三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

宮廷のみやび

2008年02月09日 06時13分00秒 | 歴史探訪

今週はずっと出張に出ていまして、
2日間ほど東京に滞在していました。
わたし、東京に来ると時間を作っては上野の東京国立博物館に行くのが習慣。
今回は、手前側の科学館でもなんと、「ナスカ展」アンコールを行っていましたので、
両方、掛け持ちで見学してきました。
本日は、そのうちの博物館での「宮廷のみやび」展です。

なんですが、のっけから結論を言ってしまうと、
やはりがっかりさせられた、というか予想通りというか、
「ああ、やっぱりね」という展示だったのです。
日本の文化の中で、藤原氏、のちに別れて近衛家となるのですが、
このような貴族が果たしてきた役割は、理解はできるのですが、
やはり生理的に、こういう国家権力に寄生して
その甘い汁を吸ってきた、という存在に対して好意的にはなれないのです。
展示は、おおむね、天皇家との関わりを誇示するようなものの羅列。
かれらにとっては、政治的な「戦利品」のようなものですね。
そういうものが、今日的な価値観で見返してみたとき、
はたしてどれほどの意味があるのか、疑問です。

貴族というのは、「文化・文芸」の道を民族の中で
大きな役割として果たしてきた、ということですが、
それは民衆への大きな抑圧の結果として
かれらが獲得し続けてきたことであって、多少の努力要素や素養というものはあったにせよ、
基本的には、たまたま、そのような境遇に生まれたからそうなっただけだと思うのです。
「そのことにどれほどの意味があるの」と内語し続けてしまった次第。
まぁ、下々の「ひがみ」ですね、これは(笑)。
よく「王朝文学の香り」とかなんとか、
一般民衆のリアリズムとはまったく無縁な恋物語などを
さも、立派な香しい文化ともてはやすような考えがありますが、
どうにも同意できませんね。

展示の中で、近衛前久という戦国期日本史にも名前が登場する人物が出てきます。
わたしは、司馬遼太郎さんの文学で、この名前を知っていました。
家康を描いた司馬さんの「覇王の家」のなかで、
ほぼ天下統一の事業が完成に近づきつつあった信長を
家康が自分の領土の中を通らせて富士山を見物させる旅行接待をするくだりがあります。
その間の政治的な背景に触れながら、
家康と信長の心事を推量し、考察しながら展開するお話ですが、
そこにこの「前・関白」の名が登場します。
政治的にはなんの実態もない存在でありながら、身分だけは高位であるこのひとが、
信長に、富士山見物の旅への同行をねだったのですね。
それに対して信長は、「わごれなどは、さっさと帰れ!」と大喝したという描写があります。
<確か本文では、東山道を帰れ、となっていたはずですが。>
「信長から酷いことを言われた」と日記に記していたそうです。
しかし、このとき信長は、天下一気性の難しい自分を接待するという家康の
政治的な覚悟のほどを思いやって、その心事を計っていて、
そのうえ、身分だけは天下第一等である近衛が加われば、
家康には、どれだけの心理的負担になるか、それを考慮しない近衛前久に
つい、どなってしまった、というような消息を文章にしていたのです。
そうした存在であるという、知識の下敷きから、
展示を見ている自分がいるせいなのか、やはり遊離した存在という意識が働くのですね。

しかし、信貴山絵物語など、目を奪われるような素晴らしいものもあります。
また、書の歴史展示と考えれば、大きな意義のある展示でしょう。
確かにこういう存在がなければ、
日本の文化の大きな部分は継続性を持ってこれなかったのは事実でしょう。
まぁ、色々な事柄を考えたり、感じたりした展示でした。
その意味では、意義はある、とも言えるかも知れませんね。
ということで、本日は国立博物館レポートでした(笑)。ではでは。
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日射の取り込みと遮蔽

2008年02月08日 05時42分54秒 | 住宅性能・設備

先週の新住協Q1.0住宅見学会から。
勇和建設さんの事例の写真です。
「日だまりの家」というコンセプトらしく、
ほぼ真南に面して、玄関や居間などの大開口が開かれている住宅です。
それも右側写真のように、居間は吹き抜けていて、
ダイナミックな空間が広がっています。
そうでありながら、室内の上下温度差は、測定している温度計を確認してみると、
なんと、1度にも満たないレベルになっています。
窓は樹脂サッシを使用していて、
開閉などもきわめて容易な仕様。
引き違いではないのですが、床までの大きな建具で、しかも
1階、2階とも連続して大きく開口しているのです。
家全体として、気密断熱がしっかりしているので、
空気の流動感も感じられなくて、
まさに自然な、春のひだまり、という雰囲気。

