明日は明日の風が吹く

60にしておひとりさまに。
この先、どんな人生になるのやら?

突然の遠距離介護

2016-03-19 | ひとりごと

友人の場合。

彼女は逗子在住、私より6歳も年下だが、
若い頃は机を並べて共に働き、共に遊んだ後輩だ。
結婚後はどちらも関西を離れたが、横浜と逗子、近いこともあり、
時々誘い合ってはおしゃべりを楽しんでいた。

そんな彼女から昨年末、メールが来た。
実家(京都)のお母さん(80代前半)の様子がおかしいと。



お母さんは長年ひとり暮らしをされている。
耳が少し遠く糖尿病があるが、しっかりした人で、何の心配もなかった。
彼女の妹家族もそこそこ近くに居るので、時々様子を見ているという状況だった。

ところが突然、周りのみんなが私の悪口を言っている、と言い出した。
お金がなくなった、借金取りが外で待っている、
監視カメラで監視されているetc.
挙句、「泥棒がいる。お金盗られた」と自分で110番し、警察を呼んだそうだ。
警察からの連絡で、初めて母親の異変に気付いたという。

とりあえず妹の家に引き取ったものの、お母さんの異変はおさまらず、
暴力、暴言はエスカレート、孫たちは怯え、妹は一日でネをあげた。

「はよ来て!」と言われ、
彼女は取るものも取りあえず新幹線に飛び乗り、京都へ。

会うなり、お母さんは彼女を責めたてた。
なんでもっと早く来ない! おまえのせいや!

夜も寝ずに一日中、困った、死にたい、殺してくれ、という母親。
タオルや電話のコードで自分の首を絞めたことも。
彼女も神経が参ってしまい、私にSOSメールをしたというわけだ。


私も専門家ではないので何とも言えず…

お母さんの傍を離れないように、刃物類を隠すように、
何かあったら警察でも救急車でも呼ぶように、
とにかく早く医者に見せるしかないと、そうアドバイスした。



彼女と妹はなんとかお母さんを医者に連れて行き、
検査を受け、薬を処方してもらった。
何かあったらすぐに入院もできるということになった。

年が明けてすぐ、お母さんは入院となり、
検査の結果、レビー小体型認知症ではないかとの診断が出た。



今、彼女はひと月の半分は逗子、半分は京都という生活をしている。

京都にいる時は毎日、病院に母親を見舞い、数時間話相手をするというが、
母親の口から出てくるのは彼女を責める言葉ばかり。
それが日々、酷さを増す。
「息が出来んようにしてやる。殺したる!」
「お前の顔見たらイライラする。ストレスたまるわ」
先生によれば、他の人にはそんな攻撃的なことは言わないから
「娘さんに甘えてるんでしょう」

入院中に発熱し、一週間ほどベッド上の生活が続いたせいか、
自力歩行は困難になり車椅子に。踝に褥瘡(床ずれ)が出来、
排泄もオムツ(リハビリパンツ)になってしまった。
病院ではリハビリはやってくれないという。
その病院も3カ月をめどに次を考えなくてはいけない。



突然始まった、彼女の遠距離介護。

今、彼女を悩ませているのは今後のこと。

この先、お母さんがどうなっていくのか、居場所はあるのか。
金銭的なこともあるし、体力的にもつかどうかも自信がない。
休職中の仕事もいつまでも休んでいるわけにいかない。
家事能力ゼロの夫を残してくることも気になる。


そして、困ったこと。

例えば医者に連れていけ、薬を飲ませろと言われても、
具体的にどうすればすんなり医者に行ってくれるのか、
どうすれば薬嫌いの母に薬を飲ませられるのか。

言っていることを否定しない、暴言は聞き流せと言われても、
聞き流す前に必ず入ってくるから、病のせいとわかっていても
やっぱりつらい、と。

ちなみに
地べたに這いつくばって嫌がる母親を隣家のおじさんに担いでもらって
タクシーに乗せて医者に行き、
薬は好物のジュースに混ぜて飲ませたそうだ。




少し落ち着いた今、
京都四条河原町で、行き交う観光客をぼんやり見ながら、
そんな話を彼女から聞き、私も少しの経験談を話し、
それじゃあまたねと別れた。

帰り道、彼女のお母さんと私の母がダブり、
いつか私にもそんな嵐の日々が来る、と確信に近い思いがした。