筒井筒
2017-11-24 | 雑学
最近では聞かれなくなった言葉に「筒井筒(つついづつ)」があります。
昔は漫才や落語にも登場した言葉でした。
意味はご存知だと思いますが、幼なじみ同士が結婚することで、「私と妻は実は筒井筒でして」などのように使用されます。
筒井は円筒状にまっすぐに掘り下げた井戸のことで、筒はその井戸の枠をいいます。
この言葉の由来は平安時代の歌物語『伊勢(いせ)物語』の次のような話に基づきます。
行商の子供たちが井戸の傍に出て遊んでいましたが、二人とも年頃になると恥ずかしがって会わないようになりました。
しかし、心の中では、互いに一緒になりたいと望んでいたのです。
ある時、男の方が次のような歌を女性におくりました。
「筒井筒 井筒にかけし まろ(私)がたけ 過ぎにけらしな 妹(いも)見ざるまに」
(意訳:あの井戸の井げたのもとで背比べをした私の背丈は、あなたに会わない間に、井げたの高さを超えてしまったようですよ)
すると女性は次の歌を返しました。
「比べ来(こ)し 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれか上(あ)ぐべき」
(意訳:あなたと比べあってきた私の振り分け髪も、肩を過ぎるほどの長さになりました。成人したしるしの髪上げを、あなたでなくて誰がするのでしょうか)
そして、とうとう二人は年来の思い通りに結ばれたのです。
この事から、幼馴染みが結婚することを「筒井筒」と言うようになりました。
歌でプロポーズをする昔の男女は知的で優雅だったようですね。