で、冬はこのように、費用のかからないエネルギー・太陽日射を
たっぷりと室内に取り込んで暖房エネルギーを削減させ、
こんどは夏になると、右側の写真のように2階のデッキテラスが
1階居間に対して、庇の効果をもたらしてくれて、
日射を遮ってくれます。
たいへん、単純な「パッシブソーラー」が建築装置的なもので実現できる。
もちろん、ディテールでは窓の性能の検討や、
冬のあいだの窓面からの冷輻射対策が肝要になってきます。
ここでは、1~2階のあいだの梁や、1階床面下に冷輻射予防の
暖房がさりげないデザインで装置されています。
また、大きな窓面からの夜の熱損失を抑えるために
高性能な断熱効果の高い「ハニカムサーモスクリーン」が装置されています。
さらに他の部位からの熱損失を全体としてバランス良くするように
断熱気密を図っていることは当然。
そうした建物としての性能の上に立って、
暖房でも、ヒートポンプの低温水タイプで十分なあたたかさが確保されています。
ディテールに色々な工夫が見られる住宅ですね。

なんか、ここんとこ、読者の方からのコメントが増えている感じ。
って、わたし、あんまりコメントを返したりしていませんでしたが、
心を入れ替えて、なるべくコメント返すようにしたいと思いますので、
ぜひ、いろいろなご意見、聞かせてください。お願いします。ではでは。
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光の春・輻射熱

2008年02月07日 05時45分26秒 | 住宅性能・設備

札幌はいま、雪まつりが開かれています。
こういうネーミングは単純なほどよくて、ここまで続いてきているのは
わかりやすく北国らしさが明快、という要素が大きいと思う。
わたしは、広告の仕事キャリアが長いのですが
その仕事領域の中でも、コピーやキャッチフレーズが本職に近いのではないかと、
自己規定しています。
そんな思いで考えていると、だんだん、単純さに惹かれていく。
なるべく作為なく、明快なフレーズが民主的で良い。
そういう意味で、さっぽろ雪まつり、いいネーミングで、これしかないですよね。

というのは、前振りなんですけれど(笑)
この時期くらいになってくると、暑さ寒さも彼岸まで、じゃありませんが、
「春の日射し」という言葉が、思い出されるようになってくる。
まぁ、雪まつりに来られたみなさんからは、
こんな冬真っ盛りに、なにを言うんだ、って感じられるかも知れませんが
北国人には、徐々に日射しの強さが増してくる感じが募って参ります。
熱的に言えば、「太陽輻射」ということでしょうね。
熱というのはなかなかに難しいもので、
いわゆる「断熱」という場合、ひたすら問題にするのは
「伝導熱」なんですね。
外気と、室内の温度差、という概念は「伝導」の概念。
それとは別に、輻射熱というものがあり、
伝導的にはマイナスの気温であっても、日射しが「あたたかく感じられる」ということ。
こっちの方の熱が、北国でも強く感じられるようになる時期なのです。
写真でみれば、一面の雪景色なので寒そうなんですが、
黒っぽいダウンジャケットの背中には
なんとも言えない心地よさが感じられている。
こういう感じが、北の春を予感させる、
いわゆる「光の春」という表現になっていくのですね。
ちょうど、雪まつりが季語のようになっていて、
このお祭りが節目になって、光の春が日増しに強まっていくのですね。

でも、この輻射熱というのが、なかなか難しい。
住宅技術の世界でも、銀紙のようなもので、
板状断熱材を被って、この「輻射」の概念を利用しようという製品もあります。
NASAがどうこう、というのが決まり文句。
確かに、宇宙空間的には太陽輻射のあるなしで、
極端なプラスとマイナスに別れるものなのでしょうが、
地上では空気があるわけで、やはり基本は伝導で考えなければならない。
輻射という概念は、その上で考慮すべき概念、ということになるそうです。

北国の冬も確かに真っ盛りで、
冬本番ではあるのですが、しかし、確実に春は準備されています。
こういう写真のような光景では、真っ白な雪が
太陽光を反射して、目もくらんできます。
全国・世界各国からこられたみなさん、さっぽろをお楽しみください。
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建築家展_4 手描き図面

