三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

歌舞伎の魅力、天井桟敷にて

2013年01月28日 05時01分38秒 | Weblog



先日の東京出張では、土曜日までいられたので、
伝統芸能に触れたくて、歌舞伎を観劇してきました。
わたし、能や狂言とか神楽とか、
昔から日本に存在してきた芸能を体感するのが大好きです。
以前、浄瑠璃を見ていて、その人形の動作体動に日本人的動作のエキスを
感じるような瞬間もあったりしたことがありますが、
伝統芸能からは大きな発見をすることが多く、いつも新鮮に愉しめる。
歌舞伎も大好きなんですが、
北海道にいると、めったに観劇できる機会はない。
もうすぐ「歌舞伎座」が新築完成するようですが、
東京都内でも、何カ所か順繰りに見ることもできます。
今回は、浅草での新春公演で天井桟敷に席を求めることが出来たので、
格安で2500円也という歌舞伎的には「低料金」で観劇した次第。
そうなんです、「天井桟敷」、である必要がある(笑)。
天井桟敷、通常、いちばん安くて天井に近いとか、舞台からの距離が遠い席。
芝居って、もちろんナマでやっているわけだから、
近い場所で見るに越したことはない。
でもそういう席は料金が高いことになっている。
いちばん慎ましやかな席でこそ、じっくりと落ち着いて鑑賞できる。
それと通の方たちが通う席ですから、
いわゆる「大向こう」からの声を近くで拝聴も出来ることになっている。
セリフなどがよく聞き取れないときでも
おお、ここが山場なのだなと側聞できたりもする(笑)。
大向こうからの掛け声というのも、古典芸能では大切な要素なんですね。
良く役者の指標で「大向こうを唸らせる」という言葉があるように
世間感覚そのものが、大向こう、天井桟敷なんですね。
けっこう、こういう部分は重要なのではないかと思う次第。
ちなみに、料金を見てみると、浅草歌舞伎で
1等席 11000円 2等席 6000円 3等席 2500円
国立劇場の歌舞伎公演では
1等A席   9,200円 1等B席   6,100円 2等A席   4,500円
2等B席   2,500円 3等席 1,500円
となっていて、大きな格差がついているのですが、
どう考えても、席によるそういう違いはない。
第一、役者は大向こうまで伝わるように演じるのが務め。
というようなことなので、いわゆる「いい席」には興味がないのであります。
そうすると、自由な観劇が可能になるような気がします。
伝統劇は、それが成り立った経緯も含めて現代に
その成立した時代の、いわゆる「行間」の部分を伝えてくれる。
いわば時代の空気感とでもいえる部分。
同じような感覚を持っているだろう人間が、劇的にふるまった痕跡が
伝わってくるのですね。
今回鑑賞した「極付 幡随長兵衛(きわめつきばんずいちょうべえ)」
「公平法問諍」(きんぴらほうもんあらそい)
というお芝居では、江戸初期に成立した町人層による「大衆社会」の
成立期の状況がいろいろに側聞できる瞬間が多かった。
大筋は、街の治安を自然発生的に承っていた「町奴」幡随長兵衛が
身分権力を笠に着て横暴を繰り返す「旗本奴」と対決するストーリー。
なのですが、
こういう社会状況が背景として良く伝わってくる。
そうか、江戸初期というのは、空前の公共投資「日光東照宮造営」などで
経済が活性化し、そのなかでいわばリクルートのような
幡随長兵衛による人材斡旋業のような職が成立したのだ。
そして突然のように出現した「市民大衆社会」では
治安が十分ではなかったのだ。というような時代背景状況が明瞭に見えてくる。
で、幡随長兵衛という人格が好もしいものとして描かれていく。
武家の権力というもののなかでの存在感が伝わってくるのですね。
むむむ、面白い。やはり古典芸能、大好きであります。

コメント
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