いつも感じることなんですが、
現代に建てられている住宅と、古民家を比較して
最も顕著な違いは、土間の有る無し。
古民家に行って土間がないという住宅はまずありえない。
土間って、広大な土という調湿作用装置とも言えます。
なので、夏の暑い時期には土内部に蓄えられた水分が
気温上昇に伴って気化熱を奪って行くので、
相対的に室内の気温を下げる効果があると思います。
そのような基本的な室内環境演出装置という性能的側面があるのですが、
同時に、室内での土間って、自由な作業スペースとして
実に快適な装置だと思われます。
多くの用途としては、農家などでは雨の日の作業スペース。
商家や町家でも、仕事上の作業スペースとして重宝していた。
家というのが、生業を支える労働の場でもあったということをあらわしているのですね。
で、そのほかにも多くの場合、かまどや流しといった調理装置も置かれていた。
床が張られたスペースがひたすらに休息的な場であるのに対して
土間って、大変アクティブな生活空間だと思います。
こういうスペースが、現代住宅ではなぜ絶滅に近いのか?
というのは、たぶん、高成長時代の多人数家族の個室確保のために
なによりも「床面積」至上主義が行き渡ったということが大きい。
そして、住宅が手仕事的に丹念に設計施行されるのではなく、
大量消費的社会の中で、売り買いの対象となったことで、
床面積と、なんLDKというような流通指標が家を
客観的に表現することになったのでしょうか。
逆にいえば、そういう指標表現でもっとも有利なように
何とも表現できない、土間のような「残余」的なスペースが敬遠されたのでしょう。
さらに言えば、生産活動・労働活動と住まいが分離したという結果、
家の中にこういう作業スペースが必要とされなくなったことも大きい。
ということなんですが、
どうなんでしょうか?
これからの時代は、たとえば高齢者の住まいを考えると
部屋数がそんなに重視されることは少ないだろうし、
趣味的な空間の方が、欲求が高まってくると思う。
そういうときに自由度の高い土間は、すてきな空間とは言えないでしょうか?
熱環境的にも、基礎断熱を採用すれば、土間の蓄熱性って
大いに活かして使うことができると思われます。
そうなれば、夏涼しくて、冬暖かい基本装置にもなりうる。
なによりも家の中に開放的な空間ができることで、
快適性が著しく向上する。
そろそろ、LDK神話から目覚めてみませんか?
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