2008年02月06日 06時16分32秒 | リプラン&事業

さて、建築家展での展示から。
写真は、わが社屋を設計してもらった圓山彬雄JIA北海道支部長の手描き図面。
以前、所員の方から「圓山の手描きスケッチって、いいんですよ」
っていう言葉を聞いたことがあります。
圓山さんはわたしよりも年上ですので、
建築家として仕事をしていくのに、
コンピューターCADが登場する以前からやっていたわけで、
当然、図面を手描きで描いていた時代の方。
なので、独特のペン使いの味わいとか、線画の美しさのような
そういう雰囲気が感じられるものです。

考えてみれば、もうこういう味わいに接すると言うことは少なくなっていく。
じっと、この図面を見入っていると、
やはりコンピュータが描く線とはまったく違って、
この造形した空間に対する思い入れのようなもの、
あるいは、愛着にも似た心遣いの細やかさの部分が感じられます。
このように額に納められ、ピンナップされて展示されると、
まるで、一幅の書画にも匹敵するような魅力が漂ってくると思います。
直線を太く引いたりしているところなど、
建築家のクセのような、緩やかな曲線の感じもみられ、
ちょうど、書の「はね」や、「とめ」のような風合いが滲む。
いかにも、「人間が描きました」というようなメッセージが伝わってくる。

絵とは違って、対象が明確に建築材料を使っての
「意思を伝達する」力強さに満ちていて、
これ自体はプロセスのものではあるのだけれど、
だからこそ、かえって、体言止めのような潔い簡潔さを表現している。
まぁ、わたしの場合には圓山さんの人となりにも接しているわけで、
そんな印象も加わっていると思われるのですが、
こういうメッセージ力というのも、建築家の魅力なのでしょうね。

通常の美術の展覧会には感じることができない
今回の建築家展で発見できた、ひとつの魅力ではあります。
そして、こういうプロセスを経て、
しかし、最終的には仕上がっていく住宅建築によってだけ、
社会の中での自らの評価を受け止めるわけなのですね。
建築というものと、いわゆる美術との同質性と、違いを
どちらも感じさせてくれるような展示だったと思います。
みなさん、いかがでしょうね。
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建築家展_3 身近な建築・札幌ドーム

2008年02月05日 06時15分09秒 | リプラン&事業
建築家展紹介です。
日曜日、はじめてゆっくりと全部の展示に目を通すことができました(笑)。
どうしても、顔見知りの人が多くて、
その度にあいさつしていると、ついそのまま、話し込んでしまって、
結局、展示を見ることができない、ということなんですね。
でも、せっかくの機会なので、全部の展示は確認しておきたいと思って
日曜日、カミさんは仕事で出かけていたので
わたしひとりで、見に行って参りました。
土曜日に聞いた講演の斉藤裕さんの本が販売しているので、
それを買い求めるというのも目的ではありました。
さっそく、そっちの販売コーナーに行ってみると、
なんと、講演者の斉藤さん本人がいました。
なので、いろいろごあいさつして、その上、
買い求めた本に著者直筆サインもいただきました(笑)。

っていうようなことで、再び目的を叶えられなくなりそうだったのですが、
斉藤さん、ちょうど飛行機の時間が迫っていると言うことで、
お帰りになって、ようやく見学できた次第です。
この建築家展、いいのは、一度買ったチケットで
半券を持っていれば、日が変わっても何度でも再入場可能という点。
こういうのはうれしいですよね、
わたしのようなケースでは大変助かりました。
結局、金曜日から日曜日まで3連チャンだったわけですから・・・。

会場内には、いろいろ興味を引く展示があります。
やはり建築って、美術とはひと味違って、より人間くささが感じられるもの。
それと、実際に実現していると言うことから、
われわれの側にも、体験というものがあり、
そういう意味で、こうした展示でその設計思想を再確認することができます。
小さい、住宅などでも、わたしたちは体験もしているわけですから
そういう意味でも、展示をどう見せているのか、
メッセージをどのように「編集」しているのか、も興味深い。
そんななかで、札幌市民には建築体験として多くのひとが体験している
「札幌ドーム」の建築プロセス、構造模型展示は
面白かったですね。
わたしたち北国に暮らすものにとって、
雪に覆われる冬に思い切り走り回ることができる大空間って、
大きな願いだったのです。
それが、ワールドカップサッカーの開催という節目を捉えて
札幌ドームという形で実現できたワケなんですね。
北海道日本ハムファイターズの躍進は、
この札幌ドームと、そこに集うファンの願いとが共振した結果な気がします。

