三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【風と雨、日射 蒸暑地バウビオロギーへの憧憬】

2019年06月25日 06時09分16秒 | Weblog



人間というのは、どうしても未知への好奇心が強いのでしょうか?
というか、どこかここでない場所への憧憬が強い。
先日も触れた前橋工科大学・石川恒夫先生の講演の様子、
それも蒸暑地・ベトナムでの環境建築の件に吸い寄せられています。
わたしも沖縄には頻繁に行くことがあって、
蒸暑地域での気候風土、そのなかでの建築的なこころみには
ずっと惹かれ続けている部分があります。
たぶん、気候的にはほぼ同様の地域に
人類の8割は住み暮らしているというのが全地球的現実世界。
蒸暑という方が人類的普遍性という意味では
建築的な挑戦はより求められるのだろうと考えられます。
年平均気温が27度というのですから、
沖縄の23度と比較してもさらに「蒸暑」気候。
ちなみに札幌は8.9度、東京は16度前後と言われます。

こういった環境のなかでは、
やはり蒸暑への対応ということが、中心になる。
基本は日射遮蔽をどうするか、ということなのでしょうね。
先生の発表でも図で示されたホイアンという街の
カムタン コミュニティハウスという建築の断面には
風の制御、日射の制御、雨水循環システムはあっても、
床壁天井での熱的なコントロール制御の概念はない。
面白いのはこの建物は日干し煉瓦を積層させた外皮で囲まれていること。
その外皮に適当な風の通り道としての開口を空けている。
室内には中庭が造作されて、樹木が日射遮蔽コントロールとして植えられ
屋根は簡易な草屋根で覆われている。
その屋根に落ちる雨水を地下タンクに集めてさまざまに利用している。
室内の写真を確認すると、床面は土間のような仕上げと思われます。
屋根での日射遮蔽によって土間面は比較的に低温が維持されるでしょう。
そういう「冷輻射」利用は自然的な環境適応だろうと思われる。
風の積極的な導入は、たぶんこうした日射遮蔽の結果の冷蓄熱で
内外に「温度変化」が生まれることでも促進されるに違いない。
人体から蒸散される汗は、そうした風によって飛ばされて
皮膚感覚としての「快適」が維持されていくのだろうと。
寒冷地とか温暖地域での「空気環境を制御する」考え方というよりも、
人体メカニズムに即した環境制御が考えられているともいえる。

最近、温暖地域で全館空調がブームと聞きますが、
寒冷地側としては、むしろこういう蒸暑地の知恵がきわめて示唆的だと
興味深く感じさせられています。
コメント
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