「さくらんぼかくれんぼ」
ページワンギャラリーで飾ってもらってます。水彩画新作です。
やっぱこの季節には、これを描かなきゃダメでしょ!
私は「さくらんぼ狂」だと思います。
★
フランス映画にはハズレはない!
「最強の二人」という映画を見てきました。
いっぱい映画賞も取ったそうですが、別に有名な美男美女が出るわけでもなく、派手でも華麗でもありません。
でもいい!素晴らしい!!
なんでだろ。フランス映画って、「人生のスィート&ビター」を描くのが上手いのよ。
繊細だけど大胆。悪いことしてんだけど憎めない。
日本人から見たら「そんなこと言っていいんかい!?」でも、フランスならOKなのかな~。
今まで見たフランス映画って…「アメリ」「ショコラ」「ポンヌフの恋人」「ラルジャン」「トリコロール」「髪結いの亭主」…みんな味わいが深いのです。
「人生って難しいよね」とも言わず「人生って楽しい」とも言わない。
なのに「ああいいなーーーー」「うんそうだよね」と思える。
ハリウッドのドンパチ映画は、見終わった瞬間にもう忘れる。
でもヨーロッパの映画は、ずっと心の奥底にとどまっているのです。
黒人青年のドリスは、失業中でお金が無い。スラムのような街にある実家も貧乏で、大家族は喧嘩ばかり。居場所が無い。
ないないづくしのホームレスになりかけますが、「障害者になった大富豪」の邸宅に、介助ヘルパーの仕事の面接を受けにいって、ひどい面接態度にも関わらず採用されてしまいます。
この「障害を負った大富豪」のおじさんはフィリップというのですが、事故で首から下が動かない。介助なしには生きていけません。でも、お金だけは「腐るほど」あるのです。
色々と介助シーンが出てきて、ある一定の年齢以上の人なら、「うんうん」と食い入るように見てしまうのではないでしょうか(私の隣のご婦人も身を乗り出していた)。
若くて粗野な育ちのドリスは、「介助」なんて最も縁遠いところで生きてきたのに、心の根っこは優しく繊細です。音楽が好きで、頭に浮かぶイメージが豊かで、キャンバスに絵まで描いてしまう。それに「介護の才能」がある?オロオロして何も出来ない人ではなく、エイッと本質を突いた介護が出来るのです。
大富豪の紳士フィリップと、噛み合いそうにもないのですが、フィリップが意外にも素直で(ふつうこんな設定だと頑固な金持ち親父でしょ)、次第に二人は心が通うようになっていきます。
それは、「今まで生きてきた世界」を乗り越えて、「人間として」ハダカになった部分で結びついたものだと思えるのでした。
介助を通してドリスは様々な感情を味わい、上手くいかなかった家族との関係も、修復していけるようになります。
また、フィリップは好きな女性がいるのですが、ドリスの無謀な?リードで、恋に前向きになっていきます。
フランスと言えばパリで、華やかで美しいイメージばかりですが、少し視点をズラせば失業や貧困や人種差別…「美しくないフランス」の部分が見えてきます。フランスでも就職は困難で、一人の採用に多数の応募があって、介護資格を持ってる男性が多数なのに驚きます。
ドリスがフィリップのお供で、豪勢なオペラを見に行くところ。
巨体に葉っぱをい~っぱい巻きつけた衣装で超真面目に歌う歌手を見て、「ヒャッヒャッヒャッ!」「マジかよ!なんだあれ」と大笑いする。周りの紳士淑女は眉をひそめる。
こんなシーンなんて、ブルジョワ層を冷笑しているかのようで痛快。
また、二人で美術館に現代アートを見に行くシーン。
展覧会が始まる前に特別に「お得意様」として観覧させてもらえるのも、「いかにも大富豪」という表現で面白い(実際、そういうことってありますから)。
キャンバスにヒュッと一筆描いただけの絵が何百万ユーロもするのを、笑い飛ばすドリス。でも気に入ったから即決で買ってしまうフィリップ。
こういう場面を見ると、私は「お芸術」を笑い飛ばすドリス側に感情移入してしまいます。
二人の生活の対比が鮮やかで、現実のフランスを見せてくれるところもいい。
また、二人がそれぞれの境遇から「人生を投げかけた」局面で出会う所もいい。思わぬ方向に人生が進んでいきます。
こうして書いていると、フランス映画の良さって、「人と人とが出会うことで生まれる何か」を描くのが上手い…そういうことかな、と思います。主役は「人」なんですよね。
テンポ良く解りやすく、演技は上手い、脚本はいい、そりゃ賞取るわな~と思いますが、このお話は実話にもとづいているそうで、ラストに現実の「最強の二人」がチラッと出てきました。
邦題だけが惜しいなあ…訳は悪くないけど、タイトル他になかったのかなー。
あと、ひとつだけ気になること。
「ドライビング・ミス・デイジー」みたいに、「ご主人様」が白人で、「仕える人」が黒人。
フランス移民の黒人の人がこれを見たら、それはどうなんだろ?
この「白人対黒人」の構図を、ひっくり返した映画がいつか見てみたいです★