展示ではその実現までのプロセスの経緯が
わかりやすい映像展示で見ることができます。
とくに構造の面白さが感じられると思いますね。
単純に考えて、あんな大きな建築に架ける屋根って、どう作ったのか、
なかなかに興味深かったですね。
建築が、身近に、わかりやすく語りかけてきている、
そんな感じがする展示会だと思います。
ちょうど、きょうからは雪祭りなのだそうで、
ぜひ、全国からのみなさんも、一度、会場に足を運んでみてください。

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木製カーポート

2008年02月04日 06時19分19秒 | 住宅性能・設備

写真は土曜日に行ってきた勇和建設さんのQ1.0住宅見学現場。
そちらの本体の方は、また改めて触れたいと思いますが、
このカーポート、目が行きました。
まぁ、どうってことはないカーポートなんですが、
わが家では、最近灯油が高騰しているので、
これまでロードヒーティングしていた駐車スペース、
自分で一生懸命除雪することになっているのです。
駐車スペース+家の前の除雪車が置いていく堅い雪。
これを道路を挟んだ反対側の中学校グランドとの緩衝地帯に
堆雪させるべく雪かきをするのですが、
家の他にも、事務所の雪処理もしなければならず、
やはりこれからのことを考えると、やや辛いものがある。
「これ、どれくらいでできたの?」
「うーん、100万円くらいかな」
っていうような次第だったわけです。
路面はコンクリートを打っている。
基礎は簡易に束石を建てているだけ。ですが、
けっこう建てるだけって言っても大変だそうです。
大体が基礎屋さんが工事するのですが、
最近は束石を建てる、というような工事は少ないので、
職人さんも慣れていないので、ふつうに基礎を作る方がやさしいということ。
あとはカラマツ材で、建てていって屋根板金。さすがに屋根工事は
専門家に頼まないと難しいのですが、
以上の、基礎と屋根、それ以外は、まぁDIYでも全然可能。
車1台分と、雨の当たらないアプローチができて、
しかもたっぷりの収納量の物置が出来上がる。
すべて引き戸なので、圧倒的に使いやすい。
タイヤ交換なんて、まさにそのために作りました、ってくらいぴったり。
よく見ると、屋根の高低差があります。
カーポート部分と、収納の部分。
これは設計の畠中秀幸さんのアイデアだそうで、
こうすることで、収納手前部分にも光がさしこんで
大変使い勝手が向上したんだそうです。
ふむ、なるほど、と感心させられました。

北国の冬の暮らしには、
こういう屋外装置がやっぱり不可欠。
それに前述のように、ロードヒーティングを諦めたひとにとっても魅力的。
雪が融けたら、こういう需要が伸びるかも知れませんね。
うーん、なかなかいいなぁ。
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建築家展_2斉藤裕講演

2008年02月03日 07時29分56秒 | 住宅取材&ウラ話

きのうは、いろいろと住宅建築関係では盛りだくさんの日。
新住協の全国一斉Q1.0住宅見学会が行われていて、
午前中にはわが家から一番近くの現場である勇和建設さんの住宅見学。
まえから見たいと思っていたのですが、
ようやく見ることができました。
勇和建設さんと、若手建築家・畠中秀幸さんのコラボ住宅。
その他、武部建設さんからは、見学会で「エコ住宅Q1.0」が6冊売れたよ、
といううれしいお知らせもいただきました。

で、午後からはカミさんと連れだって
きのうのブログで触れた「建築家展」を再訪。
なんですが、違う会場で建築家・斉藤裕さんの講演会が行われるので、
そっちに移動。
カミさんも、知り合いが斉藤さんを知っているということで、
斉藤さんのお話に興味を持ってくれていたのでした。
わたしは以前にも、日本建築学会賞を取られての講演会を聞いたことがあり、
その審美的な建築眼のような一貫した姿勢に
強い印象を抱いていた方です。
プロフィールなどは今回初めて知ったのですが、
北海道小樽市出身と言うこと。
そんなことからか、札幌の建築家・豊島守さんと親交があり、
今回の建築家展でも講演を引き受けられたそうです。
演題は「黄金の塵 日本建築の美」というもの。
まさに、わたしの聞きたかったいちばんのテーマだったのです。
お話しは、歴史と同時進行しながら、
日本の建築がたどってきた審美探求の流れを詳細に研究したもの。
東大の学生さんたち向けの講演を聴いた豊島さんが、
ぜひ北海道のみなさんにも聞かせたいと言うことからくどいて
実現したという、大変優れたテーマと、その深め方でした。
伊勢神宮から、出雲大社、奈良期の巨大建築から、
京都に残る建築や、歴史の舞台に残されたさまざまな建築のディテールを
詳細に解析しながら、審美的ポイントを見通していきます。
わび・さび、ということの本質を平易に語ってくれました。
久しぶりに、痛快なお話を聞くことができた次第です。
いろいろな建築に実際に行ってみる以上に、
筋を通して「体験」させてもらいながら、その本質的価値を再確認する。
斉藤さんの執着力って、本当に素晴らしい。
まさにきわまっているなと、思われたのは高松に残るという掬月亭のこと。
数寄屋とか、わび・さびというものを実際に体験してみたのですね。
名前の掬月亭というのは、月を掬うという意味。
それは、水面に映る満月を、その月明かりだけの世界の中で、
杯の中に月を、掬い上げて、飲み干す、という意味なのだそうです。
そして、建築は、その「幽玄な世界」を体験するために作事された。
そういう審美的な心的要因からスタートして、その実現のために
万金を投ずる、そういう建築が数寄屋という心ではないか。
たぶん、国宝級の建築なのでしょうから
そのように体験させてもらうためには、相当の努力が必要だと思います。
斉藤さんのお話には、そのような審美欲求への思いの強さが感じられる。

