風の数え方

私の身の回りのちょっとした出来事

菊の香り

2008年05月08日 | 清水ともゑ帳
伯父の葬儀でいただいてきた菊が香る。
菊の香りは、子どものころの秋の日を思い出す。

小学校までの通学路、近道をしようと農家の庭先をよく横断したものだった。
「通らせて」
元気よく一声かける。
「はーい」
と、たいていはおばあちゃんが返してくれた。
その農家では、秋になるとたくさんの菊の花が咲いていた。



精進落としの席で、いとこがしみじみと言う。
「親戚どうしが集まるのは、こういうときばかりになったな」
確かに、ここ数年、黒い服の出番が増えた。
顔を合わせるときは互いに喪服だから、普段着で街ですれ違っても、そのまま通り過ぎてしまうかもしれない。

故人を偲びながら、昔の懐かしい話で小さく盛り上がる。
複雑な思いが入り混じる。
それは、子どものころに感じた菊の香りとなんだか似ている。
花の美しさに見とれ、庭先でいっとき楽しい時間を過ごしながらも、冬に向っていくことをさびしく思ったときと……。

亡き母の実兄である伯父の葬儀の今日は、母の誕生日でもあった。
母は7人兄妹の末っ子だった。
伯父より先に旅立って、12年になる。
久しぶりに兄妹全員が揃い、雲の上で仲良く大好きなお酒を酌み交わしているかもしれない。

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