風の数え方

私の身の回りのちょっとした出来事

国道52号線のタイミング

2006年02月11日 | 清水ともゑ帳
母の墓参と図書館の利用を兼ねて、時々、興津(おきつ)方面に出向く。
そのときに、いつも、もう一度体験してみたいと思うことがある。

4、5年前のこと。
当時、私は同じアパートに住む主婦友達とよくお茶をしていた。
あるとき、興津出身の友人が、「子どものころから不思議に思っていることがあるんだけど…」と話し始めた。
国道52号線を山梨方面から車で走ってくると、その延長線上の沖に停泊中の小さく見える船が、興津中町の交差点(52号線の起点)で急に大きく見えるというのだ。



その間、ほんの数十秒ほどだそうだ。
沖にいた船が、いくらなんでもそんなに早く接岸できるわけがない。
その場で大いに話しが盛り上がり、今からみんなで確かめに行こう、ということになった。
一旦、山梨方面へ52号線を上っていき、そして、下ってきた。



な、なんと、彼女の言うとおりだ。
沖に見えたちっちゃな船が、目の前にドーンと構えている。
自分の目がいきなりオペラグラスになったみたいに。

帰りの車で、私たちは興奮した。
言い出した彼女は、「ほら、ほんとでしょ」と。
他の一人が、「こんな大発見、テレビ局に言わなきゃ」と言う。
「じゃ、『とびっきり!しずおか』か『静岡まるごとワイド』にしよう」
「ローカルテレビじゃもったいないよ、すごいことなんだから。そうだ、全国ネットの『めざまし調査隊』に依頼しよう」
「そうだ、それにしよう!」
もう、誰が何をどう言ったのかわからないくらいだった。

私は夫にも興奮して話した。
が、意外にも夫は冷静だった。
「それは、他に見える景色との対比で、錯覚しているだけだよ」と言う。
ふーん、なるほど。それって例えば、家具屋さんで見たソファを家の中に運んだら、妙に大きくて圧迫感を感じるときみたいに……?
あんなに盛り上がった話題だったけれど、誰もテレビ局に伝えることもなく、しぼんでしまった。

錯覚でもなんでもいい。
もう一度、あの体験をしたいと思うのだ。
それがなかなか難しい。
52号線の延長線上の真正面の沖に、船が停泊していることが少ない。
仮にあったとしても、車道の前方に大型車がいて、視界がさえぎられることも多い。

みんなで見に行ったあのとき。
あれは、本当にグッドタイミングだった。

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