パルコ上野店「PARCO_ya(パルコヤ)」に全館に230台の顔認証監視カメラを据えて開業した。その目的は防犯抑止ではなく、客層分析などのマーケッテウィング解析目的という。日経 xTECHがレポートしていた。
約60店のテナントの客層分析に用いる「顔認証カメラ」が、各店に1台ずつ。それとは別に、テナントごとの来店者数を測る「カウントカメラ」を店舗の入り口の数に応じて1台から数台設置した。2種類のカメラを合計すると、約230台になる。
これらのカメラはパルコがパルコヤを開業するに当たって、あらかじめ取り付けたテナント向けサービスの一環だ。テナントは現在、無償で利用している。
パルコヤに出店したほとんどのテナントにとって、カメラを使った来店者数や顧客属性の分析は初体験。果たして、どんなことが分かるのか。2017年12月以降、毎月一度の店長会議では必ず、カメラを使ったテナントの分析結果の例を共有している。普段は1時間ごとに来店者数などの情報が更新され、各テナントは自店の状況をウェブやスマートフォンで確認できる。
テナントの店長によって利用頻度や興味に温度差はあるものの、概ね好評だという。これまで勘と経験で店作りをしてきた店長に突きつけられる毎日の来店者数や顧客属性の数字は、店長の肌感覚に合うものもある。一方で「ウチの店にはもっと若い人たちがたくさん来ていると思っていた」といった分析結果とのギャップを口にする店長もいる。
パルコがここまで大規模なテナント分析に踏み切った背景には、2019年にもリニューアルオープンを計画している都内の基幹店「渋谷PARCO」(現在は閉鎖中)には最新のITをふんだんに取り込んで、流通業の未来を感じさせるスマートストアとして再スタートしたいという強い思いがある。そこでパルコは顔認証カメラに限らず、ロボットやAI(人工知能)スピーカー、スマホアプリとの連携など、今から様々な検証を他店の現場で試しているのだ。
いずれの技術も、パルコはカギとなるのはAIだと見ている。流通業であり、テナント貸しでもあるパルコにとって最大の目的は来店者数を増やし、かつ実際に買い物をしてくれた人の比率である「買い上げ率」を最大化すること。そのためにAIをフル活用したい考えだ。来店者数が正確に分かれば、POS(販売時点情報管理)レジの通過人数との割り算で、買い上げ率は簡単に算出できる。
買い上げ率を上げるため、パルコはAIに精通したパートナーと組んだ。ディープラーニング(深層学習)を強みとし、流通業向けには「ABEJA Insight(アベジャ インサイト)」を提供しているABEJAだ。既にABEJA Insight(旧名はABEJA Platform for Retail)はパルコを含め、国内で100社以上が採用している。なかでもパルコヤは最大規模の導入例になる。