇をゆりかごの中に入れたがヘラクレスは二匹を両手につかんで絞め殺した。
成長後もジュノーはヘラクレスに十二の苦難を課したりして苦しめるが、ヘラクレスはすべてをはねのけるのである。
Pompeo Batoni Noel Coypel
◎ 「ヴィーナスがジュノーに帯を貸し与える」というタイトルだが、具体的な話は分らない。ウ゚ィーナスの帯を身につけると魅力的になるということらしいのだけれど、自尊心の高い最高女神がそんな人様のものなど借りなくてもよさそうなものだが・・・
Guy Head Vigee Le Brun Benjamin West
Joshua Reynolds Andrea Appiani
Luis Lopez-y-Piquer Andrea Appiani
神話最高の女神であり主役級のジュノーとは言ったが、話の中ではヒロインとなることはなく、むしろ歌舞伎でいう五枚目役、すなわち重要な役ながらもっぱら敵役、憎まれ役といったところだろうか。
自尊心・嫉妬心の激しい神として、いつも浮気者のジュピター亭主に悩まされ、その怒りを相手女性に向ける話である。
哀れなのは罪のない相手女性達で、ジュピターに惚れられたばかりに苦難を強いられることになる。そうしたヒロインの引き立たせ役がジュノーというわけである。
◎ カリスト
カリストはダイアナの侍女だったがジュピターの子を身籠ったためダイアナから叱責され、更にジュノーから打擲され熊にされてしまう。
その内容はダイアナの時にまとめてある。
◎ イオ
イオも一度扱っているが、作品も少なかったので、違う作品で簡単におさらい。
イオは河の神の娘で、ジュピターは妻の眼をごまかすために白い雌牛に変えた。お見通しのジュノーは知らぬふりで牛を貰いうける。
Gerbrand-van-den-Eeckhout
「あーらお前さん、こんとこでなにしてんのさ」「イエ、ボク何も悪い事なんかしてませんよ」
Pieter_Lastman
「かわいい牛じゃない、わたしに下さるわね」「イエ、それが、ちょっとー」「いいじゃないの、ありがとさん」
David Teniers
そして百の眼を持つアルゴスに厳重に見張らせた。 「いいかい、寝たりしたらご飯ぬきだよ 分ってるね」
Moyses van Wtenbrouck
困ったジュピターはマーキュリー(ヘルメス)にアルゴス殺害を命じた。彼は策略でアルゴスを眠らせ首を切り落とした。
Jacopo_Amigoni 「へぇ、旦那から言付かってめぇりやした」
かくしてアルゴスを憐れんだジュノーは、アルゴスの眼を孔雀の羽根につけたんだとさ。
Gregorio de Ferrari Peter Paul Rubens
今回は主役級三美神(下図、ジュのー、ミネルヴァ、ヴィーナス)のジュノーについて。
Robert Bonnart
◎ ローマ神話の最高神ジュピターの文字通りの姉さん女房(両者は姉と弟でもある)
女性の守護神として、婚姻・出産を司どる。六月の花嫁がもてはやされるのは6月JUNEがジュノーに因む故。
Rembrandt van Rijn Felix Freudzon Gustave Moreau
下中央はジュノーに扮した貴族女性の肖像画。右、女神のお尻なんて滅多に拝めませんよ。
George Rawlinson
◎ 以下は旦那のジュピターとともに。
Frans Christoph Janneck Frans Wouters
Annibale Carracci James Barry
◎ 下中央は眠りの神ヒュプノスが眠りを与える絵。蛇足ながらヒュプノスは昨日の三美神のアグライアの旦那。
右のルーベンスは、マリー メディチの肖像画披露に賛助出演したシ゜ュピター、ジュノー、ミネルヴァ
Gavin Hamilton Balthasar Beschey Peter Paul Rubens
神話の「三美神」には二通りあって、ジュノー・ミネルヴァ・ヴィーナスの主役級三女神と、「Three-Graces」と一括して扱われる端役級の三姉妹である。
左から年齢順に「アグライア」「クレイア」「エウプロシュネ」と名前も有り、役割も有るようだ゛が、絵画作品では三人纏めて描かれるのがほとんどで下の絵のように個々別々に描かれているのはこれくらいである。
三姉妹の方も過去に出してあるが、本日は前座役で出演させた。
Robert Bonnart 三点
Cranach Giovanni Martinelli Rudolph Poyorena
Charles-Andre van Loo F.Boucher
Larry Andreoff John Verney
インド風ボッテチェリスタイル Jjasmine Becket-Griffit