NASAの探査機ボイジャー1号と2号地球の音や画像を収めたレコードを搭載して、木星、土星、天王星、海王星の近くを猛スピードでかすめた後、今は地球から209億kmほど離れた恒星間宇宙空間を飛行中。太陽系の外の恒星間宇宙に進出した唯一の宇宙探査機であり、太陽系の惑星軌道面に対して(地球から見て)北方向に進路を取って進んでいる。
現在の軌道で行くと、2機は太陽の重力圏を離脱した後もずっと銀河系の旅を続け、4、50億年後に太陽が一生を終えた後も飛び続ける可能性もある。その時に探査機が宇宙人に捕獲されれば、地球の情報を記録した2枚のゴールデン・レコードが、今の地球に人類がいたことを証明するタイムカプセルとなろう。天文研究者の計算では40億年後、われわれの銀河系が隣のアンドロメダ銀河と衝突するというが、、恒星どうしが衝突するわけではないので、ボイジャーは飛び続けているであろう。
天文学者の予想によれば、ボイジャーは今後10万年ほどの間にいくつかの恒星や塵の雲に出会うという。
ボイジャー2号の遭遇する天体:
1977年8月20日、ボイジャー2号は米フロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられ、太陽系の外に向かって飛行をはじめた。牛1頭ほどのサイズのこの探査機は、木星と土星では重大な発見をし、天王星と海王星では見事な写真を撮影した ボイジャー2号は現在、太陽系の軌道面の下側を時速約5万5500kmの猛スピードで、いて座の方向に進んでいる。数年後にはヘリオポーズ(太陽風が届く境界)を越えて、いよいよ星間空間に出てゆくことになる。
ボイジャー2号がほかの恒星に接近するのは今から約4万年後で、小さな赤色矮星ロス248から1.7光年以内のところを通過する。
現在、太陽から最も近い恒星はアルファ・ケンタウリだが、ボイジャー2号と出会う頃にはロス248が太陽から3.02光年のところまで接近して、一時的に太陽に最も近い恒星となる。
6万1000年後にはオールトの雲を通過する。オールトの雲は太陽系を取り巻く氷の天体の集団で、その直径は太陽から地球までの距離(約1億5000万km)の20万倍にもなるという。長周期彗星はオールトの雲からやって来ると考えている。太陽の重力の影響が及ばなくなる場所を真の太陽系の果てと考えるなら、オールトの雲は太陽系の果てでもある ハッブル宇宙望遠鏡を使って今後10万年のボイジャーの軌道を詳細に調べ、数百万年後の軌道も大まかに計算したレッドフィールド氏も、「太陽系の果ては、だいたいオールトの雲の外縁部あたりでしょう」と言う。
ボイジャー2号がその次に恒星に接近するのは西暦29万8000年で、地球の夜空で最も明るく輝く恒星シリウスから4光年以内のところを通過する。それから約10万年後に、くじゃく座デルタ星とGJ 754という2つの恒星の近くを通る。
ボイジャー1号の遭遇する天体::
ボイジャー1号が、2号を追って宇宙に飛び出したのは1977年9月5日のことだった。1979年に木星に接近して衛星イオの火山の噴火をとらえ、1980年に土星に接近した後は、太陽系の外に向かって進んでいる。
1990年2月14日、NASAはボイジャー1号を回転させて、遠ざかる太陽系の写真を撮影した。地球は水色の点にしか見えず、天文学者カール・セーガンは、これを「日光の中に浮かぶ塵」にたとえた。
時速5万6000kmを超える速度で、へびつかい座の方向に飛行するボイジャー1号は、宇宙空間にある最速の人工物だ。2012年に初めて太陽圏を離脱して星間空間に入る探査機となったことが、翌年になって公式に発表された。ボイジャー1号は5万6000年後にオールトの雲から出て、57万年後にはGJ 686とGJ 678という2つの恒星の近くを通過する。
驚異の旅
2機はその後も旅を続け、局所泡(死にゆく恒星の爆発によって星間物質が吹き飛ばされた空洞)の中を進みながら、ところどころにある塵の雲を突き抜けてゆく。2機の探査機は、それぞれ570万年後と630万年後にこの局所泡を出る。 その先はよくわからない。銀河中心の周りの恒星や塵の雲の特異運動はまだ十分に解明されておらず、探査機は塵の雲を突き抜ける際に減速される可能性もある。さらに、主星から離れて宇宙をさまよう孤独な「浮遊惑星」の重力により、ビリヤードのボールのように小突き回されることもあるかもしれない。
最終的には、ボイジャーは銀河系のほかの天体と同じように銀河中心の周りを回って余生を送ることになる。
ボイジャーのプロジェクト科学者であるエド・ストーン氏は、「太陽付近の恒星は、銀河中心の周りを2億2500万~2億5000万年の周期で回っています」と言う。「ボイジャーも同様の軌道をとり、銀河どうしの衝突により秩序が乱されるまで、数十億年間は2億2500万年周期で回転を続けるでしょう」
40億年後、銀河系は隣のアンドロメダ銀河と衝突し、夜空の眺めは大きく変わる。 ボイジャーがどのような終焉を迎えるのかはわからない。無数の微小隕石に衝突されるのかもしれないし、予想外の激しい衝突一発で命を終えるかもしれない。太陽系よりも長生きして、周囲の環境が激変しても生き残る可能性もある「宇宙に存在するものは非常によく保存されます」とレッドフィールド氏は言う。「実際、太陽系に存在するものは、どんなに小さなものでも、これまで45億年も保存されてきたのですから」
それゆえに、ボイジャー1号2号は、現在、地球に人類がいたことのタイムカプセルになるというわけ。
ちなみになさの予算も冷戦時代のピーク時から漸減しているが、現在は5,6千億円。右に各国の防衛費を示したが、70兆円近い米軍予算の14分の1。