たいへん素晴らしいお話を聞くこともできて、
今回の建築家展、ほんとうに素晴らしいイベントになってきていると思います。
きょうからも、またさまざまなイベントやセミナーなどが予定されています。
住宅や建築に興味がある、あるいは特段ない(笑)、という方たちも、
この建築家展は絶対に面白いと思いますので、
北海道近代美術館に、足を運んでみてください。
月曜日は中休みですが、
会期は10日までやっています。損はしないと思いますよ。ではでは。
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建築家展

2008年02月02日 07時35分52秒 | リプラン&事業

きのう、札幌の近代美術館で「建築家展」がオープンしました。
期間は来週の日曜日までの10日間。
JIA日本建築家協会北海道支部の設立20周年記念ということ。
リプランもことし、20年の節目を迎えるわけで、
リニューアルを予定し、いろいろな出版活動を行っていくのですが、
まさにJIAの建築家のみなさんとは協同してきた歩みだったと思います。

ただ、建築は実際に建てられた土地や、空気感の中で存在するもの。
その「作品」が体験させられない中で、
どのように「展示」することができるのか?
少し、ハラハラしながら、見ていたわけです。
いつも、身近にいる人たちが普段通りのスタンスでいられるのかどうか、
そんな不安な心理も持ちながら、見に行って参りました。
会場では、そのようなポイントを踏まえながら、
どうパフォーマンスすべきか、みなさんの創意と工夫が随所に見られました。
上遠野徹さんの自邸のムービーコーナーでは
3Dメガネをかけてもらって見てもらうなど、考えているな、と。
基本的には、写真パネルがもちろん多いのですが、
圓山彬雄さんのように、住宅のなかを「のぞき込む」ような
展示の仕掛けで、見る人の想像力に働きかけようとしていたり。
パソコンでプレゼンテーションを音入りで見せたり、
一方では身近な公共建築、札幌ドームの設計プロセスをわかりやすく展示したりと、
なかなかなパフォーマンスぶりで、じっくり見ていると時間を忘れる。
一生懸命に、一般のみなさんに「建築」というものを
わかりやすく魅力的にメッセージしたい、と
取り組んだ様子が、手に取るように実感できました。
通常の「美術鑑賞」というものとは少し違う、
建築というものの持つパワーのようなものが伝わってくる展示になっていますね。

そのほか、会場内では講演やセミナーも開かれます。
また、この会場と連携して、700~800m離れたSTVホールでも
講演会などの催しが開かれています。
以下に、建築家展の趣旨を。

JIA北海道支部20周年記念 建築家展 
「ココでくらす。ココロでくらす。」

はじめに    
JIA北海道支部が誕生した20年前は、行政・研究機関・建築業界さらに新聞などのマスコミが一体となって寒冷地における理想的な住まい造りを求めて、長年にわたって取り組んできた成果がはっきりと現れた頃で、北海道の新たな建築が羽ばたく予感の時期でした。
 その頃に私たちはこれからの新しい建築を求めて「北の建築家たち-空間への浪漫」展を北海道立近代美術館で開催しました。たくさんの参加者にあふれた展覧会でした。ところが急角度に成長してきた経済活動が、その頃から急速に低迷し始め、新しい建築を一気に花咲かせることはできませんでした。  
しかし、そのような環境にあっても地道な研鑽と努力を積み重ね、その建築技術は今や圧倒的といわれるほど成長しました。支部創立から20年目の節目に当たる今年度は、残念ながら一昨年からの構造偽装問題や建設会社の談合など社会を失望させる諸問題で衆目を集めています。しかし、このような時こそ建築家の姿勢と実績を多くの人に見ていただき、建築界に対するさまざまな不安を払拭してもらおうと北海道立近代美術館で建築家展「ココでくらす。ココロでくらす。」を開催します。

