上砂理佳のうぐいす日記

巨匠漫画家、楳図かずおさん逝去。あべのハルカスで私も見た「楳図展」は金沢21世紀美術館で9月に開催されていました★

「レッド・タートル」最高の映画★

2016-09-21 | アート・音楽・映画・本・舞台・ドラマ


「君の名は」が余りに騒がれているので、当分上映しているだろう…と思い、こちらの方を先に(あまのじゃく)。
ポスターの絵の美しさに魅かれていて、ず~っと見たかったのですね。
でも、ディズニー映画とばかり思っていたら、違うやん!
ジブリ×オランダ人監督の、日本・フランス・ベルギー合作映画でした。
カンヌ国際映画祭特別賞受賞。アニメなのに一般映画と同じ扱いということですね。

私の「日本発アニメ映画№1」は、「銀河鉄道の夜(ますむらひろしデザイン版)」だったのですが、あれから十数年の時を経て更新してしまいました。
余りに素晴らしかったのでどう書いていいのかわからない。。。
日本でのツィッターや映画レビューを読んでいたら、評判はかんばしくなく「わからない」という声が多いようです。
「わかる」映画じゃないと思います。「感じる」映画だから。
大筋としては、大人のおとぎ話というか、「浦島太郎」でもあり(カメがキーワードですから)、「ゆきおんな」でもあるというか?
私の予想していた「海洋冒険モノ」ではありませんでした。
「詩」であり、「大人の絵本」であり、「哲学」でもある?

大嵐の中、無人島に漂着した若い男。
島には一応、ヤシの実っぽいものもあり、湧き水もあります。
魚も獲れるしどうにか暮らしていけなくもない…でも、やはり元の世界が恋しい男は、島に群生している竹(なぜ“竹”なのか、日本人としてはとても違和感を感じますが)で筏を作り、大海原への脱出を計ります。でも、なかなかうまくいきません。
ここまでは割とよくあるお話ですが、そこへ「赤い亀」がからみ…。

とにかく背景の自然描写が超絶美しいです
最初、モノクロ映画?と驚きましたが、墨のグレーみたいな、水彩画のような淡い色調の空や海や星や砂が美しく、油絵調ではありません。そのせいか、水気を含んだ空気まで感じられます。
現実と異世界のあわいにあるような、とても不思議な色調です。「まったくジブリらしくない」渋さです。
人物はとてもシンプルで、なんと「目」は「点(てん)」で描かれているだけ。
鼻も口も、最低限の「線」で描かれているだけ。
背景に陰影はあるけど、人物の顔や体にほとんど陰影がなく平板で、ほぼほぼ無表情です。
なのに、人物の感情がよくわかるのは、動きとカメラアングルかなと。
アニメにありがちな極端なデフォルメがないのが、私の好みです。

そして、全編セリフがほぼ無い!
「ワォ!」みたいな声とか「ウー」とか「ワー」ぐらいしかない。
人物表現が平板なことと、セリフが無いことで、かえって神秘性が際立ってます。
これが、人物がペラペ~ラ、喜怒哀楽をまくしたてていたら、この美しい世界は台無しだったことでしょう。
美しい音楽がずっと流れていますが、ありがちな癒し系BGMでなく、ちゃんと映画のいち要素として役割を果たしています。

ジブリ作品というより「フランス映画」という感じがします。
子供用に作ってないし(子供が見ても大丈夫とは思いますが)、「星の王子様」みたいな精神性があります。
監督の表現したいイメージがピュアに出ていて、観客の感性を揺さぶり続ける。ここから、いろんな事を考えて、感じて欲しいのだと思います。
動員〇〇万人!とか、興収〇〇億円!とか、それが目的でないことは明らかです。
ヨーロッパのアート=私はおもに版画に接することが多いですが、とにかく「個人の思い」をとても重視して作っているように思います。
それを「独善的」と取るか。「思いのたけ」と取るか。
私は、この監督の「思いのたけ」が大好きです。わかんないことはひとつも無かった。
全てのシーンが、心に沁みました。

男には色々な事が起こり、夢なのか願望なのか、シュールな表現も多々出てきます。
そのどれもが美しく切なく、よくこんなイメージを具現化出来るな~と感動します。そこがジブリの凄さなんでしょか。感性と技術と、両方が無いと、絵におとしこめない。
無人島も一見、「平和の楽園」なのですが、時に様々な表情を見せ、嵐の描写は思わず目をおおいました。。。日本人ならば。

「レッド・タートル」=赤い亀は、「男にとっての“全女性”の象徴」に思えました。
最後が号泣します。。。パンフを読んでまた泣き、家に帰っても泣いた(笑)。
赤い亀のおかげで、救われたんだよね。でも亀も救われたのよ。
これって、カップルで見るかご夫婦で見て、互いの感想がどれだけ近いか遠いかで、相性がわかるように思うんですが。
感想が真逆だとこの先の人生キツいかもしれない(笑)。

映画サービスデーだというのに、お客さん4人でした~~~
勿体ない!どうか世界中の皆さんに観ていただきたい。
「君の名は」も、いいけどね!
「レッド・タートル」は、宝石のような映画よ
人生で一番大切なものが、詰まっています★
コメント
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