風の数え方

私の身の回りのちょっとした出来事

啓示

2007年02月14日 | 清水ともゑ帳
明け方に見た夢。

とても広いお寺に私はいる。
その寺のご住職が亡くなった。
ご住職とは縁もゆかりもない私だが、なぜだか私はそこにいる。
これから迎える多くの来客のため、みんな一旦悲しみをどこかへしまい、準備は手際よく淡々と進められている。

ある部屋へ行くと、数人の婦人が花を生けている。
寺のあちこちに飾るらしい。
生け花を始めたばかりの私はつい興味をそそられ、みんなの手元を見ている。

私は奥の部屋へ行くように言われる。
そこには仏壇がある。
本堂とは別に、ご住職がプライベートで使っているお勤めの部屋のよう。
私はうっかり香炉をひっくり返してしまい、灰が座布団に広がった。

座布団の灰を振り払うため、私は別の部屋へ持っていき、窓を開け、パタパタとはたいた。
ご住職の奥さまが怖い顔して私のところへ向かってきた。
「住職がいる部屋でそのようなことをするなんてなにごとですか!」
振り返ると、ご住職が横たわっていた。
周囲にも多くの人がいて、私を睨んでいる。
「申し訳ございません」
手をついて謝り、また別の部屋へ行った。

窓を開け、再びはたこうとした。
さっきは気がつかなかったが、黄緑色の座布団には座ったときの足の形がくっきりとついている。
特に膝が乗っていた前の部分はくぼんでいる。
そして、そこは少しばかり茶色に変色し、擦り切れていた。

大きな寺のご住職ゆえ、そんな状態の座布団をそのまま使い続けるなんて考えられない。
それともプライベートでは、質素倹約を心がけていたのだろうか。
ご住職はおそらく90歳を越えている。
長い間、お勤めを果たされたあとの座布団。
その座布団にご住職の人生を見たような気がして、涙があふれてきた。


夢から覚めても、座布団のリアルな感触が手に残っていて、私はまた泣いてしまった。
「人生を全うせよ」
そんな啓示を感じる夢だった。