 厳しい寒さとたくさんの雪そして豊かな自然環境の北海道で、これまで「此処で豊かに暮らす」ことを求めて努力を重ねてきました。  その結果、豊かな「此処」を創り上げる建築技術は大きな飛躍を遂げてきました。 加えて、これからは「此処」というひとつの建築のなかだけの責任範囲を超えて、「豊かに暮らす」ことを主題にしていかなければなりません。「豊かに暮らす」を支えるには、ひとつの建築で造れるものではありません。暮らしを支える多くの建築、商店や店舗、交番や消防署などの公共施設、集会所や大きな公共施設、遊び場や公園などの調和によって、その街・その地域の「豊かさ」や「魅力」の質が醸成されていきます。この展覧会では、ひとつの建築から「豊かな暮らし」を目指して『ココでくらす。ココロでくらす。』というテーマを決めました。
『ココ』は暮らしを支えあっているお隣さんや地区・地域の建築環境のことを意味し、『ココ』がおかれている自然環境や社会環境の未来を広い視野で考える『ココロ』を持って暮らしていくことを考えたいと思います。

  私たちのこれまでの「此処」から『ココ』に向かう努力の成果である作品を見ていただくと共に、『ココでくらす。ココロでくらす。』を目指す姿勢を身近に感じられるよう工夫を凝らした展示や子供たちから御年輩まで多くの方々に参加していただけるワークショップ、多彩な講演会などを企画しています。  これからの住まいを、街を、都市を、地域を、そして北海道を一緒に考えるきっかけになる展覧会にしたいと思います。
  もっとも北海道らしい冬の2月、多くの皆さまにご観覧いただけることを願っています。
(社)日本建築家協会 北海道支部長  圓山彬雄

入場料500円。ということで、ぜひご来場、ごらんください。
■会期
2008年2月1日(金)~2月10日(日)
*さっぽろ雪まつり/2008年2月5日(火)~2月11日(祝月)
■会場
北海道立近代美術館
札幌市中央区北1条西17丁目

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十勝の寒さ

2008年02月01日 06時27分11秒 | 住宅取材&ウラ話

いやぁ、寒かったです(笑)。
先週、十勝でアース21の例会が開かれて、
多くの建築現場見学をしてきました。
住宅の方は、どれもすばらしく、以前と比較しても、
デザイン的にバリエーションが広がってきているのを実感します。
とくに天井の高さに、特徴を持たせたケースが目につきました。
設計ポイントで聞いてみたら、
全体のシンプルモダンのトーンの中で、
薄型大型テレビとのバランスを考えていくと、
いきおい、ボリューム感たっぷりの壁面が必要になってくる、
とくに居間、というような声を聞きました。
伝統的にツーバイフォーの比率が高く、デザイン的には
やや保守的に北米デザイン的な傾向が強かった地域ですが、
ユーザーさんや、ビルダー双方とも、若い世代から、
シンプルな十勝っぽさ、とでも呼べるような動きが見られるようです。

というようなことでしたが、
なんといっても、素晴らしかったのは(笑)、十勝の寒さ。
「十勝晴天」といえる青空が抜けるように広がりながら、
底抜けに寒い。
そう、底冷え、というようなレベルではない。
まぁ、底が抜けるほどの寒さという表現にたどりつきましたね(笑)。
早朝など、車窓からは河の周囲が霧に包まれております。
川の水自体も身を切るように冷たいのですが、
はるかに超えて寒い大気、たぶん零下20度前後の空気が
河の水とのあいだで温度差を引き起こして、霧を発生させるのです。
まぁ、美しい光景なのですが、
すごいですね。
写真は、早朝の十勝川温泉にて、川面に登る川霧を撮影したのですが、
うまく伝わってくるでしょうか?
ホテルでは、たぶん、台湾のみなさんが
早朝、ほぼ、無言で、って、ようするに寒さで震え上がっている感じ。
で、名物のバルーンに乗りに行っていましたが、
大いに寒さを体感していって欲しい(笑)、と思いました。
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