風の数え方

私の身の回りのちょっとした出来事

たとえてみれば……

2006年02月14日 | 清水ともゑ帳
昨日、NHKラジオで聴いた向井万起男氏のエッセイ『愛人の数と本妻の立場』が興味深かった。
朗読は俳優の江守徹。

医師である向井氏は、先輩医師が患者さんに対して病状などを告げるとき、患部の大きさを、「こぶし大」「小児頭大」などにたとえるのは、人それぞれ受け取り方のイメージが違うので良くないのだと思っている。
が、それは先輩医師を前にしてなかなか言い出せない。
ある日、「成人頭大」と聞いたとき、氏はとうとう黙っていられなくなった。
じゃ、何かい、大人の頭の大きさはみな一緒なのか、それじゃ、大人用の帽子のサイズはワンサイズしかないっていうのかい?
物事には、曖昧にした方がいいこともあるが、医師は患者さんに正確に伝える必要があるのではないか、と。

ほほう、なるほどなあ、と私は車のハンドルを握りながら、なおも耳を傾けた。
江守徹の語り口も歯切れ良い。
話は、「十二指腸」の名前の由来と長さに展開していった。

そういえば……と、思い出した。
我が家の今の車は新車で買ったけれど、今年8年目に入る。
昨年暮れ、運転中にトラブルを起こし、点検と同時に査定をしてもらった。
故障の原因となった部品はクリーニングで当分の間は持ちこたえるが、次に壊れたら取り替えなければならないという。
その料金、19,000円ほどになるそうだ。
8年も経てば仕方ないか、と家に帰り、査定金額を見て驚いた。
愛車は部品代と同じ価値しかないのだ。
私にとってはこれぞ、曖昧に知らせてほしい数字だった。

けど、もし、伝えてもらうとしたら、何にたとえてもらえばよかったんだろう。
約2万円、この金額、うまいたとえが思いつかない。
「ラーメン○杯分」「コーヒー○杯分」とかいう表現も聞くけれど、これも人それぞれイメージの違う数字だ。
かといって、指を2本立てられ、「これだけかかります」って示されたら、私はもっと勘違いしていただろう。
「わぁ、20万円で下取りしてもらえるんだ♪」って具合に。
やっぱり、これははっきりした数字がいいのだなぁと思う。
大きさや金額は、何かにたとえて具体的に伝えるのは難しい。
うちの車、今度故障したときは、もう、買い替えしかないようだ。

向井氏の奥さまは、宇宙飛行士 向井千秋さんである。
もっとお話を知ってみたくて、私はこの本を図書館に予約した。

……で、車のことを友人に話したら、彼女がこう言った。
「だ~いじょうぶ。うちもそうだったけど、部品の交換でそのあと7、8年は乗ったから」と。
二者択一の道が、まだ残っているような助け舟だった。

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