三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【横浜戸部の家/築11年“2階中庭”の機能推移】

2017年09月25日 07時36分46秒 | Weblog



関東・横浜での住宅見学シリーズです。
こちらは横浜市戸部の築11年という住宅です。
設計者・鈴木アトリエさんがまだ、高断熱高気密に目覚めていない時期。
過密都市的な環境の中で、どのように暮らしをデザインしていたか、
その様子がうかがえる住宅取材でした。
ただしわたしはワケあって、説明時間に若干遅刻したので
鈴木さんからの解題を聞いておりませんでした(泣)。
ということなので、資料と自分の興味のままにテーマをまとめます。

敷地面積は30坪弱。3階建て延べ床面積は44.7坪。
プランとしては条件にすなおに対応した3階建て。
過密都市が求める諸条件のなかで建て主の生活要求を満たしたデザイン。
外観的には正面側フォルムは外壁材を窓まわりで変化を付けている。
駐車スペースを取れているのは、過密都市住宅としては
敷地条件的に前面道路接道などが良好だったことを表している。
北海道東北のような条件とは違うので、比較のしようはない。
そういう敷地背景の中で、子どもさんが野球をやっていたり、
ご主人がバイクの趣味を持っているという「与条件」を受けて設計した。
可能な限り、そういった個性を反映した設計を考えるだろうと思います。
鈴木さんが出したプランの大きなテーマは2階の中庭。
周辺環境から、北入りの敷地で採光や通風を確保するのには必殺プランでしょう。
まずは、採光という基本要件をどう確保するかが大テーマ。
密集都市での住宅デザインのひとつのカギなのでしょうね。
そういう意味では伝統住宅の町家が、中庭を持っていることは自然な解。
ただしここでは、その中庭が2階に持ってくるプランになった。
構造は確認はしていませんが、1階はコンクリート造であることが自明なので、
その天井スラブを利用して、中空の中庭になった。
で、その中庭でアウトドア的嗜好の強そうな家族は、テーブルを出して
にぎやかにお茶やバーベキューを、と考えたそうですが、
結果はそういった使い方には至らなかったということ。
出入りの想定が、居間の収納兼用的なベンチ階段からというのが、
その用途にふさわしくなかったということなのか、
と説明には書かれていましたが、出入りのための窓引き戸が巨大すぎて
そういう心理には至らなかったのかも知れません。
あるいは、ほかの本来のリビングダイニングが個性的でいごこちもいいので
あえてそういう条件を乗り越えてまでアウトドア志向を持たなかったのかも。
また、外壁見立ての引き戸扉をデザインした「バイクガレージ」でしたが、
結局はバイクの購入をしなかったということ。
家を建てる段階では夢として語られていたということですが、
設計と実際の暮らし方には、建て主さんの変化もあることを考えさせられます。

ということで中庭は本来の「光庭」として機能するようになった。
居間空間にたっぷりの採光を提供していますが、
同時に対角に配置された水回りからもこの中庭がたいへん効果的。
照明がなく中庭に出窓で開口する洗面はまことに気分がよさそう。
横浜は日本有数の日射の多い地域。
まことに開放的であることが地域性にまでなっていますね。
ただし、そういった条件の土地であるからこそ、
断熱や日射遮蔽などが現代住宅の基本として求められるのだと思いました。
コメント
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