みなさん、「道南杉」という樹種をご存知でしょうか?
約250年前くらいと言いますから、江戸時代の中期後半ころ
松前藩時代にその周辺、北海道の渡島半島地域、道南地域に
秋田から杉が移植されたことから根付いた樹種です。
道南地域は、気候風土的にも秋田や津軽といった東北北部地域と
類縁性が高い地域で、それ以北の北海道とはやや質が違う風土。
この道南杉についても、これまでは主に本州地域に出荷され
住宅建材として活用されています。
杉は歴史的に、災害の多い日本列島での建築材として
その成長性の早さ、まっすぐに伸びる点など、建築材としての適性に優れた材。
ところが、日本的住文化のかかえる構造的欠陥「寒さ」から、
こうした民族的経験積層のある建材への郷愁よりも、
室内気候の快適範囲内への確保実現の方に、
北海道の住宅研究は、はるかに向かい、
せっかく地域に生育している材でありながら、
従来は活かされることが少なかった樹種であります。
戦後日本は貿易加工立国で、原材料を海外から仕入れて技術などの
付加価値を付け製品として出荷するという、資本主義世界システムの中での
社会構築・基本生存戦略を走ってきた結果、
身近なこうした「材」を使うよりも、海外から調達した建材を使った方が
「より安価」であるという不自然なことが、住宅市場では実現してしまった。
しかし、こうしたことが「サスティナブル」であるかどうかは自明であって
いずれ、シンプルに「地産地消」と言うことの方が合理的だという
社会が出来上がっていくとは思うのですが、
一方でそれにはタイムラグがあって、未活用なままのこうした杉資源、
それを支えてきた日本の森林事業自体の絶滅危機も迫っている。
そうしたなかで、国交省からこうした道南杉資源の活用事業が採択され、
そのお披露目として、北海道渡島総合振興局西部森林室と
札幌の住宅企業・(株)住宅企画クリエーションの共催で、
「感じる道南杉、感じる笑顔」と題した
「杉スマイルモデルハウス見学会」が開かれ、参加してきました。
一方で、このモデルハウスは、
最近ブームの傾向にある「インダストリアルデザイン」も表現したもの。
このデザインは、無垢の木材と、引き絞り用に徹した工業製品の緊張感とが
両者相まって、空間に独特の空気感を生み出そうとするもの。
ここでは、無垢の道南杉と独特の深みを感じるアイアンなどが、
面白い雰囲気を創り出していました。
なんですが、それぞれの素材使いのいちいちを楽しく取材確認していたら、
あっという間に見学時間が終了してしまって、
バスに遅刻寸前になってしまいました(笑)。ということなので、
今度じっくり見学したい旨、お伝えして帰って来なければなりませんでした。
こういう空間の雰囲気、好きな人はいるだろうなと予感を感じた次第。
ということで、いずれまた。