真夜中、水が落ちているような音で目覚めた。
ピトン、ポロ~ン。
金属音が少し混ざっているような、高く澄んだ音。
なんだろう。気になる。
前夜、私は疲れていて、汚れた食器をシンクに出したまま床についた。
蛇口のレバーをちゃんと降ろしてなかったかもしれない。食器に水がしたたり落ちているんだ、きっと。
起きて水を止めてこなくちゃ、という気持ちと眠気が葛藤を始めた。
その間にも、「ピトン、ポロ~ン」と、規則正しい、涼やかな音色が耳に届く。
まるで水琴窟(すいきんくつ)みたい。水琴窟の音ってカタカナでどう書くんだろう……。でも、文字にしちゃったら、あの繊細な音がいっぺんに壊れちゃいそうだ。
心地よいアルファ波の波間に漂いながら、あれこれ思いをめぐらしていた。
音は、キッチンからではなく、どうやら私のすぐ近くから聞こえてくるようだ。
台所へ行って、確かめるまでもないかな。
再び、音の世界に戻った。
しばらくすると、ンガ、ンガと雑音が混ざるようになってきた。
なに? なんだろう。
いよいよ音の正体が気になり始めた。気持ちよかったまどろみから引きずり出され、だんだん意識がはっきりしてきた。
ンゴォ、ポロ~ン、ンゴォ、ポロ~ン。
私の耳元で、次第に低音部のうなりが荒く激しくなる。
ンゴゴオオオ、ンゴオオオ。
なに、これ、いびきじゃん!
隣で寝ている夫の顔をまじまじと眺めた。
どうしたら、この鼻と喉で、水琴窟みたいな音色が奏でられるんだろう。
さっきの音、もう一度聞かせてくれないかな。
って、いうか、どこか具合が悪い?
「ねえ、ねえ」
夫の体を揺り動かした。
「……ンガ」
雑音の独奏会は、途切れることなく、なおも続いた。
ピトン、ポロ~ン。
金属音が少し混ざっているような、高く澄んだ音。
なんだろう。気になる。
前夜、私は疲れていて、汚れた食器をシンクに出したまま床についた。
蛇口のレバーをちゃんと降ろしてなかったかもしれない。食器に水がしたたり落ちているんだ、きっと。
起きて水を止めてこなくちゃ、という気持ちと眠気が葛藤を始めた。
その間にも、「ピトン、ポロ~ン」と、規則正しい、涼やかな音色が耳に届く。
まるで水琴窟(すいきんくつ)みたい。水琴窟の音ってカタカナでどう書くんだろう……。でも、文字にしちゃったら、あの繊細な音がいっぺんに壊れちゃいそうだ。
心地よいアルファ波の波間に漂いながら、あれこれ思いをめぐらしていた。
音は、キッチンからではなく、どうやら私のすぐ近くから聞こえてくるようだ。
台所へ行って、確かめるまでもないかな。
再び、音の世界に戻った。
しばらくすると、ンガ、ンガと雑音が混ざるようになってきた。
なに? なんだろう。
いよいよ音の正体が気になり始めた。気持ちよかったまどろみから引きずり出され、だんだん意識がはっきりしてきた。
ンゴォ、ポロ~ン、ンゴォ、ポロ~ン。
私の耳元で、次第に低音部のうなりが荒く激しくなる。
ンゴゴオオオ、ンゴオオオ。
なに、これ、いびきじゃん!
隣で寝ている夫の顔をまじまじと眺めた。
どうしたら、この鼻と喉で、水琴窟みたいな音色が奏でられるんだろう。
さっきの音、もう一度聞かせてくれないかな。
って、いうか、どこか具合が悪い?
「ねえ、ねえ」
夫の体を揺り動かした。
「……ンガ」
雑音の独奏会は、途切れることなく、なおも続いた。